第58回アカデミー賞4冠(作品・監督・編集・音響賞)に輝くオリバー・ストーン監督作品。貧しい若者だけが戦場に行く状況に疑問を抱き、大学を中退して志願兵となった青年クリス(チャーリー・シーン)。正義感ばかり強くて世間知らずの彼が、ベトナムの最前線でまざまざと見せつけられる地獄絵図。戦争を引き起こす人間と国家の愚かさが、戦慄をもってスクリーンに展開する。70年代後半以降、『ディア・ハンター』『地獄の黙示録』など多くのベトナム戦争を扱った映画が作られてきたが、初めて加害者としてのアメリカの功罪に言及した力作。自らも従軍経験を持つストーンの執念が作らせた、ベトナム戦争を総括した作品とも言える。
撮影は『JFK』『アビエイター』『ヒューゴの不思議な発明』で3度のオスカーに輝くロバート・リチャードソン。MGMによる修復、オリバー・ストーンの最終承認を得た、35mmオリジナルカメラネガからの2018年レストア4K DSM(デジタルソースマスター)使用。HDRグレードはHDR10とドルビービジョンHDRを採用。画像はいくぶんリフレーミング。黒レベルが大幅に見直されており、MGMによる2011年BLU-RAY版よりダークトーンが強調されている。
粒子感は良好とは言えず、DNRにより平滑化されたショットも多い。そのため解像感は不均一、細部描画力も大きく変動する。リンギングやエッジ強調も散見。色調は(肌などの)赤みを抑制、全体的に黄系トーンが押し出されている。HDR効果は湿地帯の植生の緑に明快、光の当る箇所はミントやフォレストグリーンに寄る。残念ではあるが、総じて4K UHDの恩恵は薄い印象だ。
オスカー音響賞を受賞したエンジニアは、『チャイナタウン』『サタデー・ナイト・フィーバー』のジョン・ウィルキンソン(リレコーディングミキサー)、『ゴッドファーザー』『チャイナタウン』のチャールズ・グランズバック(同)、『追いつめられて』『ウォール街』のリチャード・D・ロジャース(同)、『ガンジー』『ラスト・オブ・モヒカン(オスカー受賞)』のサイモン・ケイ(録音)。
2011年リマスター5.1ch & 2.0chサウンドトラックをリユース。いくぶん明瞭度が改善されているものの、2011年BLU-RAY音声とほとんど差異はない(平均転送レートもほぼ同等)。サウンドステージはフロントヘビーながら、アップミックス再生の効果は良好、没入感も向上する。
UHD PICTURE - 3/5 SOUND - 3.5/5
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