わが家のオーディオルームのネットワーク環境を抜本的に改善する集中連載もすでに第3回。第1回のOPT ISO BOXによる光アイソレーションの導入と、DATA ISO BOXによる二重ルーター化。第2回でのOPT REF SWによるオーディオ用スイッチングハブの活用。と、これまでの連載の中で、ネットワーク環境の改善策についてはやり尽くした感がある。
とはいえ、これまでの改善方策はどれも明らかな効果があり、そのときの驚きと興奮を求めて、もっともっと他に試せるものはないか? と、探し回ってしまう。しかもOPT REF SWには、通常のRJ45ポートだけでなく、SFPポートも備えるので、それを試してみたい気持ちもあった。それらを含めて、いろいろ熟慮しつつ、編集部と相談した結果、今回は、SFP接続を活かすべく、トップウイングのOPT LAN BridgeとOPT USB Bridgeを試してみることになった。
ネットワークオーディオ機器の直前でSFP接続の光絶縁を実現
OPT LAN Bridgeは、SFPポートから送られてきたネットワーク信号をRJ45ポートに変換するアイテム。たとえば、スイッチングハブとネットワークプレーヤー(わがシステムではリンMAJIK DSが相当する)はRJ45ポートで接続することが多いが、OPT LAN Bridgeを活用すると、OPT REF SWからSFPポートでネットワーク信号を伝送、そこからRJ45ポートでネットワークプレーヤーに伝送できるようになる。つまり光アイソレーション(光による絶縁)をネットワークプレーヤー直近で再度行なえるわけだ。OPT REF SWが多数装備するSFPポートを活用できることもあり、非常に興味深い。
改善❶ SFP端子活用の光絶縁をプレーヤー直前で実現する


トップウイングのOPT LAN Bridge(¥44,000税込)は、SFPとRJ45という2つのネットワーク端子を変換するメディアコンバーター。SFPポートに電気/光変換モジュールと装着したうえで光ファイバーによるネットワーク接続を行なうことで電気ノイズを遮断する「光絶縁」という手法があるが、本機とSFPポート搭載のスイッチングハブ(たとえばトップウイング製のOPT REF SWなど)と組み合わせることで、一般的に普及しているネットワーク端子であるRJ45ポートを備えたオーディオ機器の直前で光絶縁が実現できる
OPT LAN BridgeによるSFPとLAN(RJ45)の相互変換では、光アイソレーションを理想的な形で機能させるための工夫が凝らされている。ひとつはSFPモジュールへの電源系統の強化。SFPモジュールは、レーザーを扱うため自身の発熱によってレーザー素子の電力消費量が上昇、しかも変動する。このため、正確な動作を実現するために電源系統を強化した。DC電源とSFPモジュールを直近に配置し、また複層基板を採用してSFPポートの電源供給専用の回路層を用意。電源インピーダンスの上昇を最小限に抑えている。
そして、SFP/RJ45ポート変換で重要になるパーツのクロックには、MEMSクロックを採用。一般的な水晶発振器では、外部からの振動によりクロックのドリフト(変動)が発生し、わずかな通信のドロップや速度の低下が発生する可能性があるが、MEMSクロックは構造的に外部振動による影響を受けづらく、音質的にも微細な音の表現に効果があるとのこと。こうしたオーディオ用途のための厳重な対策を施し、音質的にも配慮した光アイソレーションを実現している。
わが架空劇場では、OPT REF SWとネットワークプレーヤーのMAJIK DSとは比較的近い位置にセットしているため、SFP接続のためのケーブル(今回はトップウイング製Silent Fidelity SFP)は、1mほどの短い仕様を手配し、OPT LAN Bridgeを介して、ネットワークプレーヤーに接続した。取材ではケーブルを繋ぐだけで、特に何も設定を行なうことなく、ネットワーク接続が問題なく確立できた。MAJIK DS以降のオーディオ機器との接続はこれまで通りで、デジタル同軸出力をフィーオのD/AコンバーターK9AKMに接続。そのXLR出力をマランツのコントロールAVセンターAV 10の2ch XLR入力へ接続している。スピーカーはフロントL/R(BWV Home/Studio H-2)と合計4台のサブウーファーを使った2.1ch構成だ。

鳥居さんは2008年にリリースされたリンのMAJIK DSというネットワークプレーヤーを愛用、そこからデジタル同軸出力でフィーオK9AKMに繋いでいる。MAJIK DSの直前で光絶縁を行ない、徹底的なノイズ除去を実現するアイテムがOPT LAN Bridge(写真左)だ
わずかではあるが、音楽的には大きな差を感じる、確かな変化
ユジャ・ワン独奏によるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聴くと、冒頭の鐘を模したピアノソロのタッチや音の余韻が非常に生々しく響く。次第に力強くなっていくタッチの変化、強く鍵盤を叩いた時の残響が明瞭だ。プレーヤーとはSFP直結というわけではないので、架空劇場での再生系では、2回目の光アイソレーションとなるためか、歴然とした違いがあったわけではない。しかし、ユジャ・ワンのタッチの変化のように、わずかではあるが、音楽的には大きな差を感じられたのだ。冒頭独奏の後のオーケストラの演奏が加わるが、そこでもホールの広さを感じさせる空間表現がさらに豊かになった。しかも各楽器の音色の粒立ちが良くなる。音数が増えるというよりも、オーケストラのきめ細かさが増したような、より純度の高い演奏になったと実感した。うん、SFP接続も手応えは十分だ。SFPポートを備え、SFPケーブルの直結接続に対応したネットワークプレーヤーもいずれ試してみたいと思う。
SFP/USBメディアコンバーターで光絶縁の恩恵をパソコンで獲得
続いては、OPT USB Bridge。これもSFPポートからのネットワーク信号を変換するものだが、USB Type B端子へと変換することが違い。おや、ネットワーク信号をUSBに変換? 一聴すると、意外に感じがちだが、今や薄型のノートパソコンなどでは、LAN(RJ45)端子はなく、ネットワーク接続はWi-Fiがメインであり、有線接続ならばUSB端子経由で行なうことが一般化しつつある。逆にいえば、こうしたLAN端子のないノートパソコンで有線によるネットワーク接続を行なうためには、なんらかのメディアコンバーターが必要だ。OPT USB Bridgeは、オーディオ再生を意識した設計が施されたメディアコンバーターであり、OPT LAN Bridgeと同様にSFPモジュールの電源系統の強化などの工夫が施されている。電源はUSB供給も可能なほか、DC12Vの外部電源にも対応した設計。クロックは外部振動による影響を受けにくいMEMSクロックとしている。
改善❷ PCオーディオ環境での光絶縁をUSB接続で実現する

パソコンや一部のミュージックサーバーなどをターゲットに光絶縁を効果的に実現するアイテムとして、トップウイングはSFP/USB変換を実現したメディアコンバーターOPT USB Bridgeを市販している(¥44,000税込)。本アイテムを使うことで、SFP接続による光絶縁の信号をUSB接続機器に直結できる仕組みだ。パソコンのネットワーク接続をUSBケーブルで行なう形になるが、最新のMacやWindows OS搭載パソコンでは、ドライバーなどの追加インストールは特に必要なく簡単に接続できるようだ
今回のテストではパソコンはWindows OS機とMacOS機(Mac mini)の両方で試した。どちらも最初は専用のドライバーのインストールなど、面倒な準備や設定が必要かと思ったが、OPT USB BridgeからのUSBケーブルを接続すると、なんの準備や設定も不要で、USB経由のネットワーク接続が確立! 時代は進んでいるんだなぁと、己の不勉強を反省。トップウイングのサイトには、動作確認機種も公開されている。有線接続にこだわりたい人にはありがたいアイテムと言えるだろう。


今回、SFP接続に用いたのはトップウイング製Silent Fidelity SFPというSFPケーブル(¥44,000税込、写真左)。SFPモジュール2個と3mの光ケーブルをセットにした製品で、用途にあわせて、1mから20mまでの光ファイバーケーブルも別売りされている。鳥居さんがOPT LAN BridgeとMAJIK DSを近接して配置しているため、今回の取材では1m品の光ファイバーケーブルを用いている(写真右)
Windows、Macともに効果大。オーディオ機器と並ぶ音質を果たす
Windows機、Mac miniともに、Qobuzアプリを使って、USBケーブル経由でフィーオK9AKMを使って再生してみた(K9AKM以降はリンMAJIK DSと同様の機器を使用)が、それまでの有線接続よりも確かに音質的に優位だと感じた。パソコン直近まではSFPポート接続している点でもノイズの影響が減っているなど優位性は確かだろう。
さきほどと同じく、ユジャ・ワンのラフマニノフ作曲のピアノ協奏曲第2番を聴いた。これまでのネットワーク接続と比べると、ピアノのタッチや残響、各楽器の音色の質感がより豊かになったと感じる。このほか、ステレオ空間の広がりや演奏場所の広さがよく再現出来るようになったとも感じた。
ポップス曲では、よく聴いている米津玄師と宇多田ヒカルによる「JANE DOE」を聴いたが、こちらもそれぞれの歌声の質感がよく出て、切ない想いを秘めた心情がよく伝わる。ネットワークプレーヤーMAJIK DSでの再生とどちらが優れているかというと、正直なところ、大きな差があるわけではない。
しかし、パソコンを使った再生の場合、再生アプリにも様々な種類があるし、音質改善のテクニックもあると考えると、伸び代はまだまだあるし、いろいろと試せることが多そうだ。静音パソコンやオーディオ専用パソコンの可能性もさらに広がりそうな期待もある。
そして、自宅のオーディオ機器の環境では使い道がなかったSFPポートを有効利用できるということが思った以上に役に立つと実感した。たとえば、OP REF SWのRJ45ポートは5つで、パソコンのほか、薄型テレビ、アップデート時に接続の必要がある機器などは、以前に使っていた8ポートハブを用いて必要に応じてそれらを繋いでいた。OPT LAN Bridge、OPT USB Bridgeのおかげで、オーディオ的なクォリティ向上のみならず、RJ45ポートの空きが2つ出来たので、LANケーブルの繋ぎ替えや8ポートハブの増設などをする手間が減ったのはありがたい。SFPポートを備えたネットワークプレーヤーの導入も今後視野に入るし、それのみならず、いろいろな使い方ができそうだ。
オーディオルームのみに限定したとはいえ、各種のノイズ対策を施したことで、わが家の環境はかなり整備された実感がある。そう、もう以前の環境には戻れない。オーディオのためのネットワーク環境の整備は、誰にとっても良い音のための喫緊の課題なのである。
鳥居邸ネットワークシステム環境(2026年8月取材後)

>本記事の掲載は『HiVi 2026年秋号』

