男達の友情は時に熱くユーモラスで、そして悲しい・・・
1980年代、アクション映画のサブジャンルとしてバディアクションが流行、ウォルター・ヒル監督作『48時間』、リチャード・ドナー監督作『リーサル・ウェポン』といった作品が観客を熱狂させ、大きな収益を上げていた。本作もバディアクション・ブームの中で企画された作品。監督を務めるのは、4年前に『ビバリーヒルズ・コップ』で名を馳せたマーティン・ブレストである。
ドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーが製作に参加し、パラマウントの配給で、私(ユニバーサルの副社長ケイシー・シルバー/当時)が初監督する予定だった。でもスタジオはボビー(デ・ニーロ)の次に強力な名前が欲しがり、シェールをキャストできるように改訂を提案した。マーティがそのアイデアを一蹴すると、今度はロビン・ウィリアムズの名前が挙がった。だがマーティとボビーが主張したのは、Aリストとは程遠い俳優のチャーリーだった。この選択に失望したパラマウントは、リスクとトラブルをすべて払う価値がないと、プロジェクトを断った。私の初監督も白紙となった。でも幸運なことに、ユニバーサルが権利を買い取ったけどね。(ケイシー・シルバー/映画プロデューサー、ユニバーサル・ピクチャーズの元会長兼最高経営責任者)
デ・ニーロ演じるジャック・ウォルシュは、賄賂を受け取らとらず警官をやめた賞金稼ぎ。できれば腐ったビジネスから抜け出して、コーヒーショップを開きたいと考えている。方やチャールズ・グローディンが扮したジョナサン・“ザ・デューク”・マデューカスは、ギャングから大金を横領して逃げた会計士。しかもそ大金を慈善事業につぎ込んだという温厚な男だ。
このふたりが『お熱いのがお好き』のトニー・カーティスとジャック・レモンのように、ギャングやFBIに追われながらニューヨークからロサンゼルスまで大陸横断を繰り広げる。そして、ビリー・ワイルダーの誰もが認める名作と同様に、ほぼ絶え間ない辛辣さで口論し、吠えて噛み合い、巧妙でコミカルな相互作用を中心に展開していくのである。
この映画のすべてが大好きなんだ。そして『トイ・ストーリー』の直接のインスピレーションとなった映画だ。(アンドリュー・スタントン/映画監督、脚本家、プロデューサー)
撮影は『愛と青春の旅立ち』『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』のドナルド・ソーリン。35mmオリジナルカメラネガ(後述)を2022年に4Kスキャン/デジタルレストア。HDRはHDR10とドルビービジョンをサポート。アスペクトは1.85:1ビスタサイズ収録。ちなみに2016年に本盤と同じくシャウト・ファクトリーから登場したBLU-RAYは、35mmインターポジからの2Kデジタルレストア版(2018年国内版と同2Kマスターと思われる)。
2018年国内版と比較すると、本盤は有機的に分解された粒子構造を有しており、見映えの良いショットが連続する。大幅なアップグレードとは言えないものの、ディテイル描画が良好なものとなっており、黒レベルも安定度を増している。オープニングなどの低照度ショットは、BLU-RAY版ほどではないものの、S/Nや解像感の後退が視認され、黒の引き込みも早い。
HDRはデイライトショットで効果を上げるが、全編を通じて抑制される。BLU-RAY版との大きな違いは発色にあり、原色や二次色、アーストーンの描色が目を奪う。色調はいくぶんウォームトーンが強く押し出され、肌の質感も説得力あり。ロケショットの描画力や奥行感、ファブリックの質感再現も改善。著しい高精細画像ではないが、フィルム撮影作品の味わいを十分に楽しみことができる。
当初はスコープで撮るアイデアもあったが、私はビスタに固守した。オールドスクールなコメディのムードを盛り込みたいと思っていたし、常にボビーやチャーリーに観客の視線を留めておきたいと思っていた。これはスタジオのセットを飛び出した映画だ。いつも、どこからもいい光(自然光)が来る。そのためにさまざまなレンズを使ったけど、あえて旧型のレンズを使ったショットも多い。柔らかな光を記録するために、極度な鮮鋭感は避けたかった。(ドナルド・E・ソーリン/2016年他界)
音響エンジニアは『シューシャンクの空に』にジョン・ステイシー(編集監修)『デイライト』のデヴィッド・A・ウィッテカー(同)『バード(オスカー受賞)』のリック・アレクサンダー(リレコーディング監修)。2015年リマスター5.1ch、および2.0chステレオ・サウンドトラックを収録。いずれも2016年BLU-RAY版サウンドトラックのリユースとなる。
当時ダニーは映画作曲家というより、むしろロック・ミュージシャンとして映画音楽に手を出していた。オインゴ・ボインゴは依然として人気アルバムをリリースしていたし、映画音楽のレパートリーは依然として風変わりなティム・バートン・コメディがほとんどだった。だがここにはファンタジックな祝祭性はない。楽器アンサンブルは活気に満ちた金管、ギター、エレクトリックベース。カントリー ロックとブルースのスコア。ダニーのゴシック・オーケストラ・サウンドに慣れている人にとっては随分と場違いに思えるただろうが、ふたりのアンチヒーローのスリリングで、スラップスティックで、そして感情的な旅にピッタリの曲想だった。(編集ビリー・ウェバー/他作『トップガン』)
個人的には会話、効果音、音楽のバランスが良好な2.0chトラックがお薦め。濃密なミッドレンジも魅力的だ。だが5.1chトラックも捨て難い魅力があり、より没入感があり、説得力のあるサラウンド体験を得ることができる。アクションのギアが入ると、アンビエントと音響効果によって広いステージングと距離感が生み出され、ダニー・エルフマンのスコアも快調に鳴り響く。
UHD PICTURE - 4/5 SOUND - 4/5
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