曖昧な音がひとつもなく、すべての音がクリアに描き出される
それでいて音楽の楽しさも共存、他社との違いは歴然だ
文=石田 功
デジタル(D級)アンプを初搭載した2020年モデルは、衝撃的な音だった。ホーム用のB&Wスピーカーを軽々と動かす制動力の高さと、低域から高域まで安定した解像度の高さ。なんだかんだいって、ハイファイ・アンプならやはりA級かAB級と思っていたが、素晴らしいデジタル・アンプが出てきたことで「ついに新時代が到来か!」を感じさせたものだ。
ところがアルパインは、昨年のAuto Sound Web Grand Prix 2020が終わった後、この内蔵アンプをとことん解析し、試聴時にはまったく気づかなかったことだが、低音の音程が数分の1オクターブずれていたことを突き止めたという。
2021年モデルは、内蔵アンプ自体に大きな変化はないものの、このズレを正確にチューニング。まさしくピアノの調律のようにマニアックで職人技のチューニングなのだが、このわずかなズレを正したことが音全体に及ぼした影響はものすごく大きい。
まず音に芯がピーンと通って、すべての音がクリアに描き出される。曖昧な音がひとつもなく、普通の機器なら聴き逃してしまいそうなアコースティックギターのおかずもはっきりと聴き分けられる。これがはっきりと聴こえたのはステレオで100万円近いモノーラル アンプとダイヤトーンのスピーカー、そしてこのアルパインのAVナビくらいだ。この分解能力の高さは凄い。
それでいて、けっして分析的にならず、音楽の楽しさも共存している。音楽が生きているのだ。今回はリファレンスにホーム用のスピーカーを使用せず、他社のAVナビと同条件のCSTユニットを使ったカロッツェリアPRSシリーズ・スピーカーで試聴したのだが、他社との違いは歴然。もっともデジタル・アンプのパワーICだけでこの音を実現したわけではないだろうが、新時代がついに到来したことを確信できた。
このパワーICは、半導体不足のこの時代に必要量を確保しているという。これも開発メーカーの強みだろうか。欲しくても手に入らないものが多い時代に確実に手に入るので、安心して購入してもらいたい(ただし7型以外)。
信じ難いほどの音数と正確精緻な音の形。圧倒的なリアリティ。
ひとりでも多くの人に聴いていただきたい、切にそう思う
文=脇森 宏
至高、卓越、孤高、超絶ーー等々。これら最上級の褒め言葉は、あだやおろそかに用いるべきではないと思うし、たとえそうした製品に巡り会った場合でも、原稿に記す際には本当にこれらの言葉に見合う魅力と性能を有しているか再考熟慮することも少なくない。しかし今般、聴いたアルパイン2021モデルには、こうした最大級の賛辞を躊躇することなく贈ることができる。
尋常ならざる音質と音の気配。アンプラグド5曲目冒頭の拍手だけでこの音の虜になった。信じ難いほどの音数と正確精緻な音の形。しなやかさと強靭さをふたつながら備えた音がもたらす圧倒的なリアリティ。1992年1月16日、英国ブレイフィルムスタジオでは、このような音が響いていたのだと感慨を深くした。この曲はおそらく何千回も聴いているけれど、演奏会場の様子をここまでリアルに想起させられた体験は数えるほどしかない。C.ウイルソンの声の凄み、ちあきなおみの圧倒的な歌唱力とコンサート会場のざわめきや空気感の再現力にも舌を巻くほかなかったし、ムラヴィンスキーのベートーヴェンはあらゆる音と音楽表現が心底、納得できるものだった。「凄い、楽しい、もっと聴きたい」ーーこの試聴印象は現在に至るまで強く残り続けている。
アルパインはこの音を実現するために何をしたのか。パーツメーカーと共同開発した高性能素子を投入しデジタルアンプを初搭載した昨季のモデルも素晴らしかったが、今季モデルは飛躍ぶりが並外れている。聞けば「低域の1音階が微妙にずれていたので直した」とのこと。それにより全帯域の様相が一変、この宝のようなサウンドが出現したという訳だ。同社のこれまでの根源的で着実な製品開発のアプローチと、類まれな能力を持つ技術者の手腕の見事な結実。ホームオーディオにおいても、これほどのサウンドを聴かせるプリメインアンプがどれだけあるだろうか。この製品こそ、ひとりでも多くの人に聴いていただきたい、切にそう思う。
アルパイン ALPINE
AV Navigation
XF11NX2/他、ビッグXシリーズ
オープン価格
SPECIFICATION
EX11NX2
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:11型WXGA静電容量方式タッチパネル
●車種専用機
XF11NX2
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:11型WXGA静電容量方式タッチパネルフローティングディスプレイ
●外形寸法:W178×H100×D166.5mm(筐体)、W190.8×H177.2×D20mm(ノーズ部)
●重量:約3.9kg
EX10NX2
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:10型WXGA静電容量方式タッチパネル
●車種専用機
EX9NX2
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:9型WXGA静電容量方式タッチパネル
●車種専用機
X9NX2
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:9型WXGA静電容量方式タッチパネル
●外形寸法:W178×H100×D150.5mm(筐体)、W227.4×H127.3×D35.8mm(ノーズ部)
●重量:約3.0kg
X8NX2
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:8型WXGA静電容量方式タッチパネル
●外形寸法:W178×H100×D150.5mm(筐体)、W190.5×H120.5×D36.5mm(ノーズ部)
●重量:約2.9kg
7WNX2
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:7型WXGA静電容量方式タッチパネル
●外形寸法:W178×H100×D150.5mm(筐体)、W197×H97×D26mm(ノーズ部)
●重量:約2.7kg
7DNX2
●AV一体型メモリーナビゲーション
●画面:7型WXGA静電容量方式タッチパネル
●外形寸法:W178×H100×D150.5mm(筐体)、W171×H96×D34mm(ノーズ部)
●重量:約2.6kg
ー以下共通ー
●内蔵パワーアンプ最大出力:50W×4
●プリアウト最大レベル:2V
●再生メディア(フォーマット):地上デジタルTV、DVDビデオ、CD、Bluetooth(Bluetooth4.2)、USB(FAT16/FAT32/exFAT、MP3/WMA/AAC/FLAC/ALAC/WAV、MPAG4 AVC/H.264、5V供給)、SD(FAT16/FAT32/exFAT、MP3/WMA/AAC/FLAC/ALAC/WAV、MPAG4 AVC/H.264)
■DSP
●Media Xpander:レベル1/レベル2/レベル3(各メディアごとに設定)
●BASS MAX EQ:FLAT/POPS/ROCK/NEWS/JAZZ/ELECTRICAL DANCE/HIP POP/EASY LITENING/COUNTRY/CLASSICAL
●サブウーファーレベル:0〜15
●デジタルイコライザー:13バンドパラメトリックイコライザー、レベル・±9、Q値・1/2/3
(シンプルモード時、フロントスピーカー/リアスピーカー/サブウーファー<4バンド>/詳細モード時、左フロントスピーカーFL/右フロントスピーカーFR/左リアスピーカーRL/右リアスピーカーRR、サブウーファーSW<4バンド>)
●タイムコレクション:最大20ms・FL/FR/RL/RR/SW
●クロスオーバー
フロントHPF:20〜250Hz・-12〜0dB
フロントLPF:4〜20kHz・-12〜0dB
リアHPF:20〜250Hz・-12〜0dB
リアLPF:4〜20kHz・-12〜0dB
サブウーファーLPF:20〜250Hz・-12〜0dB
スロープ(共通):0/-6/-12/-18/-24dB/oct.
●Wi-Fi:IEEE802.11b/g/a/ac(2.4G/5GHz)、2.4GHz・1~13ch/5GHz・100〜140ch、セキュリティ方式・WPA2 Personal
●付属品:GPSアンテナ/地上デジタルTV放送専用フィルムアンテナ/USB接続ケーブル/取付部品一式