グランプリを獲得した韓国、アビスのVERDI evo+ 2CH(ヴェルディ・エヴォ・プラス・2チャンネル)パワーアンプ、その魅力とは。ここでは藤原陽祐氏と脇森宏氏によるレビューを紹介する。
手を伸ばせば届きそうなヴォーカルはほんのりと温かく肌合いがいい
アコースティックギターの響きが繊細で空間にしみこむように拡がる
文=藤原陽祐
いまから30年以上前、韓国の地にプレミアム・カーオーディオブランドとして産声を上げたABYSS(アビス)。彼らが目指したのは「高級ホームオーディオの音を車の中で再現すること」。2000年代初頭までは主にOEMメーカーとして、高級カーオーディオ(主にアンプ)を開発、製造し、経験を積み、2013年以降、日本、インドネシアなど、アジア地域を中心にオリジナルブランドとして再出発している。
VERDI evo+は2chと4ch設定があり、いずれも価格は580,000円(税別)と、同ブランドの中堅となるモデルだ。アビスでは高級機でシンプルなA級動作に徹した回路を採用しているようだが、本機は小出力時はA級で動作させ、大出力になるとB級に切り替わるというAB級動作のアンプで、高効率の安定動作を約束している。
肉厚のヒートシンクをデザインアクセントとして生かした筐体は、見るからに精巧な仕上がりで、精密機器特有の信頼感のようなものが漂う。その作りの良さはそのまま勢いのある、鮮度の高いサウンドに表れている。微小信号の再現性に長けて、その場の空気感を鮮明に描き出す。手を伸ばせば届きそうなヴォーカルは、ほんのりと温かく、肌合いがいい。アコースティックギターの響きが実に繊細で、空間にしみこむように拡がる。
男性、女性を問わず声のニュアンスが豊かで、息づかいが生々しい。低域の力強さや空間の拡がりを必要以上に主張せず、あくまでも穏やかに、あるがままを描き出す。音のフォーカスは甘くならず、癖っぽさもない。
音の一挙手一投足に説得力があり、音楽の展開が楽しめる音に仕上がっている
空間の広さと奥行表現は本機の音のハイライトともいうべきポイント
文=脇森 宏
本グランプリには初エントリーの韓国のプレミアムカーオーディオ。”底しれぬ穴“、”深淵’’さらには“奈落の底“という意味を持つabyssをブランド名に掲げるあたりは主宰者のオーディオ体験が反映されたものではないだろうか。
アビスは1990年代に、ホームの音を車内でも実現することを目標に設立され、2000年代初頭までは米国のカーオーディオブランドにアンプをOEM供給、2013年にオリジナルブランドとして再出発したものだという。製品ジャンルはパワーアンプとスピーカー。手頃な価格帯の製品も一部存在するが、一癖も二癖もありそうなコンポーネントが並んでいる。
VERDI evo+は全長55cmの長大なアンプ。2chと4chの2モデルが設定されているが、今回は320W✕2(4Ω)、500W✕2(2Ω)を発生する2chモデルを聴いた。アンプ回路はAB級。機種名が示すようにジュゼッペ・ヴェルディのオマージュモデルの意味合いもあるのだろう。
パワフルかつ伸びやかでありながら切れ味としっとりとした感触も備えたバランスのよいサウンド。音の一挙手一投足に説得力があり、音楽の展開が楽しめる音に仕上がっている。加えて、音像の、立体感と空間表現力の的確さ。静かさも印象に残った。なかでも、空間の広さと奥行表現は本機の音のハイライトともいうべきポイントで、なるほどこの音ならヴェルディの歌劇も楽しめるだろうと納得した次第。アビスアンプの代表作と言っていいだろう。
アビス ABYSS
Power Amplifier
VERDI evo+ 2CH
¥638,000(税込)
●定格出力:320W×2(4Ω)、500W×2(2Ω)、1,000W×1(4Ω)
●入力感度:0.4~10V
●入力インピーダンス:20kΩ
●高調波歪率:0.05%未満
●周波数特性:10Hz~50kHz
●SN比:92dB超
●外形寸法:W216×H69×D553mm
●重量:7.5kg