クアルコムは10月3日、同社が提供しているaptX Audioの進化形となる「aptx Adaptive」の技術説明会を開催した。

 aptXはブルートゥースの伝送プロファイルとして、多くのスマートフォンに採用されている。もちろん受信側のイヤホンやヘッドホンでも採用器は多く、これまでにオリジナルの「aptX」や、ビットレートを上げて音質を改善した「aptX HD」、ゲーム用途を意識した低遅延の「aptX Low Latency」が発表されている。

 今回の説明会にはクアルコムのディレクター・プロダクトマネージャーのジョニー・マクリントック氏が来日し、新技術について紹介してくれた。マクリントック氏によると、今回のaptX Adaptiveは特に3つの点で進化を果たしているという。

画像: ▲クアルコムのディレクター・プロダクトマネージャーのジョニー・マクリントック氏

▲クアルコムのディレクター・プロダクトマネージャーのジョニー・マクリントック氏

 その第一が、「堅牢で、接続が切れない」こと。

 最近はスマホ側にアナログのヘッドホンジャックが搭載されなくなっており、イヤホン/ヘッドホンとのワイヤレス接続が必須になっている。しかしワイヤレスは環境によって通信状態が左右され、最悪の場合接続が切れてしまう可能性もある。

 そこでaptX Adaptiveでは、可変転送レート方式を採用し、無線条件が悪い場合は自動的にレートを下げ、よくなるとビットレートを上げることで接続性を担保する。また再生しているオーディオファイルのヘッダー情報を読んで、ダイナミックレンジやンプリングレートを識別、最適なビットレートに調整するといった工夫も盛り込まれている。

 「様々なコーデックがありますが、aptX Adaptiveのような堅牢性やフレキシビリティを備えているのは他にありません」とマクリントック氏は胸を張る。

 第二の特長は「CDやハイレゾ相当の音質」を実現した点だ。

 先述した通り、aptX Adaptiveでは可変ビットレート方式を採用している。具体的には280kps〜420kbpsの範囲で数値を変えており、280kbpsでは44.1kHz/16bitのCD相当、420kbpsでは48kHz/24bitのハイレゾ相当の音質が実現できているとのことだ。

 実際に、音響工学を教えているサルフォード大学の協力を得て、30人に200サンプルの音を聴き比べてもらったところ、420kbpsのaptX Adaptiveと96kHz/24bitのハイレゾ音源で差が認められなかったという。

画像: ▲aptX Adaptiveの3つの進化点

▲aptX Adaptiveの3つの進化点

 そして最後の特長が「低遅延の実現」となる。

 最近のイヤホン/ヘッドホン使用シーンは、音楽鑑賞以上にゲームや映像作品の鑑賞が増えている。そういったコンテンツでは、音の遅れがどれくらい少ない(低遅延)かがきわめて重要であり、その解消方法として同社でもaptX Low Latencyを提案してきた。

 「スマホは既にマルチメディアデバイスであり、実際アメリカでは3/4のユーザーがスマホでゲームをしています。その際にワイヤレスイヤホン/ヘッドホンを使うことは多く、特にアクションゲーム等では遅延が問題になるのです。

 今回のaptX Adaptiveでは、アルゴリズム上の遅れは2ミリ秒(48kHz信号の場合)を実現しました。アンドロイド機器のシステム全体を含めた実際の操作としては50〜80ミリ秒を達成しています」と、マクリントック氏はその改善成果について強くアピールしていた。ちなみに、これまでのaptX Low LatencyはaptX Adaptiveに統合されるとのことだ。

画像: ▲低遅延の改善についても細かく紹介された

▲低遅延の改善についても細かく紹介された

 最後にマクリントック氏にaptX AdaptiveがaptX HDからどれくらい音質面で改善されているかについて聞いてみたところ、「ビットレートという意味では、aptX HDの最大576kbps時のクォリティを、420kbpsで再現できています。その意味では圧縮アルゴリズムとしては改善されました。ただし試聴する音という意味では576kbpsのaptX HDと420kbpsのaptX Adaptiveは同じです」との返事だった。

 aptX Adaptiveをサポートしたチップの提供は既に始まっており、早ければ来年後半には対応機器が登場するだろうとのことだった。

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