ガラス工芸品でもある真空管を、オブジェ感覚で配置した意匠が人気を集めるキャロットワンのシリーズ。ガラスのブロックは重しであると同時に、内部照明のLED青色光を立体的に導いて真空管を引き立てている。
これは以前のLIMITED版に採用されたバーブラウンの高性能オペアンプOPA627AUを採用したのが特徴。このオペアンプはかつて小売りで数千円もした高級品だ。しかも本機ではTIに買収される前のバーブラウン製というヴィンテージ品を採用。現行のプロセスルール=回路パターン形成の基準とは異なり、内部配線が太いのだという。
真空管はEX版と同様にECC802S GOLD(12AU7の高信頼管)であり、ピンに金メッキを施したハイグレードヴァージョンを採用。12W(8Ω)が2chという出力段はデジタルアンプによるもの。付属するAC電源アダプターはDC出力12V/5A仕様。
大型モニタースピーカーのB&W 800 D3に接続して試聴。声やその帯域の楽器がなかなか精妙な響きであり、ときに艶やかな音が出現してアンプのサイズを疑うことになる。ボサノバ系の歌やダイアナ・クラールのジャズ系歌唱など声色の変化がよくわかり、音像も3次元的だ。大編成では限界があるけれど、モーツァルトのピアノ協奏曲など和声も強弱の幅も良好であり流れがよい。フォステクス製の小型フルレンジスピーカーでも試したが、中域の明敏な応答性が目立ってきた。使いこなしの余地のある好位置の企画だ。