エミライから発売中のFiiOのポータブルDAC/ヘッドホンアンプ「Q7」(実勢¥135,000前後)。昨秋行なわれた「秋のヘッドフォン祭」での参考展示で人気を集め、その後11月末に正式に発売された注目の製品だ。
改めて製品のプロフィールを紹介すると、同ブランドの超ド級ポータブルプレーヤー「M17」のコンセプトを受け継ぎながら、プレーヤー機能を省き、ポータブルDAC/ヘッドホンアンプに専念したモデルとなる。
DACチップにはESSテクノロジーの「ES9038Pro」を採用し、ヘッドホンアンプ回路にはTHXとの共同開発になる「THX AAA-788+」を2基、Bluetoothレシーバーとしても最新のaptX Adaptiveをサポートし、ヘッドホン出力には、3.5mm、2.5mm/4.4mmバランス、6.3mmと多彩に対応するなど、贅を尽くした一台。
フォーマットの追加などで、次々と買い替えを迫られる(笑)ポータブルプレーヤーに対して、プレーヤー機能を省いて、つまりどんなプレーヤーとも組み合わせて使えるように、しかも最高峰のDACアンプとして使えるようにまとめられたのが、本Q7となる。本稿では、そんなQ7を、プレーヤーを問わず(実際には問うけど)、組み合わせた製品から最高の音を引き出すDACアンプとして注目。音質チェックを行なってみた。
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さて、Q7と組み合わせたのは、Astell&Kernのポータブルプレーヤー「A&ultima SP1000」(以下 SP1000)と、Xiaomiのスマートホン「11T Pro」の2台。事前のチェックでは11T Proとの相性が良かったので、テストも11T Proメインで行なっている。ちなみに、イヤホンは2.5mmバランスを組み合わせた。
まずは11T ProとQ7を付属のUSBケーブルで接続する。方向性があるので、信号が矢印の向きになるようにする。注意としては、Q7の底面にある「USB CHARGE」のスイッチをオフにしておくこと(オンのままだと、音が出ない)。いくつか楽曲を聴いての印象は、すっきりとして聴きやすい音調になること。音場はそれほど広くないが、音像が前に出てきて、おでこの当たりに定位してくれるので、イヤホンで感じやすい頭内定位も緩和される印象だ。ボーカルも楽曲に埋もれることなく、はっきりと聴こえてくる。
以上は、内蔵バッテリーによる駆動(バッテリー給電)だが、付属のDCアダプターを接続して、Q7の特徴の一つでもあるDC給電にすると、定石通り音に厚みが出て、ボーカルの実在感が増し、音空間が一段と広がる感じになる。この音を聴いてしまうともう、バッテリー給電には戻れなくなってしまうほどだ。
次に、DC給電のまま、スマホとの接続を無線=Bluetoothにしてみる。ペアリングは簡単で、完全ワイヤレスイヤホンと同じ要領で素早く接続できた。コーデックを確認してみると、Q7もスマホもaptX Adaptiveをサポートしているが、実際には「LDAC」となっていた。
その状態で楽曲を再生すると、厚みや空間の広がりがより感じられるようになり、USBケーブルによる接続よりも音質が向上している印象。付属のケーブルがクォリティのボトルネックになっている可能性もあるため、Q7をUSB接続で使いたいというユーザーはまず、ケーブルの交換を考慮しておくといいだろう。
ちなみに、スマホ側のメニューで、LDACの品質を「オーディオ品質に最適化」にすると、音色に響きや艶が出てくるので、適宜確認するといいだろう(初期状態では、「適応ビットレート」になっていることが多い)。
Bluetooth接続の印象がよかったので、SP1000相手にもテストしてみた。接続コーデックは「aptX HD」となり、USB接続よりも音の厚みや響きが増し、ボーカルはしっかりと重心の下がったどっしりとした再現となるし、空間もより広くなる。音像の定位もスマホのUSB接続時と同じように、前に出てくるようになった。
Q7は、ポータブルのDACアンプとしては高価な部類に入るが、スマホと組み合わせて音質アップを図りたいユーザーにとっては好適な製品と言えるだろう。欲を言えば、本機にBluetoothの送信機能があれば、少し古めの高級ポータブルプレーヤー(今回のSP1000など)を使っているユーザーでも、最新の完全ワイヤレスイヤホンに採用の進むaptX AdaptiveやLDACコーデックによる音楽聴取が楽しめるようになる。期待したい。