CSポート/G501
CSポートは、無帰還回路と安定化電源、ノイズ対策で中立かつぬくもりのある音楽中心の音創りで知られる国内ブランド。同社A級真空管アンプやアナログターンテーブルでLPをデモンストレーションした。注目モデルは、10月発売の「ACN400」(¥1,650,000税込)。アナログ4ウェイのチャンネルデバイダーだ。ハイエンドオーディオの世界では、もう一度マルチアンプシステムに挑戦しようという気運が高まっているとの認識から企画された。
目指したのは「反転しないチャンデバ」。「MKフィルター」を採用し、MK方式とは、-12dB/Octのアナログフィルターを咬ませても位相が反転しない回路。低域と高域で生じる位相のズレを解消した。「デジタルなら何でもできる」といわれるが、結局細かいパラメータの調整を自分でやらなければならず、音楽鑑賞に集中できない。そこでこれ一台さえあれば安心してマルチアンプシステムの世界に飛び込める。「デジタルの限界、悲哀を超えるため」のアナログにこだわった一台に仕上がっている。
ヤマハミュージックジャパン/G502
今回の出展目的は、トップエンドのAVレシーバー「RX-A8A」のサウンドを来場者に聴かせること。そのために、11.2ch(7.4.2)のシステムで、ドルビーアトモスやオーロ3Dのほか、DisneyやApple Musicも含めた“空間オーディオ”のデモンストレーションを行なった。
そのフロア7chを固めるのが、初披露のフロア型スピーカー「NS-2000A」(発売日・価格未定)。ユニットの振動板にハーモニアス ダイアフラムと呼ぶ新開発の素材を採用、3ウェイ4ユニットの全てを同一振動板で揃えたのが特徴だ。
ヤマハはこれまでも「NS-5000」、「NS-3000」といったハイエンドスピーカーでZYLON(ザイロン)100%の振動板を用いてきた。今回はこれにピアノスプール(いわゆる紙)を混ぜることで、音速、音色、コスト面でバランスが取れた製品開発が可能となった。これをきっかけに、コンシューマのみならず、業務用スピーカーにも活用が期待される。また、NS-5000等と同様、端子はシングルワイヤリングのみ。「ネットワークなどもふくめ、ひとつの完成形で提供したい」という意気込みがうかがえる。
オーロラサウンド/G503
パワー/プリアンプやフォノイコライザーのほか、MMエキスパンダーや、RIAAコンバーター、リード線まで、比較的手の届きやすい価格で“こんな製品があったらもっとアナログを楽しめるのに”といった唐木代表のアイデアを形にした機器を揃えるAurorasoud(オーロラサウンド)。
今回の目玉は、可変型マルチカーブフォノイコライザー「EQ-100」(¥248,000税別)。78回転SP盤から33回転モノーラルLPまでアナログレコードのカッティング特性に対応したのが特徴だ。イエローの印字が78回転SP盤で、戦前と戦後の4種類(EU78 ?1945、AM78 ?1945、EU78 1945~、AM78 1945~)、その下の白い印字がLP(RIAA、AES、DECCA、Columbia、NAB)といった風に高域ロールオフと、低域ターンオーバーを独立してワンタッチで補正できる。
デモンストレーションもマニア垂涎のSP盤やモノーラル盤ばかり。購入者には「アナログレコードの話」という40ページの冊子が付属。SPやモノーラルレコードの歴史から再生方法まで丁寧に解説されている。
ズートコミュニケーション(Analog Relax)/G503
「カートリッジは音楽を奏でるひとつの楽器である」として、無垢の木材をカートリッジに採用するアナログリラックスの出し物は、カートリッジ3種聴き比べ。「EX1000」は、樹齢2000年越え(!)の屋久杉無垢材削り出しボディに、ルビーカンチレバー、ラインコンタクト針を採用(¥1,408,000税込)。生楽器やヴォーカルものでの官能的な響きが魅力。
「EX500」は、ルーマニアの最高級メイプル材でヴァイオリンのネックや背板にも使われるTone Wood(トーンウッド)のボディに、アルミニウムのカンチレバーに超楕円針、コイルには6N相当の銀線を使用している(¥528,000税込)。伸びやかで爽やかな空気感が魅力だ。
「E300」はギターに使うTone Wood(トーンウッド)ウォールナット無垢材を採用、アルミニウムのカンチレバーに楕円針だが、「新開発IF接着」によりカンチレバーと針が密着・一体化して力強さが特徴である(¥275,000税込)。
スフォルツァート/G504
SFORZATO(スフォルツァート)は、DSで知られるリンのフォロワーを目指して小俣代表が2009年9月に創業。CSRと共同開発したデジタル技術「ZERO LINK」を核に「何も足さず、何も引かず」ソースの全てを引き出すことをモットーに、ネットワークトランスポート、ネットワークプレーヤー、DAC、マスタークロックを製品化してきた日本のメーカーだ。
「DSC」を冠するUSB DAC「Vela」「Dorado」「Grus」と「DSP」を冠するネットワークプレーヤー「Vela」「Dorado」「Pavo」とそれぞれ3グレード存在。これらと「ZERO LINK」を通じて外部クロックと同期させたサウンドは、「こんな細かいニュアンスが含まれていたのか」とユーザーを驚かせる。年々操作性も着実に向上、Amazon music HDを含むストリーミング再生にも対応予定で、日本製であるという信頼感も人気に寄与。今後はアナログアンプも作りたいと意欲を見せる。
Veraを使ったデモンストレーションでベンジャミン・ブリテン指揮のモーツァルトDSD11.2MHz(ステレオサウンドBD-ROMクラシック)を再生した小俣代表は、オリジナルのLPも持っており、アナログでこのクォリティで鳴らすのは相当難しいが、ネットワーク再生ならコストと労力を抑えて実現できる、とアピールした。
DYNAUDIO JAPAN/G505
ハイエンドモデル中心の東京インターナショナルオーディオショウと異なり、比較的手が届きやすいベーシックでマルチチャンネル構成も可能な「Emitシリーズ」とその上位シリーズ「Evokeシリーズ」を展示、デモンストレーションした。
シリーズ毎に定期的にモデルチェンジして進化を続けるDYNAUDIOだが、スピーカーを楽器と見立て材料を吟味する基準が厳しすぎてデンマークからの入荷量が高い人気に応え切れていない。とくに5年ごとに出る限定モデルは悩みのタネで、「Heritage Special」もようやく日本に追加割り当てされる目途が立ち、年内に残りのユーザーの手許に届けられるかと頭を抱えるほど。
人気を裏付けるように「ディナウディオは能率が低くて鳴らしにくそう」という先入観を吹き飛ばす軽快なデモンストレーションは常に満員。とくに今回のトライオードの真空管アンプとの組み合わせは、DYNAUDIOらしい緻密さと空気感が味わえ、インテリアにも溶け込むスモールコンポーネントの提案としても興味深かった。
トライオード/G505
比較的手が届きやすいコンポーネントを提案しようとDYNAUDIO JAPAN前田代表とトライオードの山埼代表が意気投合、今回のブースができあがった。
トライオードは、真空管=レトロという固定観念にこだわらない未来志向のアプローチが特徴で、空間表現やS/Nに優れた現代のオーディオソースを再生するための挑戦を続けている。真空管プリメインアンプ「EVOLUTION」(¥528,000税込)は、電子ボリュウムを同社ではじめて採用、電源ON/OFFを含む操作がリモコンで可能となっている。
デモンストレーションでは、プレミアムシリーズだけでなくジュエリーシリーズ「Ruby」(¥88,000税込)のような小粋なモデルも登場。ディナウディオのような一見能率が低くて鳴らしにくいとされるスピーカーも、真空管アンプならではの“トルク”でその良さを引き出していた。
クリプトン/G509
今回は、同社がダイレクトショップのみで販売している製品、すなわち、普段店頭で試聴することなく購入している製品を試聴できる貴重な機会となった。目玉は新製品パワードスピーカーの「KS-33」(¥87,780税込、6月下旬発売)。「KS-11」のエンクロージャー側面の樹脂モールド部分を高剛性アルミニウム押し出しとし、それに伴って内蔵アンプのデジタルフィルターの係数を変更したアクティブスピーカーだ。
apt-X HD対応Bluetooth、USBのほか、光デジタル接続での映像コンテンツの再生、ステレオミニ端子アナログ入力まで備え、コンパクトな万能選手であることをアピールした。土方久明さんによるデモンストレーションでは、用意したデジタルデータを惜しみなく再生。超コンパクトなフルレンジながら満員の会場を大らかに鳴らした。
また、わずか3万円ほどのアップでアルミ筐体を採用した背景に触れ「価格もすいぶん頑張ってますね」「このサイズだからアルミを使っても実現できた」と、価格決定に至るまで、ずいぶん社内的に吟味を重ねた苦労話を引き出していた。
JVCケンウッド/G510
耳に掛けて日常生活からオンライン会議まで便利に使えるワイヤレスヘッドホン「HA-NP35T」(6月上旬発売予定)から、ここぞという時に音楽に浸れる木の振動板採用イヤホン「HA-FW1000T」まで多彩なラインナップ。さらに、頭外定位音場処理技術EXOFIELD(エクソフィールド)搭載ワイヤレスシアターシステム「XP-EXT1」のドルビーアトモス音場体験コーナーでは、専用スマートホンアプリを使ったパーソナルセッティングやOFF/ONの効果の違いに来場したカップルも驚いていた。
注目は、参考出品の新型ウッドコーンオーディオシステム。音質マイスターの今村さんは、19年前の振動板開発の立ち上げから携わり、その「品位」を高めてきた。実は今村さん、当時はエレクトロニクス開発部署にいたが、スピーカー開発部署の先輩と意気投合。プレスすると反り返るなどの数々の難題を5年掛かりでクリアーし、世に出したのが2003年の「EX-A1」だった。今回のモデルも、「スピーカーは楽器でありたい」という原点に立ち、楽器の内部と同じように配置する響棒をさらに吟味するなど改良を重ね、従来通りネットワークを内蔵しないことで解像度と表現力を獲得したといい、製品化の暁には専用レシーバーとのセット販売を想定している。