この記事は、創刊60周年記念号 季刊『ステレオサウンド』第240号の巻頭企画「現代オーディオの到達点 いま聴きたい感動の音 60選+α」からの転載となります。7名のオーディオ評論家が選んだ、「自身が考える現代オーディオの到達点」を象徴する60機種の魅力をぜひ、ご覧ください。

VERTERE  SG1 PKG

針先が音溝だけで振動する状態を理想に設計。
キレキレの闊達なサウンドは爽快の極み

山本浩司

 2022年9月にロンドンにあるヴァルテレ社を訪問した。同社を主宰するトラジ・モグハダム氏にさまざまな話をうかがったが、彼の設計思想はきわめて明快だ。「回転軸を明確にしたうえで針先がグルーヴによってのみ振動する状態をつくること。それが設計のすべて」と言う。同社製プレーヤーを特徴づけるインナートップボードとアウタートップボードのセパレート構造や極細スピンドルとスピンドルキャップの採用も、すべてその思想に奉仕するものなのである。

 それから個人的に興味深かったのは、同社試聴室のレコードラックに馴染み深い1960~70年代のロックやソウルの名盤がずらりと並べられていたこと。彼が少年時代を過ごしたイランと寄宿生活を送っていた英国、そして遠く離れた日本で、同い年のぼくらは同じレコードを聴いて青春時代を過ごしたんだナと深い感慨を抱いたのだった。取材時にビートルズやマーヴィン・ゲイなどの名盤をハーフ・スピード・カッティングした貴重なアセテート盤を聴かせてもらったが、それはわが生涯のベスト・サウンドの一つに数えられるすばらしい音で、かけがえのない貴重な体験となった。

 本機SG1 PKGの音を自室で聴いたことがあるが、その静謐で切れ込みの鋭い音に両頬を叩かれたような衝撃を受けた。1970年代のファンク・チューンを聴いて驚かされたのは、その超絶的なグルーヴ、タイム感覚を驚くべきトランジェント感で聴かせてくれたことだった。「アナログってやっぱりあたたかい音がするよね」などとうっかり言いそうになるときがあるが、SG1 PKGのサウンドはその対極にある。持ち味はキレキレの闊達なサウンド、爽快極まりないのである。

 同じ設計思想で開発された弟機のMG1 PKG MK2も本機と共通する静謐で切れ込みの鋭い音を持ち味とする。合せてご注目いただきたい。トップエンド機RG1はSG1 PKG以上の凄い音がすると思いますが、プライスタグを見ると「ちょっと聴かせて」とは言いづらいです。

いま聴きたい感動の音60選+α <47>

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ヴァルテレ「SG1 PKG」
¥6,500,000(税抜) ※価格はMB仕様
●駆動方式:ベルトドライブ
●回転数:33・1/3、45rpm
●問合せ先:タクトシュトック 042(316)9517

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