世界中の業務の現場で、プロフェッショナルから高い評価を得ている「ローランド」のライブ・ミキシング・コンソール、「O・H・R・C・A M-5000/M-5000C(以下、M-5000)」。内部構成を自由に定義できる柔軟性の高さ、96kHz対応/72bitサミング・バスによる透明感のある音質、“タッチ&ターン”オペレーションによる優れた操作性などが評価され、ライブPA/設備音響/中継収録など、様々な現場/アプリケーションで人気を集めている。
徳島のPAカンパニー「モウブ」も「M-5000」を運用している会社の一つで、今年1月、同社の新しいフラッグシップ・コンソールとして導入。「Waves SoundGrid」サーバーを組み合わせ、ライブ・コンサートや各種イベントなどでフル活用している。そこで本誌では、徳島の「モウブ」にお邪魔し、数あるコンソールの中から「M-5000」を選定した理由、システム構成、その使用感について、話を伺ってみることにした。取材に応じてくださったのは、「モウブ」音響部 音響課長の中田茂宏氏、音響部 チーフ・エンジニアの多田敬久氏、音響部 エンジニアの玉垣梢氏の3氏である。

徳島の老舗PAカンパニー 株式会社モウブ

PS 「モウブ」さんは四国では老舗のPAカンパニーとのことですが、まずは会社の沿革からおしえていただけますか。

中田 弊社は、昭和51年7月に代表の山口(註:株式会社モウブ 代表取締役の山口武治氏)が徳島市に有限会社モウブとして創立し、その後、様々な仕事を手がけるようになりました。現在は音響だけでなく、イベント制作や会館の管理といった業務も行なっており、映像に関しても簡単な出力には対応できる体制になっています。在籍しているスタッフは14名で、そのうち外回りの音響を手がけているのが4名、会館の管理を担当しているのが5名、残りは制作と経理ですね。会館の管理は、「アスティとくしま(徳島県立産業観光交流センター)」や「あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)」といったホールにスタッフを常駐させています。あとは機材のレンタルも行なっています。

 

画像: 写真左から、「モウブ」音響部 音響課長の中田茂宏氏、音響部 エンジニアの玉垣梢氏、音響部 チーフ・エンジニアの多田敬久氏

写真左から、「モウブ」音響部 音響課長の中田茂宏氏、音響部 エンジニアの玉垣梢氏、音響部 チーフ・エンジニアの多田敬久氏

 

PS 四国には他にもPAカンパニーはありますが、同業他社と比較した「モウブ」さんの特色というと?

中田 制作部を持っていますので、行政関係の仕事を多く手がけているのは弊社の特徴なのではないかと思います。各種式典や育樹祭のようなイベントだったり……。音楽のコンサートよりもイベントの方が多いのですが、クラシック系の仕事をかなり手がけているのも弊社の特徴かもしれません。

多田 クラシックをPAするということ自体、珍しいと思うんですが、先日も徳島出身のある作曲家さんのコンサートを手がけました。あとはミュージカルの仕事もたまにあり、一時期はオペラのお手伝いもしていましたね。

中田 ミュージカルの仕事を手がけている関係で、ワイヤレスをけっこう持っているというのも他社との違いなのではないかと思います。現在は2ピースでA型を30波、ハンドヘルドを26波持っています。

 

画像: 「モウブ」が導入した「ローランド M-5000」のシステム

「モウブ」が導入した「ローランド M-5000」のシステム

 

PS 今年1 月に「ローランド」の「M-5000」を導入されたとのことですが、その経緯をおしえていただけますか。

多田 以前使っていたデジタル・コンソールがディスコンになり、そろそろ次を考えなければいけないねと、3~4年前から新しいコンソールを検討し始めたんです。それで「ローランド」さんにお願いし、四国で不定期にやっている音響屋の勉強会に「M-5000」を持って来ていただいて。実際に使ってみたら、96kHzだからか凄く音が良くて、それまで「V-Mixer」は使ったことがなかったんですが、操作性の面も問題なかった。他にも選択肢はあったんですが、「M-5000」がベストかなと思い、導入を決めました。

中田 音の良さもそうですが、ミュージカルの仕事もあるので、フェーダー数が多いところも気に入りました。24フェーダーのコンソールは他にもありましたが、「M-5000」は24本プラス4本の28フェーダーなので、これは凄く魅力的だなと。プラス4本のアサイナブル・フェーダーの操作性も分かりやすかったですし、弊社の使い方に一番合っているコンソールだなと思ったんです。

 

画像: システムの核となるミキシング・コンソール「M-5000」

システムの核となるミキシング・コンソール「M-5000」

 

PS 「モウブ」さんが導入された「M-5000」のシステム構成は?

中田 入出力は「Digital Snake S-2416」が2台で、上下に振り分けたかったのでステージ・ボックスが2台というのは必須でした。それと「M-5000」のオプション・スロットには、MADI拡張インターフェースの「XI-MADI」と、Waves SoundGrid拡張インターフェースの「XI-WSG」を装着しています。

多田 「M-5000」は基本96kHzで、インターナル・クロックで運用しています。

 

画像: ステージ・ボックスは、24ch入力/16ch出力の「Digital Snake S-2416」を2台導入

ステージ・ボックスは、24ch入力/16ch出力の「Digital Snake S-2416」を2台導入

画像: 「M-5000」のオプション・スロットには、MADI拡張インターフェースの「XI-MADI」と、Waves SoundGrid拡張インターフェースの「XI-WSG」を装着

「M-5000」のオプション・スロットには、MADI拡張インターフェースの「XI-MADI」と、Waves SoundGrid拡張インターフェースの「XI-WSG」を装着

 

PS MADI入出力はどのような用途で使用されるのですか?

中田 既存のデジタル・コンソールとのカスケード接続用ですね。弊社はデジタル接続はADATを標準にしているのですが、MADIだったらADATと容易にコンバートできる。カスケード接続用には一番シンプルなインターフェースなんです。

 

M-5000とSoundGridの組み合わせをフル活用

画像: 昨年末、「アスティとくしま」で開催されたイベント『TOKUSHIMA JAZZ』でも「M-5000」は使用された

昨年末、「アスティとくしま」で開催されたイベント『TOKUSHIMA JAZZ』でも「M-5000」は使用された

画像: M-5000とSoundGridの組み合わせをフル活用

 

PS 実際に現場で使用されて、「M-5000」の音質はいかがですか?

中田 音質は申し分ないですね。とても奥行きのあるサウンドという印象です。

多田 弊社の編集室では、かなり以前から96kHz対応のデジタル・コンソールを使用しているんですが、PAの現場で使うとまた印象が違いますね。高域の伸びもきれいなんですが、低域の量感がまったく違う。この前も「アスティとくしま」で使用して、スピーカーは変えていないのに、低域が豊かになって驚きました。

中田 低域の量感が増しても、全体の音がもやっとすることはなく、非常にクリアなサウンドなんです。エッジはしっかり立っているというか。

多田 「S-2416」のマイク・プリアンプも、クセの無い音質でとても気に入っています。

 

画像: ステージ袖にセッティングされた「S-2416」

ステージ袖にセッティングされた「S-2416」

 

PS 「M-5000」は、最大128chの範囲で内部構成を自由に設定できるのが大きな特徴になっていますが、現場で使用されて便利だなと感じることはありますか。

多田 かなり便利ですね。弊社では出力を2ミックスではなくマトリクスで出すことが多いんですが、「M-5000」では必要な数だけマトリクスを作ることができるんです。以前使用していたコンソールは、マトリクスが8つまでだったので、正直足りないことも多かった。しかし「M-5000」は最大128chの範囲でいくらでも増やすことができるので、この前担当したコンサートでもマトリクスを12作りました。バスの数も同じで、現場で突然ライン出しの数が増えても、出口さえあればすぐに対応できる。まだ128chのキャパシティを使い切った現場というのはないんですけど、本当に便利な機能だと思っています。

中田 それと本体内蔵の入出力が16chと充実しているのがいいですね。イベントではどうしても再生系が多くなるんですが、「M-5000」に替えてからは入力が足りないということはなくなりました。

多田 最近は「Ableton Live」でポン出しする現場も増えていますが、「M-5000」ではコンソール側の入力ですべて収まってしまいます。

 

画像: 現場にセッティングされた「M-5000」

現場にセッティングされた「M-5000」

 

PS 操作性に関してはいかがですか?

玉垣 凄く使いやすく、フェーダーが滑らかなところがとても気に入っています。フェーダーが滑らかでないと、フェード・アウトしたときに音がすっと消えてしまったりするんですが、「M-5000」のフェーダーは滑らかなので引っかかることがない。それとユーザー・レイヤーが3面あるのも便利ですね。「M-5000」を最初に使った現場は、エレクトーンの発表会だったんですが、一番上のレイヤーには7台のエレクトーンをアサインして、次のレイヤーにはドラムやマイクをアサインして。けっこう複雑なプログラムの発表会だったので、ユーザー・レイヤーの切り替えがとても重宝しました。

中田 あとはアサイナブル・フェーダーとアサイナブル・セクションも便利ですね。ずっと表に出ていてほしいボーカルとかをフェーダーにアサインし、BGMなどをエンコーダーに割り当てれば、フェーダーを潰さずに常に操作することができる。アサインできないパラメーターはほとんどないというのもいいですね。

多田 私はアサイナブル・セクションにはボーカルのリバーブ・タイムなどをアサインしています。パラメーター値が数値で見えるところも気に入っています。

中田 内蔵エフェクトに往年の「SRV-2000」や「SDE-3000」が用意されているのもいいですね。昔のままの音なので安心感があります。

PS 「Waves」のプラグイン・サーバー「SoundGrid」と「M-5000」の組み合わせはいかがですか。

中田 問題なく使用できています。弊社は「SoundGrid」を使い始めたのは古く、そもそもの導入のきっかけは、前のデジタル・コンソールで不足していたグラフィックEQを補うためだったんです。ちょうど「Waves」から「GEQ」(註:30バンド使用のグラフィックEQプラグイン)が発売になったタイミングで、「SoundGrid」を導入すれば、古いデジタル・コンソールを何年か延命できるのではないかと。それで「SoundGrid Server One」を2台導入して使い始めました。「SoundGrid」に対応していることも、「M-5000」を選定した理由の一つでしたね。

 

画像: Waves SoundGridサーバーの「Server One」。「モウブ」では2台運用している

Waves SoundGridサーバーの「Server One」。「モウブ」では2台運用している

 

多田 もはや「SoundGrid」は手放せません。「Q10」とか使い勝手が全然違いますし、「Dugan Automixer」もワイヤレスの数が多いミュージカルや学会などではとても便利。それに「SoundGrid」は、サーバーを通すだけで良い意味で“Wavesらしい音”になるんですよ。間違いなくサウンドが良い方向になる。

 

画像: 30バンド使用のグラフィックEQプラグイン「Waves GEQ」

30バンド使用のグラフィックEQプラグイン「Waves GEQ」

 

PS 「SoundGrid」ではどのようなプラグインを使用されていますか?

多田 やはり「GEQ」で、あのプラグインは“Classic”と“Modern”という2種類のモードを切り替えることができるのですが、位相がきれいに繋がる“Modern”モードは多用していますね。それとボーカルのピーキーな部分を抑えるために「C4」を使い、空間系は「TrueVerb」や「Renaissance Reverb」をよく使います。最初は「GEQ」が使えればいいと思っていたんですが、とりあえず「Gold」を導入して、その後はディスカウント・セールでどんどん増えていった感じですね(笑)。

中田 「SoundGrid Server One」のパワーも十分で、以前チェックしたときは「Dugan Automixer」で24chくらいはまったく問題なく動いていました。「SoundGrid」は今後、マルチトラック・レコーディングでも活躍するのではないかと思っています。

PS 総じて「M-5000」には満足されていますか。

中田 そうですね。ディスプレイの両脇のスペースも便利で、イベントのときは台本置きとして重宝しています。

多田 私は右側にはiPad、左側には「Smaart」の画面を置くことが多いですね。いずれはパーソナル・ミキサーの「M-48」も導入したいと考えています。

PS 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

取材協力:株式会社モウブ、ローランド株式会社

 

ローランド製品に関する問い合わせ:
ローランド株式会社
Tel:050-3101-2555(お客様相談センター)
https://proav.roland.com/jp/

 

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