今回は、12月4日に発売された『ライオン・キング』のUHDブルーレイを大画面&サラウンドで再生してみた。これは『美女と野獣』や『アラジン』同様の名作アニメの実写化で、フルCGで動物たちが描き出された作品だ。

 ここしばらくは(『〜スカイウォーカーの夜明け』の件もあり)、自宅でゆっくりブルーレイを見ることができなかったのだけど、実は本作についてはずっと気になっていたのです。

 というのも、久保田明さんから「『ライオン・キング』のCGは不気味の谷を越えたと思う。君も猫を飼っているんだから、そのあたりの感想を聞かせてよ」と言われていたから。

画像: 「ライオン・キング 4K UHD MovieNEX」¥6,000(税別) ●製作:2019年●本編:約119分●映像圧縮方式:HEVC ●音声:英語(ドルビーアトモス)、日本語(7.1ch/ドルビーデジタルプラス)●画面サイズ:1.78対1

「ライオン・キング 4K UHD MovieNEX」¥6,000(税別)
●製作:2019年●本編:約119分●映像圧縮方式:HEVC
●音声:英語(ドルビーアトモス)、日本語(7.1ch/ドルビーデジタルプラス)●画面サイズ:1.78対1

 現代の映画でCGやVFXを使っていないものはほぼないだろうし(特にハリウッド作品)、既に故人となった俳優をCGで復活させた作品も多々あることを考えれば、動物や背景をCGで描き出すのも難しくはないだろう。

 ただこれまでは“不気味の谷”とまでは言わないにせよ、CGで表現した人間の映像にはどことなく違和感があったのも事実。全編通してではないにせよ、作品中にふと気になってしまうこともあった。

 では動物だったらどうか?

 約2時間の本作を通して見て思ったのは、久保田さんの言葉の通り“このCGは不気味の谷を越えている”ということ。冒頭のシンバ誕生シーンに集まった象やカバ、シマウマなどなど、それぞれの皮膚の質感、毛並まで本物としか思えない。いや、マジに凄いのです。

 今回はUHDブルーレイを4K/SDRプロジェクターで再生しているので、光の具合(HDRの再現性)は本来とは違っているけれど、ディテイル再現はしっかり追い込めているはず。その状態でも、ライオンのひげやたてがみの細かさに驚きこそせよ、粗はまったく見えない。というか、4Kだから細部まで描き込まれているのが分かる。

画像: (c)2019 Disney

(c)2019 Disney

 シンバやナラの描写がきわめてリアルで、ふわふわとした毛並みも思わず触りたくなる。お目付役のザズーの羽毛のカラフルな再現も光沢があっていい。

 先述の通りプロジェクターはSDRモデルだが、光の当たった部分の光沢感や、明部と暗部の描き分けがていねいになされていることも充分わかる。Ch(チャプター)6での薄暗がりでのムファサとシンバ親子の描写、ほの明るい中での再現性も自然だ。

 背景の描写もリアルで、サバンナの岩山の再現、砂礫の描き分けなどもていねい。監督のジョン・ファヴローがツイッターで、「サークル・オブ・ライフ」冒頭のワンショットのみアフリカで撮影した本物の映像だと明かしたそうだが、そう言われて見直してみても、正直見分けはつかなかった。

 ファヴロー監督は、観客が違和感なく作品に入り込めるように冒頭に現実の映像を使ったと話していというが、逆にCGの風景に自信がなければこんなこともできなかったかもしれない。その真価は4KのHUDブルーレイではいっそうはっきりしている。

 サウンドはドルビーアトモス収録で、音楽パートで包囲感を演出している。特にシンバがティモンやプンヴァと出会い、「ハクナ・マタタ」を歌うシーンなどは、3匹が楽しんでいる様子がよくわかって、こちらの気分も盛り上がってくる。

 またCh8のヌーの暴走は低音の迫力がたっぷりで、サブウーファーが活躍する。Ch16で天から降ってくるムファサの声の太さ、雷鳴の轟きの豊かさも聴き所だ。

画像1: 動物CGはアンドロイドの谷を越えたか? 『ライオン・キング』のUHDブルーレイを見ながら、飼っている猫をしげしげ見直してしまった【シリーズ:4K深掘り14】

 ストーリー自体はアニメ版の『ライオン・キング』と同じで、その意味ではあまり新鮮味はない。しかし実写版とアニメ版では作品から受ける印象は微妙に異なっている。アニメ版が“ファンタジー作品”という雰囲気を多く放っているのに対し、実写版はファンタジーではあるのだが、案外動物たちもこんな世界で生きているのかも、と思わせてくれる。

 それはCGの細かさ、映像としての完成度はもちろんだが、シンバたちの動きや表情がリアルということも大きいだろう。わが家にも猫が2匹(7歳のメスと5歳のオス)いるが、シンバやナラが劇中でこいつらと同じ動き、猫科特有の動作を見せ、それがまたとても自然なのだ。

 特に冒頭、生まれたばかりのシンバがラフィキに抱え上げられるシーンの脱力感、足をぶらぶらさせている様子が愛猫とうりふたつで、思わず見比べてしまった。

 先に書いた、“動物CGは不気味の谷を越えた”という感想は、CGの技術的な進歩だけでなく、動きの自然さを含めた総合的な演出が生み出したものなのだろう。

 『ライオン・キング』は以前この連作で紹介した通り、アニメ版のUHDブルーレイも発売されているので、ぜひセットで楽しんでいただきたい。久保田さんの言葉通り“猫好きには必見”です。(取材・文:泉 哲也)

『トイ・ストーリー4』は、キャラクターへの共感力が凄い。
『ライオン・キング』とは違う意味でのCGに注目。

画像2: 動物CGはアンドロイドの谷を越えたか? 『ライオン・キング』のUHDブルーレイを見ながら、飼っている猫をしげしげ見直してしまった【シリーズ:4K深掘り14】

 ディズニー・ピクサー作品のド定番ともいえる『トイ・ストーリー』シリーズ。2019年7月に日本公開された最新作『トイ・ストーリー4』のUHDブルーレイは、『ライオン・キング』とは違う意味でCGの凄さを実感できる一枚だった。

 『トイ・ストーリー』は1995年に劇場公開され、当時としては初めての長編CGアニメーションだったことも有名。そこから24年後に登場した作品だから、ピクサーの最高技術が盛り込まれているのは想像に難くない。

 そのパフォーマンスを4K/UHDブルーレイで確認してみたけれど、確かに“桁違いのCG”だった。以下、試聴しながらのメモから抜粋。

●雨の表現、建物のディテイルの描写が細かい
●ボーの陶器の質感や表情が、これまでの3作品ともまったく違う
●チャプター7の、薄暗い屋外を歩くウッディとフォーキーの表現、微妙な色あいが美しい
●アンティークショップのショウウィンドウに光が当たっている様子が絵画のよう
●アンティークショップの棚の裏、ほこりの再現がなまなましい
●ギャビーのアップで、そばかすの再現がていねい
●カーニバルの電飾が綺麗。HDRの効果もありそう
●サウンドは極力自然な方向を志向しているようで、強調感はない。セリフのニュアンス、聞き取りやすさはさすが

 映画は実写、CG、アニメといった表現手段に関わらず、虚構の世界、夢の世界を描いている点は共通していると思う。でも映画に惹かれるのは、ひとつには登場人物に共感したり、愛着を感じたりできることも一因ではないだろうか。

 その意味でも『トイ・ストーリー4』は人形たちの表情に引き込まれるし、キャラクターに感情移入してしまう。その思いは4K/UHDブルーレイならきっともっと大きくなるはずだ。

(c)2019 Disney/Pixar

This article is a sponsored article by
''.