電源回路の整流管は、真空管アンプの音を決める上で大きな役割を果たす。新旧の整流管5U4GB/5U4Gを、かつて電蓄に内蔵されていたヴィンテージ6V6プッシュプル・パワーアンプ米国マグナボックス185AAを使って差し替え試聴。整流管1本の構成のステレオアンプでストレートに表れる音質の違いを探り、整流管差し替えの留意点も詳細解説する。

PART.1PART.3PART.4はこちらから。なお、PART.3、PART.4の記事は、それぞれ1月12日(PART.3)、1月14日(PART.4)の12時に公開します。

試聴編

B電圧も確認しながら音を聴き比べ。6V6ppステレオ・パワーアンプでアルテック604Eを鳴らす

──比較試聴に入る前に、RCA製ヴィンテージ管の5U4GBで音を確認していただきました。

岡田 マグナボックス185AAは、時代を考えると当初はRCA製5U4GBが使われていた可能性が高いと思います。ベンチマークとしての意味合いで試聴しました。

杉井 今回、前段管はRCA製のグレープレート12AX7Aを挿しています。6V6はマグナボックスとプリントされたシルバニア製の純正品です。

 マグナボックス185AAの出力トランスがフェンダーのギターアンプ用に換装されているということですが、アルテック604E+銀箱でしっかりとした音が聴けました。左右バランスや音量感も問題ありません。この音を指標にして、この後の整流管を聴き比べます。

RCA 5U4GB

現行管

1 │ エレクトロ・ハーモニックス  5U4GBEH

低域から高域までのバランスがよく、残響感ある音で賑やかに聴かせる

エレクトロ・ハーモニックス 5U4GBEH
●TV7試験値(実測値) 63/62 ●B電圧(実測値) 297V
¥3,080
テクソル

現在も輸出禁止措置が続くロシアのエレクトロ・ハーモニックス製。基本構造は米国系。プレートは薄い灰色のアルミクラッド鉄製で、フィラメントは平面リボン型で上部テンション機構はなく、自立式だが下部溶接は垂直ではない。下部マイカは二重となっており、NCの1ピンからのステムリードを鳩目止めして補強している。ベースはRCA系よりも口径が小さいが、バルブ高はやや高い。(岡田)

──現行の整流管から聴き始めます。TV7での試験値は63/62で、棄却値40ですから、かなり元気な球です。B電圧は297Vが得られています。

岡田 「ペギー・リー」はSP盤音源で、そのニュアンスがいかに再生できるかがポイントですが、声の質やベニー・グッドマンのクラリネットなど、中域の基本的なところはしっかりと出ていました。低音がしっかりと入った「ブレイキー」は、ベースとドラムの質感の差や、アタックなどは十分に満足できるレベルです。オーケストラの「展覧会の絵」もダイナミックレンジの大きさが十分に得られたと思います。ただ、もう少しキレがあってもいいかなとも感じましたね。現行管で、新しいアンプを聴くような感じも出ましたから、この球の特徴が音によく表れたのかなと思います。実は整流管はすごく設計が難しいんですが、現行管でまずはしっかりとした音が聴けました。

 リファレンスとして聴いたRCAからは音色が変わったかなというのが私の印象です。艶やかさと伸びがやや後退するように感じました。「ペギー・リー」ではベニー・グッドマンのクラリネット・ソロとペギー・リーの声ともさらに伸びやかに出てもいいし、ダイナミックな演奏の「ブレイキー」も同様です。「展覧会の絵」は、フィリップスとリッカルド・ムーティ、フィラデルフィア管という組合せでは初めての録音です。プロデューサーがフィリップスのトップだったフォルカー・シュトラウスで、彼らしい音色、オーケストラの音色、スケールの大きさがもう少し出てもいいと思います。これは個人的な感想ですが、RCAに比べると何かひとつ物足りないところがあったように思えますね。

杉井 今回の試聴機器はすべてヴィンテージ機ということになります。マグナボックスは59年の製品、アルテック604E+銀箱も60年代ですが、そういう時代感をまったく感じさせない音です。全体的に整流管の音の支配力がとても大きいような気がします。エレクトロ・ハーモニックス製で、基本的はギターアンプに使われることを想定して、音作りされた整流管ではないかと思います。楽器ではコンプレッサーを使ったり、音にエフェクトをかけたりすることが多いわけですが、そういう機器が入った音の傾向をイメージしました。

 いずれのソースでも、最初に楽音が入って、そこからワンテンポ遅れたところに最強音があって、さらにロングサスティーンが効いているような感じです。低域から高域にかけてバランスは自然で、同時に、音としてオーディオ用というよりも楽器に向くような個性かなと思えました。音全体が賑やかに感じられます。「ブレイキー」のタムのアタック音や「展覧会の絵」のオーケストラ全体の音では、残響感を強めに感じるところがありますね。出力管や前段管の聴き比べで、同じロシア製のソヴテック球にも同様の音調を感じたのも思い出しました。

画像3: 【実験工房】ヴィンテージ6V6ppアンプによる整流管5U4G/5U4GB 新旧12銘柄の聴き比べ Part.2
画像4: 【実験工房】ヴィンテージ6V6ppアンプによる整流管5U4G/5U4GB 新旧12銘柄の聴き比べ Part.2
画像5: 【実験工房】ヴィンテージ6V6ppアンプによる整流管5U4G/5U4GB 新旧12銘柄の聴き比べ Part.2

試聴ディスク
『ベニー・グッドマン&ペギー・リー』
CD-R(グッディーズ 78CDR-3538)
よりTr.1「オン・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」
『オール・アバウト・ジャズ・サウンド 菅野沖彦 選曲・構成』
CD(ステレオサウンド SSPH-3004)
よりTr.8 ジェームス・ウィリアムス feat.レイ・ブラウン&アート・ブレイキー「ジェイズ・ジャム・ソング」
『Stereo Sound Reference Record Vol.1 菅野沖彦 選曲・構成』
CD(ステレオサウンド SSPH-3001)
よりTr.21 リッカルド・ムーティ指揮フィラデルフィア管弦楽団
「ムソルグスキー:展覧会の絵(ラヴェル編)よりバーバ・ヤーガの小屋」

画像6: 【実験工房】ヴィンテージ6V6ppアンプによる整流管5U4G/5U4GB 新旧12銘柄の聴き比べ Part.2
画像7: 【実験工房】ヴィンテージ6V6ppアンプによる整流管5U4G/5U4GB 新旧12銘柄の聴き比べ Part.2
画像8: 【実験工房】ヴィンテージ6V6ppアンプによる整流管5U4G/5U4GB 新旧12銘柄の聴き比べ Part.2

試聴に使用した機器
[ スピーカーシステム ]
アルテック604E+612A
[ プリアンプ ]
アルテック1567A
[ CDプレーヤー ]
スチューダーA730

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