本日から東京・中野サンプラザで「秋のヘッドホン祭り2019」がスタートした。その会場では朝一番から、SNEXTの新製品発表会が開催された。
SNEXTは自社ブランドである「final」のイヤホンも多くラインナップしているが、その他にも様々な海外ブランドの輸入販売を手がけている。それらはいずれも“物造り”にこだわるブランドを選んでいるそうで、これは同社の製品づくりの姿勢に通じるポイントだという。そんな中から、今回は多数の注目新製品が発表された。
第一は、DITAの「DREAM XLS」(XTRA LARGE SOUNDSTAGE)だ。これは2年前に発売された「DREAM」の進化版で、オリジナルモデルとは音の方向性を変えたシリーズ展開となる。具体的にはエモーショナルな方向で、初代機のクリアーな音場を受け継ぎつつ、さらに広大な空間再現を目指したそうだ。
同ブランドCEOのダニー・タン氏によると、「製品の仕上げも初代機はマットで、XLSはきらきらでセクシーになっています。またXLSはフルレンジユニットひとつですが、目指した音をきちんと再現できています」と話していた。
そもそも2012年頃からダイナミックドライバー1基で音を仕上げたかったそうだが、当時はBAドライバーなどを複数使った製品が人気で、難しかったのだという。このドライバーはULTRA LINEAR DYNAMIC DRIVERと命名されている。
なおXLSの筐体はチタンの切削加工で作られている。これほど小さなサイズでチタンを切削する精度を出すのがたいへんで、難しいそうだ。また表面仕上げも高い精度が要求されるので、手作業で職人が行なっているという。
またDITAの製品には必ずOSLOケーブルのケーブルが付属しているが、今回のXLSにも、このイヤホンで一番いい音を聴けるようにチューンしたOSLO-XLSケーブルが使われている。プラグを簡単に交換できるのでユーザーにも使いやすいとダニー氏は説明していた。
続いては、ルーマニアのオーディオブランドMEZEの新製品「RAI SOLO」が紹介された。
MEZE Audio CEOのアントニオ・メゼ氏は、「弊社は市場のトレンドに沿って製品を作る会社ではありません。長く使えて、いつの時代にも使えるデザインを目指しています。自分が愛用したい製品を作っているのです」と、同社の物作りのポリシーを語ってくれた。
RAI SOLOは、「RAI PENTA」の弟モデルとなる製品で、より多くのユーザーに使ってもらいたいという思いから作られている。もともとRAI PENTAの前に設計を始めていたそうだが、量産モデルでも品質を担保するために設計に時間をかけたとのことだ。
搭載されたドライバーはPET素材に銀コーティングを施したダイナミック型だが、そのコーティングにはユニークな特徴がある。というのが、コーティングを左右ふたつに分けており、それぞれをプラス、マイナスに割り当ててボイスコイルにつないでいるのだ。
一般的なドライバーではボイスコイルからの引き出し線を振動板の裏に接着剤で固定していたが、それでは振動の際に歪みを生んでしまうとMEZEでは考えたそうだ。この方式を採用した結果、低歪みで繊細な低域再生が可能になったという。同社ではこれをUPM(ユニファイドピストニックモーション)構造と呼んでいる。
筐体はステンレス素材で、ドライバーの振動を抑える構造を採用、表面仕上げは手作業で行なっている。ちなみにRAI SOLOはすべてルーマニアにある自社工場で製造されている。
その他にも、新ブランドFiR Audioのイヤホン「M2」「M3」「M4」「M5」も展示されている。こちらは某老舗IEMブランドから独立したスタッフが起業したもので、一人のエンジニアが組み立ての全工程を受け持っているのが特徴という。型番の数字は搭載されたドライバーの数を示しており、それぞれ以下のような構造になっている。
「M2」……5.8mmダイナミックドライバー(Low/Mid)+BAドライバー(High)
「M3」……9mmダイナミックドライバー(Low/Mid)+BAドライバー×2(Mid/High、High)
「M4」……9mmダイナミックドライバー(Low)+BAドライバー×3(Mid、Mid/High、High)
「M5」……9mmダイナミックドライバー(Low)+BAドライバー×2(Mid、Mid/High)+ダイレクトドライバー×2(High、Ultra High)
FiR Audioの製品は、10万円〜30万円の価格帯で、年明けからの販売を目指している。
さらにQuestyle製プレーヤー「QPM」も11月8日に発売される。フルディスクリートアンプの一部をチップ化することで、QP2R比で出力が2倍、静寂性は2.5倍に向上したそうだ。フルバランスアンプで、4.4mmのバランス出力コネクターも備えている。
対応フォーマットはWAV、FLAC、WMA、OGG、AAC、MP3,ALAC、AIFF、DSF、APEで、ハイレゾ信号は最大382kHz/32ビットのリニアPCMとDSD11.2MHzが再生できる。DACチップはAKMのAK4490だ。国内100台限定で、価格は¥248,000(税別)。
最後に、SNEXT株式会社 代表取締役社長の細尾 満氏が登壇し、同社の新ブランドについて解説してくれた。
その前に細尾氏は懐からイヤホンを取り出し、「これはイン・イヤ・モニターのA8000です。ピュアベリリウム振動板を搭載した製品で、5年前から開発を進めてきました。近々finalの新製品として発表しますので、ご期待ください」とサプライズを披露した。
続いて、新ブランドのagが紹介された。細尾氏によると、最近はワイヤレスでも多くのブランドや製品があり、何を買えばいいか分からないという人も多いそうだ。agはそんな方の指針になるような製品を作りたいという想いからスタートしたそうだ。
そもそもSNEXTは他社向けにワイヤレスイヤホンを設計・製造しており、物造りのノウハウを持っていた。その技術を活かし、優れたODM企業と協力することで「ちょうどいい」製品を生み出せるのではないかと考えたわけだ。なおブランド名のagは古語の「ありがたきもの」の意味で、今でいえば「めったにないもの」を意味している。
製品ラインナップはマニアのサブ機としても使える「K」(かしこし)、手頃な価格で使いやすい「R」(らうたし)の2種類を準備。今回は「TWS01K」(¥12,800、税別、以下同)、「TWS02R」(¥8,480)、「TWS03R」(¥5,980)の3モデルが発売される。TWS01KとTWS02Rは11月15日、TWS03Rは12月初旬の発売予定だ。