日本における整体の第一人者であり、「野口整体」と呼び慣わされている整体法の創始者・故野口晴哉が、東京・狛江の自宅に創り上げた専用のリスニングルームが、氏の没後47年を経て再生され、そのリスニングルームを使った「野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会」が、5月28日(日)に開催される。これは、氏の遺した音楽遺産とその業績を現代に活かし、次代へ継続していくことを目的に行われるもの。

「自分は音楽をきくことを唯一の健康法とし、意識しない心を相互に交感させる方法として、もう40年休みなくきき続けてきた。今になっては趣味とか楽しさとかいう生ぬるいものではない」
「…それゆえうれしい時も、疲れた時も、悲しい時も、決意の時も、いつも音楽で自分を柔らかく包んだ」
(野口氏の評論より一部を抜粋)
上で紹介した評論にあるように、氏にとって音楽を聴く行為は生活の一部であり、自分の体の一部でもあったそうで、生涯をかけて創り上げた音楽室は、多忙な生活のなか、誰にも邪魔されない自分自身になれる空間であり、自ら“最善の音”を追求し、曲や演奏者、試聴場面ごとに音響機器を変えた、とも述べている。生前、特別な人しか招き入れることを許さず、仕事が終わった深夜に一人静かに音楽と向き合った音楽室は、自己充実の場であり、まさに氏にとっての”聖域”と言える場であった。
音楽室は防音設計された土蔵建築内にあり、広さは約55畳。内装も自身の設計によるもので、数十年をかけて集められた家具や幻の名器といわれるオーディオ機器の数々、レコード棚などが配されているそうだ。
なかでも特徴的なのが、中央スピーカー群。名機シーメンス・オイロダインのスピーカユニットやコンクリートホーンを壁面に埋め込み、音を出力。これにより壁一面から音が空間を包み込み、まるでスピーカーの内部で音楽を聴いているような、独特の音場を作り上げているということだ。まさに野口整体が重視してきた人間の“裡(うち・内面)”という感覚が、空間全体を象徴していると言えるものとなる。
その音楽室は、時代小説家で日本屈指のオーディオマニアとして知られる故五味康祐氏をして「野口氏は、私の知る限り日本で最もぜいたくな聴き方をしてこられた人である*」と賞されている。
(*出典:「オーディオ巡礼」ステレオサウンド)
(機材例)
Siemens Eurodyn、London Western、Klipsch Vitabox、Western Electric、Quad Esl、McIntosh MC275、EMT930st、Garrard301、Thorens TD124/224、Victrola Credenza等
なお、今後も、定期的にレコード愛好家のゲストを招いて、氏のアーカイブ(SP/LP)や現代音源のレコードを使い、音楽の歴史や文化を楽しみ、学ぶ会を開催予定という。同時に、氏の「意識しない心を相互に交感させる」経験を、音楽鑑賞を通じて提供していくとしている。
■レコード鑑賞会概要
野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会#1
場所:(公社)整体協会狛江道場
日時:2023年5月28日(日)
午後2:00~午後8:00(予定)
レコード当番:野崎和宏
協力:野口晋哉(狛江稽古場)
前売¥3000/当日¥3500/18歳以下無料
※前売完売時の当日入場はお断りすることがありますことを予めご了承ください。


