ZMFのヘッドホンはこれまで何度か紹介しているが、いずれのモデルもハウジングの造形が美しいことが魅力だ。もちろん、見た目だけでなく、内部の音響構造にも工夫が凝らされた製品となっている。新しく登場したこのTessidera(テシデラ)も同様。ZMFのフラッグシップモデルであるCaldera(カルデラ)と並び立つモデルだという。
ZMF独自の様々な技術を満載した平面磁界型の最新ヘッドホン
本機はいわゆる平面磁界型ヘッドホンで、搭載している振動板は、Calderaの振動板よりもさらに薄い1μm(ミクロン)厚の振動板を採用。主要な技術としては、台形のネオジム磁石を使用し、振動板への均一な磁力と振動板の空気流をコントロールする「CAMS(Caldera Asymmetrical Magnet Structure)」。ドライバー背面の圧力と空気流を制御する「ADS(Atrium Damping System)」、蜂の巣のような6角形構造で、定在波を抑制しながら高域特性を滑らかに整える「ZAM(ZMF Acoustic Matrix)」、新設計のウッドレゾネーター「SRS(Soundboard Resonator System)」、そして、独自のセミベンデッド構造と非対称角度設計で立体的な音場再現を実現するカルデラ・パッド・システムの5つだ。これらZMFの持つ独自技術を統合した新しい設計思想で生まれたという。

Headphone
ZMF
Tessidera
¥528,000 税込
●型式 : 開放型ヘッドホン
●使用ドライバー : 平面磁界型ドライバー
●出力音圧レベル : 92dB/mW以上
●インピーダンス : 35Ω
●質量 : 575g±30g
イヤーパッドには、ラムスキンのカルデラ・パッドのほか、音の印象が異なるカルデラ・スエードなどのいくつかからパッドを選ぶことができ、合計2種が付属する。接続ケーブルはOFC導体ケーブルを同梱。インピーダンスは35Ω、感度は92dB/mW以上と多くのヘッドホンアンプと組み合わせやすい仕様となっている。
ここで紹介するTessideraは、音の点でもCalderaと好対照となっている。Calderaは平面磁界型とは思えないほどエネルギッシュで迫力のあるサウンドで驚かせてくれたが、それに比べると、Tessideraはよりスムーズで落ち着いた印象になっている。

Tessideraの振動板はいわゆる平面磁界型。振動板厚が1μmと超薄型で、既発のCaldera搭載の2μm厚振動板から半分の厚みとなり、より繊細な表現が期待できる
ニュートラルでありながら存在感たっぷりの音が楽しめる
取材は自宅試聴室で行なった。ネットワークプレーヤーはリンのMAJIK DSで、その同軸デジタル出力をフィーオのD/AコンバーターK9AKMに送り、ヘッドホンアンプのベンチマークHPA4にバランス接続。ヘッドホンとは4.4mmバランス出力ケーブルと接続して聴いている。

試聴は鳥居さん宅で実施した。ヘッドホンアンプは、ベンチマークHPA4を用いている。再生ソースは主に音楽ストリーミングサービスQobuzの音源を使用し、リンのMAJIK DSを使用。写真はiPhoneで楽曲を選択しているところ
いつものウラジーミル・フェドセーエフ指揮モスクワ放送響による「チャイコフスキー:交響曲第6番<悲愴>」第3楽章では、空間が広く、音色はニュートラルだが、ZMFらしい厚みのある音を楽しめた。平面磁界型らしい広いステレオ感や目の前に展開する奥行のある音場感を楽しめるが、音像がしっかりと立ち、存在感たっぷりな演奏になるZMFらしさもある。ZMFのもう1つのフラッグシップCalderaは力感や迫力が印象的だが、平面磁界型らしい空間感を期待するならば、Tessideraのほうがバランスが良いと感じる。
ユジャ・ワン独奏の「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番」を聴いても、ピアノのタッチのニュアンスがきれいに再現され、次第に力の入ってくる強弱の変化もリアルに描く。平面磁界型のレスポンスや解像感を十分に持ちながら、音のダイナミックさ、アタックの力感、濃厚と言っていい豊かな音色まで楽しませてくれるのは他にない魅力だ。
アニメソング「GO GHOST/King Gnu」では、細身にも感じるしなやかなヴォーカルを芯の通った力強さをもって聴かせてくれる。どこか浮遊感のあるバックの演奏も反応の良さと繊細さと力感がうまくバランスしている。
このバランスの良さは、平面磁界型とかダイナミック型というドライバー方式を超えて、ヘッドホンとして理想的なバランスに仕上がっていると感じた。コンサートホールで生の演奏を聴いた時のような、繊細さと迫力、音場と音像が調和した表現を求める人はぜひとも聴いてみてほしい音だ。
結論
平面磁界型らしい高解像度に濃厚さを加えた魅力的な音
平面磁界型のヘッドホンの音に、解像感や空間表現を求めるものの、音がひ弱というか繊細すぎるタイプは面白くないという人におすすめ。高解像度なのに、濃厚で存在感たっぷりの音はとても魅力的だ。
ZMFヘッドホンの現行ラインナップ

>本記事の掲載は『HiVi 2026年秋号』


