さまざまな映画祭で受賞・好評を受けてきた岡部哲也監督作『歯まん』が、この3月2日より待望の一般公開となる。初めての恋でとある業を背負わされてしまった少女のもがき、苦しみ、そして生き様が、本作で初主演を飾った前枝野乃加(旧:馬場野々香)によって体現されている。本稿では、その前枝野乃加に、企画開始からの6年を振り返ってもらった。

画像1: 前枝野乃加/初主演作『歯まん』が6年を経て待望の一般公開。「当時の全力を傾けて挑んだ作品です。ぜひ、たくさんの方に観ていただきたいです」

――出演おめでとうございます。いよいよ公開ですね。
 ありがとうございます。オファーをいただいてから6年。こんなに長く携わらせていただいた作品は初めてだったので、感慨深いですね。その間、いろいろな映画祭で上映もさせていただきましたが、こうして一般公開を迎えられるのはとてもうれしいです。それは岡部監督、出演者の皆さん、そのほかいろいろなスタッフ・関係者の方々のおかげだと、感謝の気持ちでいっぱいです。

――出演の経緯は?
 詳しいことは聞いていないんですけど、監督直々にお話をいただいて、顔合わせのつもりでお会いしたのが始まりでした。そこで台本をいただいて、恋人役の中村無何有さんと一緒にエチュードみたいなことをしたんです。その時はそれで終わり、後日、正式なオファーをいただきました。

――台本を読んだ時の感想は?
 最初にいただいた時にはもう、ほぼ完成稿の状態で、その時からタイトルは「歯まん」と決まっていたんです。監督から、「(タイトルは)変えない」という、この作品に対する強い意志を感じて、あぁこの作品をやりたいなと思いました。ただ、どういう雰囲気の作品――コメディ寄りになるのか、シリアスな展開になるのか――になるのかの想像はつかなかったんですけど、監督とお話していくうちに、真剣に純愛なラブストーリ―を描きたいんだなと感じて、出演を決めました。

――初めての主演で不安は?
 監督がこの作品に本当に真剣に向き合っていたので、不安を感じることはありませんでしたし、自分をさらけ出す意味はある! と思って撮影に挑みました。濡れ場とか暴力的なシーンもありましたけど、一度決めたらもう、そういったものには抵抗はありませんでしたので、できる限りやろうと頑張りました!

――演じられた瀬戸口遥香をどう受け止めましたか?
 良くも悪くも自分自身を持っていない無個性な子なのかなって感じました。おそらく、自分の意志みたいなものがはっきりしていたら、こういうストーリーにはなっていないと思うんです。自分の周りで起こることや、自分に起きることに、流されていきますから。

――遥香は、自身に起こった事象を経て、葛藤を経験し、変わっていきます。
 普通の女子高校生がまず、ありえないことを経験しますから、強烈ですよね。その流れの中で愛する人ができるなど、遥香の人生の中でも、かなり濃厚な時を過ごすことで、さきほどお話したような子が、自分なりの意志を持つようになっていったと思うんです。表現(お芝居)をどう変えたというより、中盤にある川に入るシーンが、そのターニングポイントになったのかなって感じています。それまでだったら、ただ見ているだけだったはずが、自分の意志で川に入って……。そういう行動を起こさせる意思が、徐々に芽生えていったのかなと思います。そして、ラストには、ある決断を下せるようになりました。

――本作では、そこに至るまでにいろいろな経験(?)をします。特にレイプシーンはコメディチックな要素もあって強く印象に残っています。
 そのシーンは、本番が始まる前に八百屋役の宇野(祥平)さんに「遠慮せずに、ガチでお願いします」とお話したら、「分かりました」と言ってくださったんです。そうしたら、ホントに遠慮がなくて(笑)。撮影が終わったら本当に(宇野さんが)怖く感じられてしまって……。お疲れ様、と挨拶されたんですけど、宇野さんの顔が直視できなくて。先輩に失礼なことをしたと未だに反省しているんですけど、その後も宇野さんが出演されている番組(ドラマなど)を拝見すると、当時の思い出が蘇ってきて……。

――みどり役の水井さんもいい味というか、物語を展開させる重要な役回りでした。
 そうですね。遥香が純愛だとすると、その対極にいるのがみどりですから(笑)。もう、あの展開にはびっくりですよね。

――でも、みどりとのトラブルのあとで見せる遥香の毅然(?)とした態度には、女性の怖さを垣間見ました。
 自分がそこにいたらパニックになると思いますが、遥香はそれまでに異常な体験を豊富に経験していますし、ソレに対して感覚がマヒしていますから、遥香の狂気をより際立たせるシーンだと思っています。

――そうした経験を経て、ようやく純愛に目覚めます。
 最初の彼氏はある意味事故だし、八百屋は当然の報いでしょう。みどりはちょっと異質ですけど当然の展開ですよね。最後の裕介(小島祐輔)については、(そうなることが)分かった上で、裕介の望むことを、一番冷静に受け入れた瞬間なんじゃないかなと思います。初めて人の生き死にを、自分が“決める”のには、躊躇もあっただろうなとは感じていますけど。

――最後の展開の印象は?
 自分でもびっくりした部分はありますね。ただ、肉体的にも、精神的にも絶頂を感じることができたと思うし、いろんな感情が高まっている瞬間を監督が描きたかったんだろうなと思って、私も演じ切りました。

――撮影からだいぶ時間が経っていますが、細かい部分までよく覚えていますね。
 実質10日ぐらいの撮影でしたけど、自分でもびっくりするぐらい鮮明に覚えていますね。

――6年経ちました。今の前枝さんが演じたら、また違う遥香を見せられそうですか。
 もっとうまくできる、という自信はありませんね。当時は、お芝居のお仕事を始めたばかりで、何も分かっていない中、監督と向き合って挑んだものなので、今の自分が演じたら、自分が出すぎるかもしれないし、小手先の芝居をしちゃうかもしれません。その前に、女子高校生役は無理でしょ(笑)。

――最後に今後の抱負をお願いします。
 自分が、いいな、素敵だなと思える作品に、携わらせてもらえたらいいなと思います。これからも、愛や愛情に溢れた現場にいたいです。

画像2: 前枝野乃加/初主演作『歯まん』が6年を経て待望の一般公開。「当時の全力を傾けて挑んだ作品です。ぜひ、たくさんの方に観ていただきたいです」

映画『歯まん』
3月2日よりアップリンク渋谷にて公開 以後順次全国公開
<キャスト>
前枝野乃加(馬場野々香) 小島祐輔
水井真希 中村無何有 宇野祥平
<スタッフ>
監督:岡部哲也
配給:アルゴ・ピクチャーズ
配給協力:武蔵野エンタテインメント
レイティング:R18+
(C)2015「歯まん」

公式サイト http://www.haman.link/phone/index.html
前枝野乃加 https://twitter.com/m_nonoka72

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