Netflix(ネットフリックス)は本日午後、同社が配信するアニメ作品のラインナップ拡充に向け、日本を代表するクリエイター6名とのパートナーシップをスタートすることを発表した。
ネットフリックスは、アクティブユーザー1億6700万人以上、世界190ヵ国に対し30言語で配信サービスを提供している。さらに最近は、同社が手がける作品は配信という枠を超えて注目を集めており、アカデミー賞を始め様々な映画賞を受賞していることも話題だ。
中でもアニメーションは日本発信の人気コンテンツであり、ネットフリックスの組織上でもアニメを作る本部として東京が拠点に選ばれて。つまりどんな作品を作るかについてアメリカに相談する必要はなく、日本にいるスタッフで決定できるのだという。
それもあり、2017年から日本発のアニメ作品を強化している。実際に『DEVILMAN』はアニメファンの間でも大きな注目を集めていたし、2019年に配信がスタートした『ULTRAMAN』は昨年日本でもっとも見られたアニメに選ばれている。
そのためには製作体制も重要で、ネットフリックスでは株式会社プロダクション・アイジー、株式会社ボンズ、株式会社アニマ、株式会社サブリメイション、株式会社デイヴィッドプロダクションといった実績ある国内アニメーション制作会社5社と契約を結んでいる。
そして今回は次のステップとして6人のクリエイターとパートナーシップを締結、彼らと共に原作を生み出していくことで、“世界がまだ見たことのないストーリーを、日本から”届けることを目指している。
今回パートナーシップを発表したのはCLAMP、樹林 伸、太田垣康男、乙一、冲方 丁、ヤマザキマリという面々で、それぞれ漫画家、小説家、脚本家、映画監督など多様な分野において世界的なアニメ人気に大きく貢献するトップランナーとなる。
本日開催された発表会では、CLAMPの大川七瀬氏、脚本家の樹木 伸氏、Netflixアニメチーフプロデューサー 櫻井大樹氏の3名によるパネルディスカッションも開催された。
桜井氏から今回のパートナーシップの意義や期待を聞かれたおふたりは次のように答えた。
「ぼくはオリジナルアニメの企画は初めてで、脚本も書いたことがなかったので、興味がありました。何より最初からグローバルに発信することを想定している点がいいですね」(樹林氏)
「テレビも多くの人が見ている媒体ですが、世界中に同時に届けられるのは配信だけだと思います。それもあってお引き受けしました」(大川氏)
さらにアニメの製作についての現状と課題を聞かれ、「テレビアニメはスポンサーありきという印象です。今でもアニメは子供向けで、テレビアニメでは描けないことも多くあります。でも配信なら自由な環境でやってもらえる、そんな新しい考え方に引っ張っていって欲しい」(樹林氏)と語った。
大川氏も、「アニメはブルーレイやDVD、グッズの売り上げで製作費を回収していて、そのシステムから逃れられなかった。内容がよくても、キャラクターグッズが売れない作品は作れなかったのです。配信も条件はあるでしょうが、今までとは違う物になるでしょう」と期待を語った。
さらに動画配信がアニメのクリエイターや業界にもたらすものについても、おふたりは以下のように話してくれた。
「ネットフリックスは『ハウス・オブ・カード 野望の階段』あたりから新しい配信会社として変化してきたと思っています。ネットフリックスオリジナルの『DEVILMAN』などは原作の世界をちゃんと伝えている。この方向でアニメを作れるようになったら世界が変わります。世界同時、グローバルに作品をぶつけていけるでしょう」(樹林氏)
「配信が入ってきた今のタイミングが、アニメ界が変わっていく節目でしょう。アニメ製作は時間もお金もかかります。製作委員会ではどうしても色々な意見が出て平均化しますが、ネットフリックスが作ることで監督の個性も活かせるようになるでしょう。ここに配信でアニメを作る価値があると思います」(大川氏)
最後に櫻井氏が、「日本にはたくさんの素晴らしいクリエイターがいらっしゃいます。ネットフリックスがそんな人たちのホームになりたいと考えています」と今後の意気込みを語って、パネルディスカッションは終了した。
なお、今回のパートナーシップへの関わりは脚本やキャラクター設定などそれぞれ異なっているそうで、その詳細はこれから明らかになっていく模様だ。さらに各作品を2K/SDRで作るのか、それとも4K/HDRなのか、さらには音では5.1chやドルビーアトモスが使われるのかなどもこれから検討していく予定だという。
StereoSound ONLINEでは、それらがはっきりしてきたタイミングで、ネットフリックスの担当者氏により詳しいインタビューをお願いする予定なので、お楽しみに。