ソフィア・コッポラの劇場映画監督デビュー作。父フランシス監督作『ゴッドファーザーPART III』の演技をコキ下ろされてから9年、映像作家としての才能を咲かせるきっかけとなった作品だ。1974年、リズボン家の姉妹が自殺した。最初は末娘。そして、なにかに取り憑かれたかのように、彼女たちは次々と命を散らしていく。決して巧い演出とは言えず、脚本に稚拙な部分も多いが、映画に流れる瑞々しい感覚は高く評価されるべき。
コッポラの承認を得た、35mmオリジナルカメラネガからの4Kデジタルレストア版。HDRはHDR10のみ採用。意図されたソフトフォーカスの画調ながら、細部ディテイルとテクスチャが余す所なくレンダリングされている。色彩再現力のアップグレードは本作のハイライト。HDRはハイライトの強調より(MaxCLL 106 nit/MaxFALL 68 に制限)、色域拡張に適用される。
35mmドルビーSR磁気トラックからの5.1chリマスター。視覚的イメージに同調、呼応するミステリアスなシネソニック。環境音やアンビエントが伝える柔らかな空気の脈動。観る者に降り注ぎ、五感に沁み込んでいくエール(仏エレクトロ・デュオ)のスコア。誰ひとり真実を語らぬ少女たちの来たるべき運命は、メロディの中に織り込まれている。
UHD PICTURE - 4.5/5 SOUND - 4.5/5