バンド結成11年を迎えたガールズバンドSILENT SIRENが12月30日に「SILENT SIREN年末スペシャルLIVE TOUR 2021「FAMILIA」」の最終公演を東京体育館にて開催した。サイサイは5年前の同じ日にも東京体育館の舞台に立っている(『2016 年末スペシャルライブ Dream on!』)。ひなんちゅ(梅村妃奈子:ドラム)が去る9月に脱退した後、すぅ(吉田菫:ヴォーカル、ギター)、あいにゃん(山内あいな:べース)、ゆかるん(黒坂優香子:キーボード)の3人で活動を続けてきたが、このライブを最後に活動休止期間に入った。
12月15日に、オールタイム・ベスト・アルバム2種『SILENT』、『SIREN』をリリースしたサイサイ。オープニングは『SILENT』にボーナス・トラックとして収められていた新曲「FAMILIA」だ。休止前の最後の公演であっても、いや、だからこそか、いちばん新しい書き下ろしナンバーを真っ先にファンに届ける。そこにぼくはライブ・バンドのプライドと、ファン(“サイサイファミリー”略して“サイファミ”)に寄せる誠意を強く感じた。
次はいきなり超代表曲のひとつ「フジヤマディスコ」だ。ライブ後半で披露されると思っていただけに、なんだかびっくりしたが、ライブのどのパートで聴いてもとんでもなく盛り上がる曲であり、あいにゃんのベース・プレイも冴えわたっていた。アンサンブルを支え、フロントを盛り立てるというベースの役割を熟知しつつ、メロディアスでもありパーカッシブでもあり。ライブ全般を通じての華麗なプレイに英国のロック・ベーシスト、アンディ・フレイザー(2015年死去)の面影を感じたのは私だけではないはずだ。
サポート・メンバーの渡邊悠(ドラム)、サイサイの初期メンバーでずっとサウンドプロデューサーを担当してきたクボナオキ(ギター)もサイサイのドライブ感に大きく貢献、「すごい疾走感だな」と思っていると、2012年発表のメジャー・デビュー・シングル「Sweet Pop!」が始まった。特設されたセンターステージにすぅが走り出してのパフォーマンスだ。「ビーサン」からはそこにあいにゃん、ゆかるんが合流する。サイサイのポップで開放的な音楽は十二分にスタジアムやアリーナ向きだが、当然ながら、スクリーンから目線を離して演者を直に見ようとすると、会場が広くなればなるほど実物は豆粒大になる。それだけに、中央や後方にいるオーディエンスが、よりメンバーを近距離で感じられるセンターステージの設置は実に嬉しいものだ。
セカンド・シングル「stella☆」も、『SIREN』のボーナス・トラック「恋爛漫」も、さらには2017年に日本武道館会場限定のワンコインCDとして発売された「シンドバッド」も、すべてこの日パフォーマンスされた。過去も現在も、おなじみの曲もレア曲も、とにかく時間の許す限りたっぷりプレイして、最高に高揚した状態で活動休止に突入したいということなのだろうと、確信に満ちた歌唱や演奏ぶりに接しながら思った。
すぅは涙でメイクが多少は乱れようと関係ないとばかりに感極まったMCを行なうと同時に、歌詞の一言一言をファンにメッセージとして届けるかのように熱く歌いきった。あいにゃんは「てのひら」でボーカリストとしての才能も示し、ゆかるんはキーボードを弾き分けるだけではなく客席を煽りまくった。あんなに流れるように扇子を回しまくるひともなかなかいないのではないか。さらに「ランジェリー」では楽器ポジションを交換、すぅがベースとヴォーカル、あいにゃんがギター、ゆかるんがドラムというスリー・ピース編成で、ガレージ・パンク風なサウンドを届けた。
「バンドっていいな、最高のバンドに出会えたなって思いました。もともとサイサイは5人で始まったバンドでした。あいにゃんがゆかるんのこと誘ってくれて、そこからまた編成が変わったりとかして。一旦このステージから降りてしまう決断をしてから、気持ちの整理をつけるためには時間があまりにもなかったなって、ちょっと思ったりもしています。私は高校の途中で上京して、なんかめちゃめちゃ面白い人生になるんじゃないかなと思って衝動的に始めたのが、このバンドでした。めっちゃめっちゃ狭いスタジオで練習して、まだ誰も知らないバンドだったけど、うちらが世界一かっこいいと思ってたし、世界一いい曲じゃんと思って喜んでました。武道館! とかアリーナ! とか言いながらずっと練習していました。今日で一旦ステージからは降りてしまうんだけど、曲はずっと残り続けるし、みんなが聴いてくれる限り、サイサイはみんなの心にいます。今日は思う存分みんなに、ありがとうと大好きだよを伝えたいなって思って来ました」(すぅ)
なお、この日のライブはuP!!!が独占配信。視聴チケットは1月23日(日)20:00までは一般販売される。