9スピーカーでスポーティーな走りを演出

 すでに別項でご紹介した「JBL Fest 2018」の中で、JBLを純正搭載した実車を聴く機会を得た。会場には数車種の用意があったが、今回は7月に発売されたトヨタの新型セダン「カムリ」についてレビューしてみたい。

 カムリにはベーシックなX、アッパーグレードのG、スポーツグレードのWSがあり、GとWSにはシートに本革を採用したレザーパッケージが用意されている。このうち、Xはオーディオレス仕様、WSレザーパッケージとGレザーパッケージはT-Connect SDナビ+6スピーカーが標準装備(WSおよびGはメーカーオプション)となる。

 このラインナップでJBLプレミアムサウンドシステムは、WSレザーパッケージ、Gレザーパッケージにメーカーオプション。WS、GのT-Connect SD ナビゲーションシステム装着車にメーカーオプションで設定されており、価格は税別¥73,000だ。

 このシステムの詳細は次の通り。

■DSP内蔵8チャンネルアンプ
■9スピーカー
○25mmホーントゥイーター(フロントピラー)
○80mmワイドディバージョン・スピーカー(ダッシュボード内)
○200×230mmミッドウーファー(フロントドア)
○150mmフルレンジスピーカー(リアドア)
○265mmサブウーファー(リアトレイ)

画像: 9スピーカーでスポーティーな走りを演出

 また、JBLを擁するハーマンが開発した圧縮音源復元アルゴリズム技術「Clari-Fi(クラリファイ)」を備えており、データ圧縮された音源再生において威力を発揮する。スマホに取り込んだMP3ファイルや、ストリーミング音源などで効果的に働きそうである。

マッシブでブリリアントなサウンド

 試聴したのは、トヨタ カムリWSレザーパッケージ。と、同等の仕様の米国バージョンである。当然のことながらハンドルは左。ただし、JBLのオートモーティブで開発を手がけるスタッフによれば、日本市場で発売されている車両と同じ音であるという。センターコンソールに収まるインフォテインメントシステムは、カーナビ機能を持つのだが、ナビ機能に関しては日本とアメリカで大きく異なるのでここでは触れず、オーディオに関してのみご報告する。

 DVD/CDが再生可能なディスクドライブとラジオ(北米仕様なので衛星ラジオも楽しめる)、Bluetoothオーディオ、メモリーオーディオなどが楽しめる。アップルAirplayやAndroidAutoにも対応を果たしている。サウンドコントロール機能はTreble/Mid/Bassが調整可能なトーンコントロールが備わっている。左右レベルバランス、前後レベルバランスが調整可能なフェーダーももちろん搭載。それ以外の調整機能はないのだが、そもそもカムリ専用に開発されたシステムなので、多くの調整機能は必要ではないのだ。トーンコントロールがすべてセンターポジションになっているのを確認して、音出しを開始。

画像: マッシブでブリリアントなサウンド

 運転席で聴いた印象はというと、なかなかパワフル。ビッグマッスルをまとったマッシブなサウンドだ。スポーティセダンというクルマに寄せたようなイメージともいえるかもしれない。ただ、そのままだとサブウーファーの存在感が顕著なので、個人的にはもう少しさりげなく下を支えて欲しいところ。ただ、アクセルを踏み込んで走行する場面などでは、トランクルームをエンクロージュアとして利用したサブウーファーの量感たっぷりな鳴りっぷりが欲しくなるかもしれない。

 ピラーのホーントゥイーターとダッシュボード両端に埋め込まれたワイドディバージョン・スピーカーの効果だろう、サウンドステージは比較的広く展開し、ヴォーカルの音像などはダッシュセンターに定位する。ただし、リアドアのフルレンジスピーカーが、聴取位置的にはフロントスピーカーよりも近くなるせいか、若干後ろに引っ張られる感覚もあり、そこはフェーダーでリアスピーカーのレベルを調整してみた。

 ホーントゥイーターはブリリアントな高音を奏でるタイプのようで、音響レンズを用いたワイドディパージョン・スピーカーとあいまって楽曲によっては少し抑え気味で鳴らした方が自然な聴き心地になりそうだったので、Trebleをわずかに下げると、ごく自然なバランスで音楽が再生された。フロントドアに配置されたオーバルタイプのミッドウーファーとナチュラルにつながり、芯のある闊達な鳴り方となった。

しなやかさと強靭さを併せ持って聴かせる

 この状態で、音楽を聴き込んでみると、ビッグマッスルというより細マッチョな印象となり、しなやかさと強靭さを兼ね備えたパワフルさを感じるようになる。ボリュウムを上げていっても、破綻することなく各スピーカーはドライブされ、ともすると音が混濁するのではというレベルでも、ちゃんと音楽を再生してくれた。

 トーンコントロールの調整前後にわたって共通するのは、元気なサウンドという印象。クラブミュージックなどは、かなりアガるに違いない。対極的ともいえるフルオーケストラではどうかというと、こちらはこちらでドラマティックな聴き応えがあって新鮮だ。

画像: しなやかさと強靭さを併せ持って聴かせる

 デフォルトの状態で聴くのももちろんアリだと思うが、必要最小限度の調整機能を上手く使いこなして、自分なりのカムリJBLサウンドを楽しむのを積極的にお勧めしたい。ここで、オプション価格¥73,000に注目すると、充分なパフォーマンスのスピーカー9本と、それをしっかりドライブするDSP搭載パワーアンプ、Clari-Fi搭載インフォテイメントシステム……これらが揃ってさらにサウンドチューニングまでできるとなると、これは安い。同等以上のオーディオを市販オーディオで購入して、インストールして、チューニングしようとすると、この数倍のコストを覚悟しなければならないだろう。

 車両本体価格が一番安いXではJBLプレミアムサウンドシステム搭載は見込めないので、カムリに関して言えば、GあるいはWSという選択で、オーディオのオプション購入を真剣に検討することをお勧めする。実際にこの音にはその価値がある。

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