劇作家 田中千禾夫の戯曲を初めて実写映画化した『祈り-幻に長崎を想う刻(とき)-』が、長崎での先行上映を経て、いよいよ東京でも8月20日(金)に公開されることとなった。主演は高島礼子と黒谷友香の二人。ともに戦争の、原爆の、心無い人からの傷を受けながらも、自らの信念に寄り添いながら次の世代への橋渡しを実現すべく、懸命に生きている。ここでは、忍役を演じた黒谷友香にインタビューした。

画像1: 映画『祈り-幻に長崎を想う刻(とき)-』がいよいよ公開。「日本人として忘れてはいけない事柄を描いています。多くの人に劇場に足を運んでほしい」(黒谷友香)

――映画『祈り-幻に長崎を想う刻(とき)-』が一年の公開延期を経て、いよいよ公開を迎えます。今の心境を教えて下さい。

 やっと皆さんに観ていただけます。無事に公開できることを喜んでおります。

――本作が完成した時の感想は?

 撮影中は自分のパートしか分かりませんでしたから、初めて全体を通して見た時は、こういう風に完成したんだって、感動しましたね。本当にこの作品に出演できてよかったと思いました。

――黒谷さんが演じられた忍の役作りについて教えてください。

 もちろん台本も読みますけど、私は衣装合わせをやっていくうちに、その世界観が見えてくることが多いんです。忍はこういう服を身に着けているんだ、こういう髪型をしているんだ、ということを経験することで、役のヒントが浮かび上がってくるんです。その上で本読みをすることで、さらに深まっていきますね。加えて、共演の方々の衣装も見せてもらうことで、忍を取り巻く人々の雰囲気も把握していきました。

 あとはもちろん、キリスト教のこととか、戦争(長崎原爆)についても自分なりに調べました。セリフに込められたメッセージを、自分の血肉の通った言葉として表現しないといけませんから、とにかく準備を大切にしました。

――少し話を戻しまして、最初に台本を読んだときの忍の印象は?

 難しいなと思いましたね。自分にない部分を、どういう風に自分のものにしていくか、から始まるわけですから。そのために、いろいろなものを見たり、勉強したりして、だんだんと、あっこういう人なんだ、こういう感じかなというのが増えていくんです。それがさきほどお話した準備期間の過ごし方でした。

画像2: 映画『祈り-幻に長崎を想う刻(とき)-』がいよいよ公開。「日本人として忘れてはいけない事柄を描いています。多くの人に劇場に足を運んでほしい」(黒谷友香)

――台本に衣装合わせなどを組み合わせていくことで、役が乗っていくと。

 そうですね。細かいところでは、忍は詩集箱を首からぶら下げているので、髪の毛は縛って右肩に流しているんです。そういう細かいレベルの部分をつめていくことで、どんどん実際に近づいていくのかなと思います。

――周囲のセットもかなり綿密に作り込まれていました。

 そうなんですよ。お酒の蔵をお借りして、改造して飾り付けてセットにしているんですけど、ちゃんと鹿ちゃんのいる2階にも上がれるようになっているし、見えない(映っていない)ところまで作り込まれていてすごかったですよ。

――長崎でも撮影をされていますよね。

 はい、そうしたセット撮影が終了してから、実際に長崎へ行って、忍が―本当の史跡を使わせてもらって撮りました。

――本作の舞台は、戦後すぐではなく、10数年後という設定です。当時の世界観に触れてみていかがでしたか?

 戦後すぐではないというのがミソで、10数年経っても原爆の被害で苦しんでいる人がいる。それには終わりがないわけです。例えば、鹿ちゃんにはケロイドがあるし、忍には身体的なものはないけど、精神的に大きな傷がある。そういう人たちが一所懸命というか、自分たちが受けたものをなんとか乗り越えて、次の新しい世界を一緒に必死に作っているという時代だったので、あの市場みたいに本当にまだ何も整理・整備されていない感じは、日本全国にもまだまだたくさんあった瞬間なんだろうなと思いました。

――忍は、家計を助けるために詩集を売っていますが、その割には旦那とはあまりうまくいっていませんね。

 人それぞれ、いろいろなものを背負っていますからね。忍で言えば次五郎(金児憲史)との間の葛藤もあったし。

――その次五郎との因縁にもきちんと決着がつきます。

 ずっと復讐を誓ってきたけど、いざその場を迎えたら……。で、結局望を果たせぬまま帰ってきますが、主人(田辺誠一)といろいろと話し合うことで、次の自分に進むことができるようになります。忍にとって重要なシーンだったので、集中して臨みました。

――それを経験して夫婦の仲がまた一段と深まったように思いました。

 夫婦としての距離感が縮まって、一緒に生きていこう、お互いにそう思えるようになったのだと思います。幸せに生きていってほしいなと願っています。

画像3: 映画『祈り-幻に長崎を想う刻(とき)-』がいよいよ公開。「日本人として忘れてはいけない事柄を描いています。多くの人に劇場に足を運んでほしい」(黒谷友香)

――最後、無事に保護されたマリア様はコミカルな一面も見せます。

 ねっ、美輪さんの声がスッと入ってきましたし、とても自然な仕上がりで感動しました。現場ではご一緒できませんでしたけど、同じ作品に出演することができてうれしかったです。

――では、最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。

 戦争や原爆を経験した方々の高齢化が進んでいるいまだからこそ、そうしたテーマを扱った作品に出演できたことは、すごくやりがいがありました。観てくださる方には、映画のメッセージを受け取ってほしいと思いますし、日本人として忘れてはいけない事柄でもあるので、多くの人に劇場に足を運んでほしいです。お願いします。

映画『祈り-幻に長崎を想う刻(とき)-』

8月20日(金)より シネ・リーブル池袋、UP LINK吉祥寺で全国順次公開

<キャスト>
高島礼子 黒谷友香
田辺誠一 金児憲史 村田雄浩 柄本明 美輪明宏(被爆マリア像の声)

<スタッフ>
監督:松村克弥
脚本:渡辺善則、松村克弥、亀和夫 統括プロデューサー:家喜正男 撮影:髙間賢治 美術:安藤 篤 音楽:谷川賢作 プロデューサー:亀和夫、城之内景子
原作:田中千禾夫「マリアの首」戯曲
主題歌:「祈り」新自分風土記Ⅰ~望郷編~ 歌:さだまさし
制作協力:NHK エンタープライズ
製作:Kムーブ サクラプロジェクト
協力:映画「祈り」を応援する会
後援:長崎市/ 一社 長崎県観光連盟
配給:ラビットハウス/Kムーブ
2020年 日本 /110 分
(C)2021 K ムーブ サクラプロジェクト
公式サイト https://inori-movie.com/

黒谷友香 http://www.spacecraft.co.jp/tomoka_kurotani/

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