1947年にウェスタン・エレクトリック(Western Electric = WE)が開発した20cmフルレンジユニット755A。20cm口径フルレンジユニットの原器的な存在であるWE755Aを最初期アルテックA7で採用された大型エンクロージュアH825にマウントして鳴らし、未知の表現を引き出す。ホームユース機も交えた9機種のヴィンテージ真空管パワーアンプを組み合わせた。

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⑥ マランツModel8B

画像: 1959年発売の#8の後継機として1961年発売。USAマランツ社唯一の管球式ステレオ・パワーアンプである。最後期型の個体のため、背面のプリアンプ等供給用8P電源出力を有していない。この出力端子はシリアル6500番台まで設置されていたが、同社の#1や#3にアダプトしていないため、おそらく他社製(アクロサウンド、ヒースキットなど)の電源非内蔵型ステレオプリアンプ供給用として設けたものであろう。#2、#5、#9にはなく、#8、#8Bのみが搭載していた出力端子であった。(杉井)

1959年発売の#8の後継機として1961年発売。USAマランツ社唯一の管球式ステレオ・パワーアンプである。最後期型の個体のため、背面のプリアンプ等供給用8P電源出力を有していない。この出力端子はシリアル6500番台まで設置されていたが、同社の#1や#3にアダプトしていないため、おそらく他社製(アクロサウンド、ヒースキットなど)の電源非内蔵型ステレオプリアンプ供給用として設けたものであろう。#2、#5、#9にはなく、#8、#8Bのみが搭載していた出力端子であった。(杉井)

高音部の輝きがWE755Aを補強。マランツ絶頂期のリッチな音に聴き惚れる

土井 続いてはEL34プッシュプル接続のステレオパワーアンプ、マランツModel8Bです。本誌でもこれまでに何度も試聴し、おおむねよい評価を得てきた名機ですね。今回はEL34、6L6、807とひと通り聴いてきた後の6機種目に持ってきました。

新 ここまでの組合せでベストだと感じました。マランツModel8Bの高音部には独特の輝きがあり、それがWE755Aに足りない部分を補いつつ、よくマッチしていると思うんです。まるで3ウェイのシステムを聴いているような感触がありました。見事な再生でした。

杉井 オーディオ用途のパワーアンプとしては最高の部類に入るアンプだと常々感じていますが、やはり素晴らしい音を聴くことができました。ただ、これはWE755Aの音というよりはマランツModel8Bの音だと思います。マランツの絶頂期のウォームでファット、なおかつリッチな音。

 もちろんWE755Aにも、こまやかな造形をしっかり描き出されて、モニタースピーカーとしての能力が備わっているのだなと改めて感じました。それでいて業務用の音ではない。趣味のオーディオとして楽しむのに最高の音が鳴っていたのではないでしょうか。

土井 確かに、これは業務用ではなく家庭用の音ですね。音作りが巧妙です。家庭で音楽を楽しむための組合せになっていると思います。WE755Aは「家庭用の音」としてちょうどいいサイズ感で鳴っていました。粗探しをすればいろいろ足りない部分もあるかもしれない。しかし一聴して「いい音だな」「楽しい音だな」と思える音です。

新 お二人がおっしゃる通りです。「御諏訪太鼓」を聴くと、WEではなくマランツの音がします。聴く前はWE755Aの色が支配すると思っていたのですが、実際には8Bの色が濃厚だった。この音源ではその驚きが大きかったですね。

 「モルゲン」は、構えることなく音楽を楽しませる鳴り方で、うっとり聴き惚れてしまいました。「ちあきなおみ」もここまででベストな再生です。音楽を聴くことで得られる満足感がとても大きい、贅沢な音でした。

杉井 「御諏訪太鼓」は、和の風味が少々薄れて洋風に感じられる部分がありました。低域が野太く、これまでとは毛色の違う鳴り方なので、好みは分かれるかもしれません。「モルゲン」はぴったりですね。音楽そのものの品のよさ、音色の美しさや輝かしさがよく再現されていました。リッチなオーディオ体験を得ることができる音です。

 「ちあきなおみ」も素晴らしいです。一流の楽器と演奏家を集めた最上級の演歌という印象でした。逆に考えると、WE755Aでなくてもこうした鳴り方は可能かもしれません。そのあたりが悩ましいところです。

土井 「御諏訪太鼓」は低域、太鼓のスケール感が豊かで大らかな再生でした。うまく説明できませんが、そつなく鳴らす業務用とは異なる、家庭用らしい鳴らし方です。「モルゲン」の音色も素晴らしいですね。ただ、この音源も業務用とまったく鳴り方が違う。うまい具合に付帯音が乗っているんですね。それがマランツらしさを醸している。

 「ちあきなおみ」はよすぎるといいますか、私の求めるちあきなおみの音を超えています(笑)。私が求めているのは、業務用の音で聴ける最高峰のちあきなおみなのかもしれない。そういう好みの違いはありますが、とにかく見事な再生でした。

⑦ IPC AM1027

画像: 「シンプレックス シアター システム」で活躍したIPC AM1027は1949年に登場したパワーアンプ。出力段は6L6をpp動作として出力20Wを得ている。「シンプレックス シアター システム」で採用されたスピーカーユニットはアルテック515ウーファーや288ドライバーであった。本機はアルテック1520T同様、本誌の試聴で登場回数が多いアンプである。(土井)

「シンプレックス シアター システム」で活躍したIPC AM1027は1949年に登場したパワーアンプ。出力段は6L6をpp動作として出力20Wを得ている。「シンプレックス シアター システム」で採用されたスピーカーユニットはアルテック515ウーファーや288ドライバーであった。本機はアルテック1520T同様、本誌の試聴で登場回数が多いアンプである。(土井)

色付けが少なく骨格のしっかりした音。業務機の力が素の音を感動的に聴かせる

土井 続いてのIPC AM1027も、本誌の取材で近年、高評価が続いている6L6プッシュプルのモノーラルアンプです。おそらく今回もいい音を聴けるだろうと思い、後半に持ってきました。

新 業務用らしく、色付けの少ないアンプです。WE755Aを鳴らしてもその傾向は同じで、音楽そのものにどんな音が入っているか、どんな演奏がされているかを明確に聴かせてくれます。先のマランツModel8Bは、家庭用ならではの色付けが魅力でしたが、こちらはその真逆。私はこういうアンプにもとても好感を持ちます。

杉井 そうですね。色付けが少なくストレートな音です。私にはむしろ「ストレートな音」という個性が感じられたといいますか、この色付けのなさが個性として鳴らされていたように感じられました。ストレートといっても押し出し感の強い音というわけではなく、さらっと聴かせるところも魅力です。加えて、わずかですが高域に独特のアクセントとなる清涼感のようなものがあると思います。マランツModel8Bが春から夏のイメージだとすると、こちらは晩秋のような落ち着き感があって、それが気持ちいいですね。

土井 マランツModel8Bといい意味で対照的な鳴り方だと思いました。骨格がしっかり再現される業務用ならではの魅力がよく出ていた。改めて業務用の素晴らしさを再確認できました。

新 「御諏訪太鼓」は、本格的な和の風味が初めて楽しめました。それは、とても素直に中高域が鳴っているからだと思います。これまでのアンプでは聴き取れなかった響きがしっかり聴き取れたんです。「ちあきなおみ」も同様です。日本人による、日本人の琴線に触れる歌が、ここでは再生されていました。これまで素晴らしいアンプがいくつかありましたが、このアンプは特別です。何も色付けしない、素の音をこれほどまでに感動的に聴かせてくれるアンプはそうありません。凄い再生でした。

杉井 「御諏訪太鼓」を聴き進めていくうち、目の前にお祭りの映像がふと浮かびました。新さんのおっしゃる通り、日本人の琴線に触れる音です。お祭りのワクワクする感じと、夏の終わりの寂しさを両方感じさせてくれる鳴り方でした。

 「モルゲン」は、アグレッシブではないのですが控えめでもない。先のマランツModel8Bとはまるで違う情景を見せてくれました。そして「ちあきなおみ」は、やはり郷愁を誘う鳴り方でしたね。ヴォーカルの表情が繊細で、ストリングスには寂しさだけでなく清涼感もある。狙って作れる音のアンプではないので、こういう音が聴きたければこのアンプを手に入れるしかない。そんな魅力を持つアンプだと思います。

土井 「御諏訪太鼓」を聴くと、ひじょうに見晴らしがよく、太鼓にもメリハリがあります。本誌60号で、WE15Bホーン・システムを使ってトーキー黎明期の映画を再生する取材を行なったことがあります。新さんと堀切日出晴さん、太秦の映画監督である上杉尚祺さん、そして私の4名で観たのですが、そのときの音を思い浮かべました。

 「モルゲン」は時間の流れがひじょうに緩やかで、アルコも美しいですね。演奏者の音色そのものを聴かせてくれている印象でした。「ちあきなおみ」はバランス良好でいうことなしです。特にストリングスの哀愁や切なさは素晴らしいですね。マランツModel8Bが「おふくろの味」だとしたら、こちらは「プロの料理人の味」という感じでしょうか(笑)。どちらも素晴らしい音であることは間違いありません。

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