シルバーアワードを獲得したグラウンドゼロの弩級パワーアンプ、その魅力とは。ここでは選考委員から藤原陽祐氏と脇森宏氏のレビューを紹介する。
微小信号の再現性に優れ、録音現場の空気感、気配を鮮明に描き出す
文=藤原陽祐
独グラウンドゼロが満を持して送り出してきた最高峰のアンプシステム、GZ ULTRA A-2。製品開発に費やされた時間は何と約3年間。基本的な回路設計を終えた後、競合モデルとの比較も交え、様々な条件での試聴が繰り返され、製品品質と音質性能に一切の妥協のないウルトラハイクラスのステレオアンプが完成したという。
内部写真からもお分かりのように、回路構成はモノーラルアンプをシンメトリカルに配置したデュアルモノーラル構造。スイス製ハイエンドELMAセレクタースイッチ、ドイツのMUNDORFオーディオ・コンデンサー、ロジウム・コーティングされた削りだしのRCAコネクターなど、高価なパーツが目白押しで、贅を尽くした設計であることが確認できる。また音質チューニングとしてバイアスセレクター(2段階)、入力感度セレクター(4段階)を装備している。
こうした徹底した音質へのこだわりは、そのまま勢いのある、鮮度の高いサウンドに表れている。微小信号の再現性に優れ、録音現場の空気感、気配を鮮明に描き出す。手を伸ばせば届きそうなヴォーカルは、ほんのりと温かく、肌合いがいい。アコースティックギターの響きが実に繊細で、空間にしみこむように拡がる。そして思い切って音量をあげても、足元が安定して、軸がブレないのがいい。
オプションとして水冷システムを用意しており、発熱による音質への影響を軽減することが可能。今回は試聴することはできなかったが、さらなる音質改善も期待できる。
何事も容赦なく描き出す厳しい表現力と
至高の聴き心地を両立した稀有なサウンド
文=脇森 宏
グラウンドゼロは1990年代後半から各種製品をリリースしているドイツのブランド。スピーカーに始まり順次、ジャンルを拡大し現在ではアンプとスピーカーを中心に入門機からハイエンドまで多彩な製品を展開している。
GZ ULTRA A2は、3年の開発期間を経て誕生したハイエンド2chアンプ。至高のサウンドを実現すべくポテンショメーターやオペアンプを排除したダイレクトシグナルパス入力を採用。左右完全対称のデュアルモノーラル構成の基板には選りすぐりの素子が勢ぞろい。ハンドメイドのスイス製ELMAセレクタースイッチ、カスタム仕様のMUNDOLFコンデンサー、ロジウムコーティングのRCAコネクター等々、徹底したハイクォリティ化が図られている。調節機能は、2段階のバイアスコントロールと4ステップの入力ゲイン調節のみ。最高のパーツを最適使用し、音質を阻害する要素は徹底的に排除するという考えが貫かれたアンプである。定格出力は200W×2(4Ω)、1Ω負荷では450W×2を発生する。
何も加えず差し引かずといった、むき身のしかし途方もなく魅力的な音がする。ヴォーカルは歌い手の肉声はかくやと思わせる声で迫ってくるし、楽器は強靭な芯のある音と嫋々たる響きのコントラストがことのほか美しい。アンプラグドの冒頭、聴衆の拍手の音の変化だけで、クラプトンをはじめとする演奏者が入場する様子まで伝わってきたのには驚かされた。何事も容赦なく描き出す厳しい表現力と、至高の聴き心地を両立した稀有なサウンド。音楽の魅力を純粋増幅してくれるこのアンプ、やはりただ者ではない。
グラウンドゼロ GROUNDZERO
Power Amplifier
GZ ULTRA A-2
¥1,540,000(税込)
SPECIFICATION
●定格出力:200W×2(4Ω)、330W×2(2Ω)、450W×2(1Ω)、1,200W×1(2Ω)
●周波数特性:10Hz〜80kHz(1dB未満)
●入力感度:1、2、4、8V(切替式)
●SN比:120dB
●全高調波歪率:0.001%未満
●ダンピングファクター:1,500超
●バイアスコントロール機能搭載:2.7A(Low)、4.2A(High)
●ホワイトLED装備(受注発注品)
●外形寸法:W502×H80×D250mm
GZ ULTRA A-2のボトムには厚みのあるアクリルパネルが組み込まれており、内部回路を見ることができる。綺麗なシンメトリック設計で、デュアルモノーラルコンストラクションであることがひと目でわかる。
アンプ機能としてはバイアス切り換えと入力感度切り換えの2つのみ。しかもホームユースの製品かと見まごうような大型ノブが採用されている。ノブの左右に並ぶRCAプラグはロジウムメッキが施されている。
本機の電源ターミナルは、左右のチャンネルそれぞれに設けられており、すぐ横にはLEDによるステイタスランプが並ぶ。この画像は左チャンネル用電源ターミナル。
こちらは右チャンネル用の電源ターミナルである。よく見ると左チャンネルのターミナルと比べて「GND」と「12V」の極性が逆に並んでいることがわかる。回路パターンを音質的に最適なデザインにしたかった開発者の思いがこうさせたのではないだろうか。配線には注意が必要だ。