PROSOUND SPECIAL
『MIL STUDIO』
理想的な4π音場を実現した62.2chイマーシブ・スタジオ
去る4月、都心の閑静な住宅街の中に誕生した『MIL STUDIO(ミル・スタジオ)』は、ROCK ON PRO/Rock oNの経営母体であり、音響/映像製品の輸入代理店としても知られる株式会社メディア・インテグレーションが開設したスタジオだ。このスタジオの最大の特徴と言えるのが、リスニング・ポイントを取り囲むように設置された62.2chのスピーカー・システムで、これによってすべての音がシームレスに繋がった“4π音場”を実現。従来のオーディオの枠を超えた、極めて自然な音響を体験できるまったく新しい実験空間、それが『MIL STUDIO』なのである。そこで本誌では、株式会社メディア・インテグレーションの代表取締役である前田達哉氏と、音響設計を担当した株式会社ソナの中原雅考氏に、このスタジオの全容について話を伺った。
PROSOUND CLOSE-UP
「Pro Tools 2022.4」が新しい製品ラインナップでバージョン・アップ
世界標準のDAWソフトウェア、「Avid Pro Tools」がバージョン・アップ。新しいバージョンとなる「Pro Tools 2022.4」がリリースされた。
「Pro Tools 2022.4」では、多くの新機能が追加されたのに加えて、ラインナップが刷新。このバージョンからは、クリエイター向けの「Pro Tools Artist」、旧Pro Toolsの後継となるスタンダードな「Pro Tools Studio」、「Pro Tools | Ultimate」を内包した最上位版の「Pro Tools Flex」という3種類のラインナップで展開されることになった。もちろん、現在有効なサブスクリプションあるいは永続版アップデート+サポート・プランを所有する「Pro Tools/Pro Tools Ultimate」ユーザーは、無償でアップデートすることが可能。ここではその新機能と、新しいラインナップについて紹介する。
PROSOUND LAB
顔の見える試聴会&座談会
同軸モニターシステム編
すでに開催10回を超え、前号でもお送りしたプロサウンド誌主催のイベント、「顔の見える試聴会&座談会」の第11回目を行なった。期間を詰めての開催はこれまでと比べ珍しいことだが、採りあげたいテーマに話題性を感じていたためである。また開催翌日に第12回目も敢行。つまり2日間連続で7モデルの試聴をしている。テスターも同じメンバーが両日ともに揃い、加えて開催会場も同じだったことから比較的高い検証精度が得られたのではないかと自負している。2日目の試聴記事は次号(8月号)になるが、今号と併せ読んでいただけると幸いだ。
第11回および第12回目で採りあげたのは「同軸型モニタースピーカー」で、前述したとおり7社が参加に手を上げてくれている。読者も知っての通り、フルレンジや同軸型ユニットは音像の焦点が定まっており、そのため聴取位置の違いによる音の変化が少ないという、特にモニター使用などでは有利な音響性能を持っている。しかしながら耐入力の低さやその構造の複雑さから、ライヴシーンでは一部のメーカーを除いて参入が難しいとされてきた。それがほんの数年前のこと。ところがメーカーの努力により、トランスデューサーとしての技術進化が加速度的に進歩。大きな入力信号にも耐えながら、高い性能を発揮できるスピーカーシステムを各社が続々と完成させた。そのどれにも独自の特徴があり、一度聴いて見たいと思う製品が揃った。
FLEXIBLE SOUND FIELD
暗闇ボクシングフィットネスの「b-monster」が展開する
「渋谷TOY VOXスタジオ」の音響システム
照明を落とした暗闇に鳴り響く大音量の音楽! 「b-monster」は、そんなクラブのような音環境で思い切り体を鍛える“暗闇ボクシングフィットネス”という新しい体験を提供。すでに国内では8つの店舗で展開中の同施設の中、「TOY VOX」という名称が与えられている渋谷スタジオは、3Dホログラム映像も採り入れた最新鋭の設備を誇る。「Martin Audio」スピーカーを中心とした音響面、DJのようにフロアを盛り上げる“パフォーマー”と呼ばれるインストラクターのワンオペを支えるネットワークシステムなど見どころも多い当施設。オープンから1年が経ったいま、音響・照明・映像のシステム設計と運営サポートに携わる方々に語っていただいた。
PROSOUND最前線
Thomas Lund氏に訊く「Goodbye Stereo」
Thomas Lund氏は、現在GenelecのSenior Scientist(シニア・サイエンティスト)であり、研究や国際標準化に活躍されています。2020年春にオンラインで開催されたAESウィーン・コンベンションで、Thomas Lund氏が講演された「Goodbye Stereo」というタイトルのワークショップにとても興味を持ち、オンラインで視聴しました。内容もとても興味深く、それ以来、Thomas Lund氏による同様なタイトルでの講演や記事に注目してきました。
2021年12月に発行されたVDT-Magazin(ドイツ・トーンマイスター協会誌)に、同じく「Goodbye Stereo」というタイトルで寄稿されたのを機に、この「Goodbye Stereo」について、あらためてThomas Lund氏にお話を伺いました。
STUDIO ENGINEERING
イマーシブオーディオ制作のすすめ
第4回 音空間を収録する技術を理解しよう
空間音響の表現の上で、音空間を収録する技術について理解しておくと、闇雲に試行錯誤をしなくて済むようになる。特に、3Dオーディオは、最近流行のイマーシブオーディオという言葉で一括りにされてしまうが、アプローチの異なる技術の集合体である。コンセプト毎に適切な方法を選ばないと、思うような結果が得られない。
さて、録音再生において、臨場感を高めるために必要なことは、録音した空間(現場)と同じ音を感じるようにすることであり、そのためには音源の音像定位が重要な要素となる。すなわち、音源の方向、音源の距離、音源の大きさ、などが正確に知覚できるように録音再生できることが必要になってくる。