画像1: JBLが生み出される地、ロサンゼルス・ノースリッジを訪ねて

幅広い音楽シーンで活躍するJBL

 オーディオブランドを列挙せよと言われたら、多くの人が挙げるであろうJBL。当サイトの読者であれば、ジェームズ・B・ランシングが立ち上げた歴史あるブランドでしょうとすぐに出てくるだろうし、JBL製品のオーナーも数多くいらっしゃることと思う。そして熱心なファンならば、過去ステレオサウンド社から出版された「JBL本」も熟読されているかもしれない。

 世界にその名を知られるJBLは、プロオーディオ、ホームオーディオ、カーオーディオ、マルチメディア、ポータブルなど音楽が鳴らされるさまざまシーンにおいて製品を送り出してきている。古くからのオーディオファンならば、JBLといえばエヴェレストやprojectK2といったハイエンドスピーカー、43シリーズモニタースピーカー、ライヴステージのPAシステムなどのプロオーディオ機器というイメージをお持ちの方が多いのではないだろうか。しかし、現在ではBTスピーカーやヘッドフォン/イヤフォンといった製品も充実してきている。BTスピーカーなどは、防水機能も備えており屋内外を問わずどこででもJBLサウンドを楽しむことができる。さらに市販カーオーディオやトヨタの純正カーオーディオも展開している。もはやJBLの音が聞けない所はないのではないかと思えるほどだ。

JBLの中枢で感じた「聴く」ことを重視した開発姿勢

 ラスベガスで開催されたJBL festなるイベントに参加する道すがら、ロスへも立ち寄ることができ、JBLの本拠地であるノースリッジのオフィスを訪ねることができた。ロサンゼルス市の北よりに位置するノースリッジは、ビジネスオフィスが並ぶ地域で、その一画にハーマンインターナショナルのオフィスビルがある。

画像: JBLの中枢で感じた「聴く」ことを重視した開発姿勢

 このオフィスはJBLの製品開発の中枢であり、試作機を組み立てるための工房、測定のための無響室、耳で評価するための試聴室などがある。数年前までは一部製品を製造するための工場も併設されていたが、現在工場はテキサスへ移転しており、ノーズリッジオフィスは開発本部として機能している。

 メインエントランスには、現JBLの最高峰モデルであるエヴェレストDD67000が展示されるほか、ミニゴン、オリンパスといった同ブランドの名器が並んでいる。今らしいと感じるのは、オブジェのように飾られたPULSE3だ。BT内蔵のアクティブスピーカーにLEDによるマルチカラーイルミネーション機能を合わせたモデルで、同社の大人気モデルである。

 オフィス内を案内してくれたのはJBLのR&D部門で働くクリス氏。つい先日、日本市場でリリースされたL100 Classicの開発責任者である。スタッフのデスクが並ぶスペースに通していただくと、壁一面に見覚えのあるプレートが目に付いた。季刊Stereo Sound誌や月刊HiVi誌で獲得したグランプリの数々である。歴史あるブランドであるし、多くのヒットモデルを輩出してきたJBLだから、称えられた実績も少なかろうはずもないが、これほど多かったかと感じるほど。

画像: JBLのR&D部門でエンジニアを務めるクリス・ヘイゲン氏。L100 Classic開発では、主要スタッフとして腕を振るった人物だ。

JBLのR&D部門でエンジニアを務めるクリス・ヘイゲン氏。L100 Classic開発では、主要スタッフとして腕を振るった人物だ。

画像: オフィス内の壁に飾られた受賞盾の数々。スペースの都合でこれ以外にもいくつもの盾が別の場所に並べられていた。

オフィス内の壁に飾られた受賞盾の数々。スペースの都合でこれ以外にもいくつもの盾が別の場所に並べられていた。

 ノースリッジオフィス内の大まかな案内は、ハーマンインターナショナルの日本語ウェブサイトでも紹介されているが、そのなかのいくつかについて個人的に感じたことなどを挙げてみよう。

 まず、試聴室が充実していること。クリス氏によれば、JBLブランドでリリースしている製品がバリエーションに富んでいるため、それぞれの使用環境を想定した部屋で評価する必要があると説明してくれた。広さの異なる部屋、壁に埋め込むウォールスピーカーが聴ける部屋、大型スクリーンを備えたシアターシステム評価用の部屋がある。中には、暗闇の中で聴く部屋もあり、ここでは数種類のスピーカーを同一条件下でブラインド試聴できるところで、フルオートマティックでアットランダムにスピーカーが再生され、比較評価するのだという。テスターは社内に約20名ほどおり、必要な時に複数名が試聴に参加、評価しているという。訪れた際に3種類のスピーカーシステムを聴かせていただいたが、想像以上にその差がはっきりと聴きとることができた。ただし、再生するのはモノーラル状態であるため、ステレオイメージなどの評価はできないものの、純粋にスピーカーシステム単体の出音についてはもてもわかりやすく比較することができた。スピーカーブランドとしては当然かもしれないが、JBLは特に聴くことを大切にして製品開発がおこなわれているのだ。

画像: ブラインド試聴をオートマチックで行える試聴室で説明をするクリス氏。

ブラインド試聴をオートマチックで行える試聴室で説明をするクリス氏。

 次に驚いたのは、無響室の多さだ。すべてのスピーカーメーカーについてその開発設備を知るわけではないが、4つもの無響室を持つメーカーはそれほど多くはないのではと思う。世にJBLのバッジをつけるにあたっては、一切の妥協をせずその名にふさわしい製品を提供しようという心意気のようなものをヒシヒシと感じた。

JBLの現在を網羅したショールームを開設

画像: ちょっとしたクラブのようなスペース。音響だけではなく、ライティングやスモークといった演出もみられた。

ちょっとしたクラブのようなスペース。音響だけではなく、ライティングやスモークといった演出もみられた。

 先述した、生産ラインがあった部分だが、ここには現在ハーマンエクスペリエンスセンターと名付けられた大規模なショールームが設けられている。ハーマンといえばJBLをはじめ、マークレビンソン、AKG、と有名オーディオブランドをいくつも擁している企業。そして近年ではサムスンの資本傘下となっている。ハーマンエクスペリエンスセンターでは、同社が今できることのすべてを観聴きすることができる。

 マルチメディアオーディオのコーナーやパーソナルオーディオ(ヘッドフォン/イアフォン)のコーナー、ホームオーディオ、ホームシアター、プロオーディオではレコーディング分野とライヴ会場分野のそれぞれが紹介されている。圧巻だったのは、ファクトリースペースの広さを活かしたクラブのような空間。小学校の体育館ほどの広さをもつ空間では、大音量再生できるオーディオシステムに加え、色彩豊かなライティングシステム、幻想的なスモーク装置などが用意されて、音楽に合わせた照明効果やスモーク演出のデモンストレーションを体験することができた。聞けば、JBLを筆頭としたオーディオテクノロジーに、サムスンの映像技術が融合したことで、音と光がマッチしたエンターテインメントが実現できたのだという。なるほど、様々なサイズのOLED素子を使ったライティングもあり、大いに納得した次第。

最新のモデルを聴いて、さらなる飛躍を確信

 おりしも「L100 Classic」が日本市場でも発売されたタイミング。試聴室の一つには本機がセッティングされており、わずかな時間だったがその音を体験することができた。70周年記念企画でリリースされた4312SEの好評を受けて作られたと聞いていたが、これはこれでJBLファンはもちろんオーディオファンにとっても好評価が得られるのではないだろうか。なによりも佇まいがいい。専用のスチールスタンドで少し仰角がついたL100 Classicは、独特なデザインのQuadrex Formフロントグリルと木目仕上げのエンクロージュア、それらが相俟った姿は眺めているだけで楽しい。しかも送出されてくるサウンドは、音離れのよさと重量感が印象的で魅力に溢れている。そして、どの音量でもそのサウンドバランスに破綻をきたすようなことはなく、安定した鳴り方をする。思わず我が家に置いたら……と考えを巡らせてしまったほど。

 4312SEやL100 Classicのような過去モデルをオマージュした製品が作れるのも歴史あるJBLならではだろう。復刻版に限らず、音楽の楽しさを伝えるスピーカーを生み出すに違いない。個人的には60周年記念モデルとしてリリースされた車載用スピーカー「660GTi」のようなモデルが出現しないかという期待もしている。JBLはそれができるブランドであろうと、ノースリッジオフィスを訪れて感じた次第である。

画像: 最新の300mmウーファーを搭載したスピーカーシステムL100 Classic。

最新の300mmウーファーを搭載したスピーカーシステムL100 Classic。

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