ギラギラと焼け焦げた砂浜♪~と歌ったのは、先日ジャガー星に帰還したロック・ミュージシャンのJAGUAR。だとすればこの『Cosmetic DNA』はギラギラした青春の高熱粒子を降らせて空気を焦がしながら、映画の最初から最後まで疾走に次ぐ疾走を続ける逸品といえるだろう(10月9日から東京・K’s Cinemaほか全国順次公開)。

 全役柄が強烈なキャラクターばかりといっても過言ではない内容だが、今回はアパレル店員・松井ユミを演じる川崎瑠奈(かわさき・るな)のインタビューをお届けしたい。わずか8歳でミュージカル・デビュー後、高校時代は演劇大会荒らしとして名を馳せ、劇団青年座の研究所で学んだこともあるためか、とにかく声に深みがあってよく通り、姿勢が凛としていて、話を聞いているこちらも身が引き締まっていくのがわかった。はたして、彼女の語る『Cosmetic DNA』の見どころや撮影秘話とは?

――『Cosmetic DNA』出演のきっかけを教えていただけますか?
 募集要項に「メイクが好きな方、大阪で撮影ができる方」と書いてあったことを覚えています。私はファッションやメイクが好きですし、ずっと舞台が中心だったので映画の仕事もしたいという気持ちがありました。それにちょうど1か月スケジュールが空いていたので、応募したところ、合格しました。コロナ禍になる前年、2019年のことです。

 監督の大久保(健也)さんと電話で何度かやりとりして、「ぜひよろしくお願いします。あなたの撮影は9月1日から始まりますので、できるだけ早く大阪に来てください」と言われたので、夜行バスに乗って、梅田駅に到着して、ちょっとした衣装合わせや脚本の読み合わせをして、すぐクランクインという感じでした。私が最初に参加したのは花火のところ。アヤカやサトミと「アルプス一万尺」をする夜のシーンです。

――会っていきなり、「親友のシーン」を撮ったんですね。
 そうです。ユミ役は当初、別の方が演じていたのですが、降板したので、急遽私が参加することになりました。ふたり(アヤカ役の藤井愛稀、サトミ役の仲野瑠花)の撮影は進んでいたらしいんですよ。そこに初対面の私が一人で入っていって、あの仲のよさそうなシーンを撮りました。撮影10分前ぐらいに「はじめまして、よろしくお願いします」とあいさつしたばかりのふたりと、すぐに親友のように演じなければいけないのは大変だなと思いましたけど、藤井さんがセリフの中で「ユミはそんなキャラじゃなくない? 違くない?」とアヤカの口調でアドリブしてくれて、それを聞いたときにスッと緊張が解けて、私もユミになって「うっせえわ」と言い返してしまいました(笑)。

画像2: 予測のつかないストーリ―と強烈なキャラクターたちが彩る映画『Cosmetic DNA』で、ひと際繊細な芝居を魅せた「川崎瑠奈」にインタビュー

 仲良しのシーンを撮っていくうちに、どんどん打ち解けて、本当に仲良くなった感じです。アメリカ村で、3人でおしゃれしてプリクラを撮ったり、バッグを振り回しながら歩くシーンもすごく楽しかったし、私の誕生日(9月10日)もサプライズで祝ってくれたのも本当に嬉しかったですね。

――実際の川崎さんは、髪の毛を染めたことも一度もないと聞きました。ユミの髪の毛はウィッグだったのでしょうか?
 このときはアパレルの店員さんということで、金髪のウィッグをつけて、カラコンをして、メイクもバッチリという感じでした。普段の私と全然違いすぎて、フライヤーを見た友人から、「瑠奈、出てないじゃん」と言われました(笑)。それに当時は、今より5キロぐらい太ってました。映画も上映されるし、ちょっとでもキレイに見られたいということで、今は相当、体を絞りましたが。

――ユミというキャラクターを、改めてご説明いただけますか。
 ファッションとメイクが好きだから、とりあえずフリーターのアパレル店員として働いていて、彼氏と同棲している。顔は笑ってることが多いんですけど、しゃべってることはすごく切なくて、人間に対して興味がない。でもアヤカやサトミと出会って仲良くなっていくうちに人間に興味が出て、成長してゆく。本当に自分の大切にしたいと思う人に出会ったんだと思います。

――役作りに関して、特に考えたことは?
 監督の大久保さんが考えていたユミ像は、もっとおしとやかな感じだったそうです。私の思うユミは、はっちゃけてパワフルな感じだったので、それで「ユミを川崎瑠奈に寄せてみよう」ということになりました。私は何も考えずにユミになりきろうと思っていましたけど、彼女は自分の体に問題を抱えているでしょう?

――そこはユミ像の核になる部分の一つだと思います。
 そこはとにかく繊細に表現しようと心がけました。本当はすごくキツいんだけど、「大丈夫」と自分に言い聞かせて、あえて笑ってごまかしているところがユミにはあると思うんです。

――アヤカ、サトミ、ユミがアイドル活動を始める場面も大きな見どころです。
 自分はアイドルになりたいと思ったことがないのですが、役を通してアイドルを演じるのは楽しかったですね。3人で「いかにお客さんをひきつけるか」「ファンを魅了するにはどうしたらいいんだろうね」と考えながら、かわいらしくアイドルのキメキメのポーズをしました。劇中では、ミュージックビデオを撮影するシーンもあるので、そこのダンスも見てほしいですね。

――曲名は「絶滅危惧種ガール」。作詞は大久保監督、作曲は西面辰孝(映画では柴島恵介役。物語の鍵を握る)さんです。
 「この3人はこれを歌いそうだから」と渡されました。どう聴いても正統派アイドルの曲ではないですが、ひねった、ちょっと変わった嗜好の人にはひっかかるかもしれないと思います。

――アヤカ役の藤井愛稀さん、サトミ役の仲野瑠花さんの印象は?
 愛稀ちゃんは『嵐電』という映画で拝見したことがあるんですよ。台本をいただいてキャストの名前を見た時に、この方と共演できるんだと純粋に嬉しかったですね。本人にお会いした時に私は緊張してガチガチしていたんですけど、撮影を通じて距離が近づいていきました。アヤカ役は過酷なので、(現場では)とても大変だったと思いますが、私は何でも話し合える親友だと思っています。あと、目力がすごいです。

 (仲野)瑠花ちゃんとは、花火のシーンが終わった後、愛稀ちゃんがひとりで撮影するバーのシーンがあって、そのときの待ち時間で親しくなりました。私のなくした付け爪を一緒に探してくれたり、同い年であることがわかったり。撮影中、ピリピリした空気の中でも、瑠花ちゃんはホワホワしているところがあって、癒されました。このふたりがいたからこそ、私はごく自然に演技ができたんだと思います。

画像4: 予測のつかないストーリ―と強烈なキャラクターたちが彩る映画『Cosmetic DNA』で、ひと際繊細な芝居を魅せた「川崎瑠奈」にインタビュー

――そこに、舞台での経験が加味されて。
 舞台の経験がなかったら、今ごろ私はどうなっていたんだろうと思います。高校演劇を3年間続けていて、佐賀県の大会で1位になって、九州には250校の演劇部がありますが、その1位になって、全国大会に出て。日本全国の2500校のうちの12校がその全国大会に出られるんです。私は高2、高3のときに出ることができましたが、正直むちゃくちゃ忙しかった。1か月の間に1時間の作品を3本公演していた時期もありました。セリフを覚えて、稽古して、本番。休みがほぼない。それに高校演劇はマイクがないんです。地声でやって、声帯結節になって全然声が出ない状態になったこともあります。

 高校を卒業して、東京に来て、劇団青年座の研究所で声の出し方、呼吸法を学んで、声帯結節が直って、声が出せるようになりました。2年時も合格をいただきましたが、舞台に限らず映像など広いジャンルで活動したいということで(青年座の研究生を)辞退させてもらいました。そこに『Cosmetic DNA』のお話があったんです。

画像5: 予測のつかないストーリ―と強烈なキャラクターたちが彩る映画『Cosmetic DNA』で、ひと際繊細な芝居を魅せた「川崎瑠奈」にインタビュー

――いろんな面白い映画があるなかで、『Cosmetic DNA』の突飛さ、目まぐるしさは異様だと思います。
 疲れる作品ですよね(笑)。疲れるけどストレス発散できる、スカッとする映画だと思っています。そして単純におもしろい! 今の自分には(撮影した)2年前とは違う考えも生まれていて、世の中では「男女平等」と言われていますが、正直言って23歳の一個人としては女と男は別物という考えです。若者が性差の問題とか、こういうことを考える機会もなかなかないと思うんですよ。この映画が、いやがらせを受けているとか面白くないことを解決するための一歩でも手助けになれたらというか、こういう解決策もあるんだよという、心のよりどころになれるような作品であればいいなと思います。あと、いろんなシーンにつながりがあるので、一度観ても二度観ても楽しい作品になっています。

映画『Cosmetic DNA』

10月9日よりK’s cinemaほか全国順次公開

<キャスト>
藤井愛稀、西面辰孝、仲野瑠花、川崎瑠奈 ほか

<スタッフ>
監督・脚本・撮影・編集・照明:大久保健也
配給:Cinemago
販売元:オデッサ・エンタテインメント
製作:穏やカーニバル
(C)穏やカーニバル

公式サイト
https://cosmeticdna.net/

川崎瑠奈ツイッター
https://twitter.com/pompomoon0910

連日舞台挨拶を開催
10月11日(月) 上埜すみれ【特別ゲスト:俳優】、大久保健也監督、藤井愛稀
10月12日(火) 《ギャル映画評論家(仮)》=石川千裕、8467(やしろなな)、MIMI【特別ゲスト:モデル】、大久保健也監督
10月13日(水) 石川優実【特別ゲスト:アクティビスト】、大久保健也監督
10月14日(木) アダム・トレル【特別ゲスト:映画プロデューサー】、大久保健也監督
10月15日(金) 冨手麻妙【特別ゲスト:俳優】、大久保健也監督、西面辰孝
10月16日(土) 氏家譲寿/ナマニク【特別ゲスト:映画評論家】、大久保健也監督、藤井愛稀
10月17日(日) 小川深彩【特別ゲスト:俳優・監督】、藤井愛稀、川崎瑠奈
10月18日(月) 中川奈月【特別ゲスト:監督】、大久保健也監督、藤井愛稀
10月19日(火) 東盛あいか【特別ゲスト:俳優・監督】、藤井愛稀、石田健太
10月20日(水) 切通理作【特別ゲスト:映画評論家】、大久保健也監督、藤井愛稀
10月21日(木) カミヤマ△/ 三角絞め【特別ゲスト:映画ブロガー】、大久保健也監督
10月22日(金) 塩田時敏【特別ゲスト:映画評論家】、大久保健也監督、西面辰孝
※都合により予告なく登壇者が変更する場合があります。ご了承下さい

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