Amazon(アマゾン)は、オーディオブック配信サービス、Audible(オーディブル)が日本でのビジネス開始から10年を迎えたことを記念し、これまでの歩みや今後のサービス拡充に関する発表会を開催した。
冒頭登壇したアマゾンのAudible カントリーマネージャー、逢阪志麻さんは、「今年Audibleは、日本でのサービス開始から10周年を迎えました。これも皆様のご愛顧のおかげと深く感謝しております」と挨拶をした。

逢阪氏によると、Audibleは1995年アメリカにアメリカで誕生した。その後2008年にアマゾンの一員となって、2015年に日本でサービスを開始、2018年にはダウンロードサービスを始め、2022年には聴き放題会員プランの導入を行っている。さらに今年6月にはAmazon Music Unlimitedの個人プランとファミリープランのユーザーに対し、毎月1冊利用可能になった。
そんなAudibleについて逢阪氏は、3つの要素が成長を支えていると話していた。「コンテンツの拡充」「会員満足度の向上」「利用時間の増加」がお互いに作用し合い、好循環を生んで日本向けサービスの持続的な成長につながっていくと考えているそうだ。
なお、先述したAmazon Music Unlimited会員向けのサービスを始めたところ、2025年8月の集計では月平均3.68時間の利用があったとかで、加えてAudibleを聴いたことで実際の本を手に取る機会も増えたと意識している人もいるとのことだ。

他にも日本のユーザー傾向として、外出時の利用率が他国平均よりも低いという。つまり日本では、移動時や外出時にオーディオブックを楽しむという習慣がまだ認知されていないということで、ここに日本でのさらなるに成長の機会があると同社では考えているようだ。
さらに今年の調査では、お気に入りの作家がオーディオファースト作品(Audibleで先行配信し、後に紙の本を出版する)を制作してくれたら嬉しいか? という質問に84%が肯定的に回答している。さらに特定のナレーターが朗読したオーディオブックが気に入った場合、その人が朗読した他のオーディオブックも聞いてみたいか? という質問への肯定的な回答も63%から69%に増えているそうだ。
これらを踏まえてアマゾンでは、作品選びにおいて、作家やナレーターの存在が重要な決め手になっていると考え、コンテンツの質・量的な充実を目指していくようだ。その点については、同社Audible APACコンテンツシニアディレクターの宮川もとみさんが説明してくれた。
宮川さんはまず、「2025年はAudibleが日本のお客様向けにサービスを開始してから10年目という大きな節目の年であります。これもAudibleに可能性を感じていただき、積極的に協力と参画をしてくださった出版社、著者、クリエイター、ナレーター、その他関わってくださった皆様のお力添えの賜物です。改めて御礼を申し上げます」と感謝を述べた。

さらにAudibleでは2025年の新規制作作品数を昨年比で40%増やしていくそうで、「Audible 10周年記念スペシャルコンテンツ」が発表された。
そこでは、先ほど話に出ていたオーディオファースト作品の強化も考えている。実際に昨年配信した東野圭吾さんの『誰かが私を殺した』が好評で、今回は湊かなえさんの『暁星』や林真理子さんといった人気作家のオーディオファースト作品も順次配信するという。
他にも人気作家の新作として、村上春樹さんの『街とその不確かな壁(上)』を10月21日から配信するほか、村上龍さんの44作品、恩田陸さんの15作品をオーディオブック化していくそうだ。
他にもポッドキャストのAudibleオリジナル番組として、「A UNIVERSITY」を開講、毎回異なる講師を迎えて様々なテーマを取り上げるそうだ。エンタメ作品としてはくりぃむしちゅーやアンタッチャブルといった芸人さんによる番組も予定されている。

さらに発表会では、作家の中山七里さんと俳優の濱田岳さんによるトークショーも開催された。中山さんは作品をAudibleで数多く配信しており、濱田さんは11月から恩田陸さんの『Q&A』と村上龍さんの『イン・ザ・ミソスープ』の朗読を担当している。
Audibleの朗読は初挑戦だったという濱田さんは感想を聞かれ、「僕らの場合は、1人の人生を深掘りして、寄り添って映像にします。けれど今回は、多くのキャラクターのバックボーンを想像しながら、なぜこの人は、この時にこういう言葉を選んだんだろうとか、そういうことにも寄り添わなきゃいけない。それは朗読の難しさだなと思いました。
朗読って言うと穏やかな印象に聞こえると思うんですけど、今回やらせていただいた2作品は、就寝前に心を落ち着けて読むような話ではなくて、自分からアドレナリンを出さなきゃいけないようなスリリングな作品だったので、それを1人でやっていくというのは新たなチャレンジで楽しかったです」と話していた。

中山さんは作品を執筆する立場から、「文字情報が音声になるとどこれだけ変わるのかな、実像として浮き上がってくる感じがすごいなと思います。これは声の芸術だなと思いました」と話していた。
さらに、「最初にAudibleの話を聞いた時は、目の不自由な方に向けたガジェットかなと思ったんですが、蓋を開けてみたら、今まで読んだことのない方が作品に触れてくれる、そういう可能性があるんですよね。それで、すべての僕の著作をAudibleで配信して、オーディオファーストで連載するっていう試みも始めたんです」とAudibleに対する期待も語ってくれた。

最後に宮川さんから、「10年前は、オーディオで小説を聴くこと自体がお客さんも、作家さんもピンと来てない時代だったんですけれども、今ではクリエイターの方たちがそれを意識して作品を作ってくださるのがたいへん喜ばしいです。これからどんどん面白いものが生まれてくるんじゃないかなと期待しております」と今後に向けた期待が語られ、発表会は終了になった。


