ホンダパワープロダクツジャパンでは、“HONDA”ブランドのオーディオ用蓄電池「LiB-AID E500 for Music」を発売すると発表した。200台の限定生産で、価格は¥270,000(税別)。同社の特設サイトで12月18日までの期間限定で予約を受け付けており、製品は2020年2月中旬に納品予定だ(応募者多数の場合は抽選となる。購入はクレジットカードのみ)。

画像: オーディオ用蓄電池「LiB-AID E500 for Music」。写真は試作機のため、商品とは仕上げが一部異なるとのこと

オーディオ用蓄電池「LiB-AID E500 for Music」。写真は試作機のため、商品とは仕上げが一部異なるとのこと

 ところで、そもそもなぜホンダがオーディオ用バッテリーを販売することになったのだろうか?
実はホンダでは1950年代からバイクや車とは異なる分野で運用される“汎用エンジン”を取り扱うチームがあった。そこでは耕うん機や発電機、除雪機などの汎用エンジンが活用するさまざまな商品の開発をしており、発電機の技術を活かして蓄電機=バッテリー電源の研究も進めていたという。

 実際に1959年にソニーがポータブルテレビを発売した際に、井深 大氏から本田宗一郎氏にこの製品のための発電機の供給を打診されたこともあったとかで(実現はしなかった)、当時から製品の質には定評があったのだろう。

 その後、1965年の小型発電機発売以降ラインナップを拡充し、1998年には正弦波インバーターを搭載した「EU9i」が登場、この頃からAC出力の品質にも配慮していたわけだ。2017年に発売された現行モデル「LiB-AID E500」は、今話題のリチウムイオン蓄電池を使って小型化を実現、先述の正弦波インバーター機能ももちろん搭載されている。

 E500の特徴は「手間がいらない」(家庭のコンセントで簡単に充電でき、繰り返し充電可能)、「気軽に使える」(最大出力500W、USB Type-Aを2口装備)、「アクティブに使える」(重さ5.3kgで持ち運びも簡単)といった点で、キャンプや釣りなどのアウトドアファンにも好評だそうだ。

画像: 充電は付属のACアダプターを背面の端子につなぐだけと、とても簡単

充電は付属のACアダプターを背面の端子につなぐだけと、とても簡単

 さらにホンダの調査によると、E500ユーザーの約5%がオーディオ再生用として使っていたという。これはアウトドア以外ではひじょうに高い値であり、ホンダとしても音楽用のバッテリーが求められているのではないかと考えたのだろう。

 そうして開発されたのがE500 for Musicというわけだ。その企画コンセプトは、プレーヤーやプリアンプといった製品をノイズの多い商用電源から切り離すことで、音楽再生の品質を向上させようというもの。

 ベースはE500だが、音楽再生用として様々な改良が加えられている。その第一として、理想的な正弦波を作り出すために得意のインバーター回路を搭載している。この回路では、リチウムイオン電池からの直流電流を適切な電圧まで昇圧してからDC/AC変換することで、正弦波の品質を高めている。

 さらにコンセント部にはフルテックの「GTX-D NCF」をカスタマイズして搭載した。純銅にロジウムメッキを施した電極で安定した給電も可能という。またコンセント本体部にはナノサイズのセラミックとカーボンを調合して制振性を高めている。

画像: 左は正弦波インバーターの回路基板で、右は専用に開発されたコントロールパネル

左は正弦波インバーターの回路基板で、右は専用に開発されたコントロールパネル

 電源スイッチなどのコントロール部も新たに開発している。振動減衰性能に優れたマグネシウム含有アルミ合金のヒドロナリウムを使うことで、コンセントの性能をフルに引き出すことを目指しているのだ。

 またコンセントへの内部配線にはオヤイデ電気製の「102 SSC」で使われているハイグレード線材を採用するなど、細かい点まで抜かりはない。本体ボディの内側には電磁波シールド材が取り付けられており、様々な外来ノイズも遮断できるとのことだ。

 バッテリーとしての基本スペックは最大出力500W、定格出力300W、重量5.4kg、運転時間4〜6時間(50Wの場合)というもので、出力はアース付きの3ピンコネクターとUSB Type-Aを、それぞれ2口備えている。

 バッテリー自体の持ちも気になるところだが、充放電寿命としては1000サイクル(フル充電から使い切るまでが1サイクル)以上の性能を備えているそうだ。本体には残量インジケーターもついているので、使用時にはここもチェックしておくといいだろう。

 充電は付属のアダプターをつなぐだけと簡単だが、再生時にはコネクターを外した方が音質はよくなる可能性が高いという。空いている時間に充電しておき、音楽や映画を楽しみたい時にはコネクターを外すといった使い方がお薦めだ。

画像: ボディの裏側には電磁波シールド材も取り付けられている

ボディの裏側には電磁波シールド材も取り付けられている

 今回、E500 for Musicの試作機を借用できたので、StereoSound ONLINE視聴室でCD再生時の変化を確認してみた。再生システムは、プレーヤーがパイオニア「UDP-LX800」、AVセンターはデノン「AVC-X8500H」、スピーカーはエラック「BS243.4」という構成だ。

 LX800を壁コンセントにつないだ場合と、E500 for Musicにつないだ場合で比較したが、一聴して音が変化した。壁コンセントでも高域まで素直に伸びたいい音を楽しめるが、E500 for Musicにつなぎ替えると定位がさらによくなり、ステージの見通しがクリアーになる。低域も締まって、階調感もアップする(X8500Hはピュアダイレクトモードにセット)。

 電源以外はまったく同じ条件なのに、音場再現がはっきり変わるのだから、オーディオは本当に不思議だ。今回は音の変化しか確認できなかったが、映像でも違いが出てくる可能性はある。ホームシアターファンに気になる製品が、またひとつ誕生した。

画像: StereoSound ONLINE視聴室にE500 for Musicをセットしたところ。プレーヤーのUDP-LX800をつないで音の違いを比較してみた

StereoSound ONLINE視聴室にE500 for Musicをセットしたところ。プレーヤーのUDP-LX800をつないで音の違いを比較してみた

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