設備音響の世界で、絶大な支持を集めている「JBL PROFESSIONAL」のスピーカー・システム、「Intellivox」。縦長のユニークな筐体デザインが印象的な「Intellivox」は、垂直方向の指向角をDSPで制御することで、空間全体に均一なサウンドを再生することができるコラム型パワード・スピーカーだ。「JBL PROFESSIONAL」独自のテクノロジー、“ビーム・シェイピング(DDS)技術”によって、様々な形状/広さの空間に対応する「Intellivox」は、国内外の多くの施設で採用されている。
大阪市北区中之島の「グランキューブ大阪(正式名称:大阪府立国際会議場)」も、「Intellivox」が導入されている施設の一つ。同会議場の最上階にある特別会議場は、国際会議や学術会議、企業の経営会議などで利用される最も格式の高い会議室だが、天井がドーム型でパンチング・メタル製のために残響が大きく、言葉が少々聴き取りにくいのが開館以来の課題だった。それが今年初めに導入された「Intellivox」によって見事に解消され、言葉の明瞭度が格段に向上したという。そこで本誌では同会議場にお邪魔し、「Intellivox」導入に至るまでの経緯と、導入後の使用感について関係者の方々に話を伺ってみることにした。
関西随一のMICE施設 『グランキューブ大阪』
「グランキューブ大阪」は、2000年4月に開館した関西随一のMICE施設だ。かの黒川紀章氏が設計を手がけたという地上13階・地下3階のビルの中に、大小合わせて20以上の会議室、コンサートにも対応するメインホール、無柱の広大なイベントホールを擁し、連日様々な会議/催事が行われている。業務用音響機器の展示会、『サウンドフェスタ』も毎年この「グランキューブ大阪」で行われているので、足を運んだことがあるという読者もきっと多いだろう。運営会社である株式会社大阪国際会議場の営業部長、辻川雅芳氏によれば、「グランキューブ大阪」が開館するまで市内には大規模な会議場が無く、在阪の官公庁・企業にとって待望の施設だったという。
「西日本最大の都市でありながら、人々が一堂に集まれる施設が無いのはいかがなものかという声が関西の財界人を中心に上がり、大阪国際貿易センターの跡地に建造されたのがこの「グランキューブ大阪」になります。開館以来、学術会議や企業のイベントなど、様々な用途でご利用いただいており、全館合わせると、年間約2,600件もの催事が行われています。これまでご利用いただいたお客様からは、館内の移動が非常に楽という評価をいただいていますね。こういう施設は横に広がっているところがほとんどですが、当館はビルですので上下に移動すればいい。また、大阪駅からほど近い中心部にありながら、喧騒が少ない点も当館の特徴と言えます。お客様からは、落ち着いて会議ができるという声を頂戴しております」(辻川氏)
そんな「グランキューブ大阪」の最も広い会議室が、最上階に設けられた特別会議室だ。開放感のあるドーム型天井が採用されたこの会議室は、主に国際会議や学術会議などで利用され、過去にはサミットG8財務大臣会合も行われたという。
「天井には大阪のお祭りをイメージした日本画が描かれており、利用していただいたお客様からは明るく、雰囲気が良いとのお声を頂戴しております。ただ、デザイン的には良いんですが、ドーム型の天井のために残響が大きく、言葉が少々聴き取りにいという問題を抱えていました。実際、お客様からもそういったご意見を度々頂戴していたんです」(辻川氏)
特別会議室には、12インチ/2ウェイのスピーカーが天井ドームの下部に室内を取り囲むように埋め込まれている。「グランキューブ大阪」の音響管理を手がける株式会社コムエンスの松村契氏によれば、天井の材質がパンチング・メタルのために、スピーカーから均等に音を出すと、上から音が降ってくるような響きになってしまうとのことだ。
「音を出す側からしても言葉の聴き取りにくさというのは凄く感じていたので、対処療法的にいろいろ試してみたんです。例えば、鳴らすスピーカーを前方のものだけにしてみたり、スクリーン脇にスタンド・スピーカーを置いてみたり……。しかし特定の場所では大丈夫になっても、別の場所ではもっと聴き取りにくくなってしまったりして、なかなか上手くいきませんでした」(松村氏)
Intellivoxによって言葉の明瞭度が劇的に改善
そして「グランキューブ大阪」では昨年春から、言葉の聴き取りにくさを改善するために様々な策を検討。その中で採用されたのが、松村氏が提案した「JBL PROFESSIONAL」のコラム型パワード・スピーカー、「Intellivox」の導入だった。
「最近はコンパクトなアレイ型スピーカーが各社から出ていますが、その中でも特に気になっていたのが「Intellivox」だったんです。この会議室と同じような問題を抱えていた「カテドラル関口教会」さんが導入して、言葉の明瞭度が格段に向上したという事例を知り(註:本誌2016年6月号に記事を掲載)、残響が多い空間で有効なスピーカーという認識がありました。ですのでスピーカーを入れ替えるのであれば、「Intellivox」しかないだろうとご提案させていただいたんです。去年の夏、実際にこの部屋でデモさせてもらったんですが、スピーカーを変えるだけでここまで言葉の明瞭度が上がるのかとビックリしました。そのときは音響測定ソフトも持ち込んだんですけど、今まで見たことがないくらい測定データも良かったんです。耳で聴いた印象と測定データが非常に高いレベルで一致していたので、これは凄いなと思いましたね」(松村氏)
「グランキューブ大阪」が導入した「Intellivox」は、長さ2,800mm/最長到達距離20~35mの「Ivx-DSX280」が2本。240インチのスクリーンの両脇に、特注の金具を使って取り付けられた。
「スクリーン脇に看板を吊るためのポールがあるので、取り付け位置は自ずと決まりました。スピーカーは壁の上部に引っ掛けるような感じで、下側を特注の金具で固定してあります。それと機材が目立ってはいけないということで、カラーリングも特注色で仕上げていただきました。色合わせを何度もやっていただいた甲斐があって、凄く自然に溶け込んでいますね。音量感も十分で、2本のスピーカーだけで部屋全体をカバーできています」(松村氏)
工事は昨年末行われ、今年頭から使い始めたという「グランキューブ大阪」の「Intellivox」。辻川氏によれば、特別会議室を何度も利用しているクライアントから、その音の変化に驚きの声が上がっているという。
「当館は定期的にご利用いただいているお客様も多いんですが、そういった方々は“一体どうしたんだ”と大変驚かれています。まるで肉声のように、言葉がダイレクトに聴こえると。また、室内の端の方でも言葉がしっかり聴き取れるようになりました。私自身、スピーカーだけでここまで言葉が聴き取りやすくなるのかと正直驚いています。本当に「Intellivox」を導入して良かったと思っています」(辻川氏)
取材協力:株式会社大阪国際会議場、株式会社コムエンス、ジャトー株式会社、ヒビノ株式会社 写真:河上良
写真左から株式会社大阪国際会議場 営業部 施設管理課長の住田吉宏氏、同社営業部長の辻川雅芳氏、「グランキューブ大阪」の音響管理を手がける株式会社コムエンスの松村契氏
JBL PROFESSIONAL Intellivox に関する問い合わせ:
ヒビノ株式会社 ヒビノプロオーディオセールスDiv.
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