クルマ購入時に搭載されている標準装備やメーカーオプション、ディーラーオプションのカーオーディオ、いわゆる「車両純正オーディオ」を実車で体験。本稿では純正カーオーディオのシステム概要やサウンドについてレビューする。
文=長谷川圭
12スピーカーを総合410Wアンプでドライブするメーカーオプション
MINIのクーパーD、5ドアモデルは、その名の通りクーパーモデルの5ドアボディ、パワートレインは1.5リッターディーゼルエンジンにツインターボが加えられている。オプションなしの車両本体価格は347万円。カーオーディオは、米国ハーマンカードン(harman/kardon)製が搭載されている。12万3千円のオプション設定で、計12スピーカーとトータル出力410Wのパワーアンプが組み込まれている。
ハーマンカードンといえば、PCと組み合わせて使用できるスピーカーシステムやコンパクトサイズのオーディオコンポーネントなどを展開するブランドで、JBLやマークレビンソンといった高級オーディオブランドを擁するハーマンインターナショナルの一員である。
カーナビゲーションをはじめとするインフォテインメントシステムは、8.8インチタッチパネルディスプレイを採用。マウントされるセンターダッシュのデザインは、MINI伝統のセンターメーターをイメージ、マルチカラーLEDを備えた大型ベゼルは見た目に楽しくポップな印象だ。CDやDVDを再生するディスクドライブメカはなく、ラジオやスマートフォンを音源としたエンターテインメントを楽しむオーディオシステムとなっている。また、apple Carplayへの対応(Apple Carplay & Wireless Package:13万3千円)も果たしているので、アプリを使いこなしている人は積極的に使いたいところだろう。
Bleutoothオーディオへも対応しているため、ペアリングしたスマートフォンの音源をカーオーディオで再生することができる。音楽データファイルの再生形式については、詳しく公表されておらず不明。今回の試聴はUSBメモリーを使ってCDフォーマットと同様のWAVで聴いている。
主なオーディオコンポーネントの構成は、先述のインフォテインメントシステムをヘッドユニットととし、DSP内蔵のパワーアンプによりスピーカーを駆動する。スピーカーは、ダッシュボードの中央にセンタースピーカー、フロントピラーに高音用トゥイーター、フロントドアにはピラーのトゥイーターと対をなす中低音用ミッドウーファー、シート下のフロアにはサブウーファーを搭載、さらにリアドアにはトゥイーターとミッドウーファーをマウントしている。
本車のサウンドの大部分はトゥイーターとミッドウーファーでバランスされていて、サブウーファーの低音は量感を感じさせるためのアクセントといった鳴らし方のようだ。これは、ミニ独特のエキゾーストノートとの兼ね合いを考えたサウンドチューニングではないかと察する。
帯域バランスはリアスピーカーで整えているようで、フェーダーをセンターに合わせた時がもっともフラットに近いレスポンスが得られるように感じる。軽快な印象で聴けるサウンドで、クルマのイメージとも通じる部分があるよう。この中音から高音にわたるバランスはとても快適だ。
フロントスピーカーの役割としては、音場形成に重きをおいているもよう。ピラーのトゥイーターはユニットの口径こそ一般的なドームタイプだが、横長のシェイプとしたグリル内は、ドーム振動版が搭乗者のほうを向くような角度で固定されている。この角度調整により絶妙なサウンドステージ創生が実現できているようだ。車室がコンパクトな印象のミニ、それに対して充分な広がりを水平方向に聴きとることができ、ステレオフォニックの醍醐味が楽しめた。
ハーマンカードンは、値ごろ感のあるプライスタグをつけたポピュラーなブランドイメージだが、このミニのオーディオシステムでは安っぽさを感じさせるような音は出さず、その中にもかっちりとした正統派を思わせるサウンドを繰り出してくる。特に聴きごたえがあるのはヴォーカルで、芯がしっかりして肉感的な声として楽しむことができる。
サブウーファーによる低音の効かせ方が特徴的なため、独特な重低音が目立つ。走行中でもパワフルな再生を楽しみたいドライバーならば、これは充分な演出といえそうだ。だが、全帯域のバランスで考えると低音過多気味な印象は否めない。そのため、個人的にはトーンコントロールのBASSを−3程度に調整してすっきりとしたバランスを作ってみたところ、かなり好ましく感じることができた。長時間ドライブでも聴き疲れしないサウンドチューンとして提案したい。
<photo : Kei Hasegawa>