英Nothingから発売された完全ワイヤレスイヤホン「Nothing Ear (stick)」(¥16,800 税込)。同社においては、第3弾の製品になるそうで、リップスティックから着想を得たという円筒形の収納ケースはクリア(スケルトン)にまとめられ、おしゃれな雰囲気。スティックタイプのイヤホン本体についても、柄(スティック)の部分が表裏ともにスケルトンで、内部の様子を透かして見ることができるなど、近年流行のスケルトン仕様を存分にデザインした注目の逸品。ここでは、音質を含めたインプレッションについて紹介したい。
まずはデザインから。収納ケースはなるほど、イヤホンを取り出すのに回転させるのか! というコロンブスの卵的な発想で、そのギミックも含め楽しめる仕上がりに。スケルトンなのもおしゃれで、所有する喜びを得られるだろう。
イヤホン本体もスティック部分がスケルトンになっていて、背面部分には赤丸と白丸で左右の区別をつけるなど、おしゃれな中に機能性も備えているのが分かる。何より、T型定規のようなスティック部分の形状が素晴らしく、親指、人差し指、中指の3本でイヤホンを持つ際、指先に馴染んでしっかりとつまめるのは素敵なポイント。デザインにこだわるあまり、持ちやすさを蔑ろにする製品も多い中、この実用的な形状は大いに評価できるものだ。
イヤホン本体は楕円形をしており、そら豆のような印象。インナーイヤータイプなので、耳の窪み部分に載せる(引っ掛ける?)ように装着するのだが、見た目と違って意外としっかりと固定されるので、走るとか頭を大きく振るなどの急な動きをしなければ、落としてしまう心配は少ないだろう。カナル型と違って耳穴を塞がないため、圧迫感がないのはいいところ(当然ながら遮音性はそれなり)。
音質は12.6mm径のドライバーの恩恵もあり、低音に勢い・パンチのあるサウンドを聴かせてくれる。装着時に、低音の量感を自動で調整してくれる「Bass Lock Technology」の効果もあるようだ。一方で、対応するBluetoothコーデックがSBC、AAC(試聴はAACにて)ということもあって、中高域部分の再現性は、詰まっている印象はないものの、量感はそれなりで、全体的に軽めなもの。音数は少ないし、音場も狭い。ただし、カナル型と違って定位感は良好で、目のあたりに音像が浮かび上がり、聴きやすくなっている。
以上は、CDクォリティのコンテンツの感想だが、これをハイレゾに替えると、コーデックは同じながらきちんとより多くの情報を再現してくれるようで、高域部分の再現性が向上するほか、音場も少し広くなり、響きの余韻も豊かになる。定位も若干あがり、おでこのあたりに感じるようになる。ボーカルと楽曲のなじみもよくなり、厚みも出てくるようになる。
Nothing Ear (stick)は、おしゃれなデザインの中に機能性を盛り込んだ注目の一台。音質面での“大きな”不満は少ないものの、せめてaptXコーデックに対応してくれれば、音質的にも満足できる製品になるのに、と思ってしまう。期待したい。