スウェーデン・ルンダール製出力トランス搭載のステレオ機
三浦孝仁
協同電子エンジニアリングが展開するフェーズメーションは、真空管オーディオの分野で確固たるポジションを築いている。2023年には究極的なモノーラルパワーアンプMA5000をリリース。出力段はプスヴァン(PSVANE)製WE211直熱3極管のパラレルシングル回路で、それを同WE300Bで駆動する超弩級機だ。海外市場においても、「無帰還+シングル増幅」に徹するフェーズメーションの姿勢は高く評価されている。
ここで紹介するSA1500は、300B直熱3極管シングルのステレオ機。2024年5月に開催された独ミュンヘンのオーディオショウで発表されて以来、大いに注目を集めて登場した。30デシベルのゲインがあるステレオパワーアンプに入力切替えとアッテネーターが加わり、インテグレーテッドアンプとして位置づけられる。フェーズメーションでは初となる、300Bのステレオアンプだ。
もちろん「無帰還+シングル増幅」を踏襲しているのは言うまでもなく、SA1500も6SN7双3極管を2段増幅にしてPSVANE製WE300B直熱3極管を駆動するという全段3極管構成である。出力管300Bは調整いらずの自己バイアス動作なので、真空管オーディオの初心者にも優しいアンプといえよう。なお、300Bのフィラメントは直流点火方式である。
音質的な要となるのは、定評あるPSVANE製WE300Bと、スウェーデンのルンダール・トランスフォーマーズ製の出力トランスの採用であろう。出力トランスは、シングル増幅用に最適な仕様をオーダーしたという。上位機のMA5000やMA2000、MA1500では出力管を駆動するために段間(インターステージ)トランスが使われているが、このSA1500では使われておらず、6SN7双3極管の片側がカップリングコンデンサーを介して、出力管のPSVANE製WE300Bをドライブしている。

6SN7による2段増幅で出力管300B(PSVANE WE300B)を励振するシンプルな回路構成。純A級・無帰還シングル動作で出力9W+9Wを得る。フロントパネルにDIRECTおよび入力3系統の切替えとボリュウムのノブを装備する。

リアビュー。左に4Ω~8Ω対応のスピーカー出力端子1系統、右に3系統のRCAアンバランス入力端子を装備。入力1はボリュウムをパスする「ダイレクトモード」を兼用しており、ステレオパワーアンプとしても使用できる。パッシブプリアンプCM1500との組合せで、さらに高純度な音楽再生を目指せるという。
電源トランスはフローティング設置。シールド板で漏洩磁束対策も徹底する
コンパクトな筐体だが、充実した電源回路も注目すべき。大型の電源トランスには各チャンネル独立でチョークコイルが与えられており、高圧電源にはローム製の高速スイッチングダイオードを使用。MA5000の開発で得られたノウハウとして、各トランスとチョークコイルには漏洩磁束をコントロールするシールドが与えられた。異種素材を組み合わせた脚部や振動を遮断する電源トランスのフローティング設置など、総合的な音質対策も万全である。
SA1500のライン入力は3系統。そのうちのライン1は、アッテネーターをバイパスしたパワーアンプ直結入力である。フェーズメーションはバランス型トランスフォーマーによるパッシブプリアンプCM1500を展開する。それとの組合せを想定したのが、パワーアンプ直結入力だ。
ここではアッテネーター経由のインテグレーテッドアンプとして聴いている。DELAのN1ミュージックサーバーとのUSB接続にしたアキュフェーズDC1000を音源の送り出しに、試聴室リファレンスのB&W801D4シグネチュアを鳴らしてみた。
トランスカバーを外した状態。左の出力トランスはスウェーデン・ルンダール製を採用。中央に2基のチョークコイルを配置し、左右ch独立の電源回路を構成する。右端が電源トランスで、モノーラルパワーアンプMA5000から採用された防振ゴムを用いるフローティング構造を採用。この免振構造により、電源トランスの振動がシャーシを経由し、他のパーツに与える影響を可能な限り抑えている。また、珪素鋼板素材のシールド板を各トランスとチョークコイルの周囲に取り付けることで、漏洩磁束の制御が図られている。
直熱3極管らしい仄かな煌びやかさに加えて、基音のしっかりした音
イーグルスのライヴ音源「ホテル・カリフォルニア」から試聴を始めたが、聴きどころの低音域もじゅうぶんな量感が得られており、腰高な音調バランスに陥っていないことに感心した。ギターの音色と聴衆の拍手や口笛などの音数の多さと表現の細やかさも優れている。直熱3極管らしい仄かな煌びやかさも持ち合わせているけれども、基音のしっかりした音なのである。定格は9W+9Wだが、それよりもパワー感を滲ませている。
ネマニャ・ラドゥロヴィチがヴァイオリンを弾く「マケドニアの娘」は、微細な音色の描写も丁寧で広がりのある音場空間も印象的だ。シモン・ラヒターのサキソフォンが深々と響く「ピープル・タイム」では、優れたハイレゾ収録らしい静寂な背景を漂わせながら、写実的な音が構築されていく。ダイレクト感のある色濃い音は簡潔な回路がもたらしていると思うが、ドライブ段の6SN7が音に余裕を与えているような気がする。
フェーズメーションでは、前面がガラスのカバーを装着した状態で設計者が意図した本来の音が得られると語る。ここでの試聴も、そのようにして聴いている。
天面の放熱孔には、MA5000の意匠を受け継いだ和柄(三崩し)のモチーフが採り入れられている。保護カバーの裏面には珪素鋼板が貼られており音質面での効果があるという。そのため、本機は保護カバーを装着した状態での使用が推奨されている。

300B Single Integrated Amplifier
フェーズメーション SA1500
¥1,700,000
●出力:9W+9W(4Ω)
●入力端子:LINE3系統(RCAアンバランス)
●入力インピーダンス:47kΩ
●スピーカー出力端子:4Ω~8Ω
●使用真空管:6SN7(JJ Electronic)×2、WE300B(PSVANE)×2
●寸法/重量:W430×H240×D380mm/18kg
●問合せ先:協同電子エンジニアリング(株)フェーズメーション事業部☎045(710)0975
『管球王国』114号(2024 AUTUMN)より




