Skullcandy Japan(以下、スカルキャンディー)から、米のオーディオブランド BOSEとのパートナーシップで生まれた新作完全ワイヤレスイヤホン「Method 360 ANC」が、製品の発表から2カ月、いよいよ8月29日(金)に発売される。価格は2万円を切る¥19,990(税込)を実現した。


さて、ここでは、今回のコラボ(パートナーシップ)モデルの発売に先駆けて行なわれた説明会の模様も含めて、製品の特徴を紹介していきたい。
スカルキャンディーの誕生は、スキーリフトの上だという。創業者が音楽を聴きながらリフトに乗っていた際、電話に出る必要があったのだが、当時は音楽を聴きながら電話にも出られる、という製品がなく、ならば自分で開発しよう。それが、会社設立のきっかけとなったという。そして、音楽を聴くだけでなく、ボードスポーツをしながら楽しめるという、ライフスタイルの要素も取り込んだ製品を創る。いまなおその新規性が特徴的なブランドは、そうして誕生したということだ。

以後は、楽しむこと、ユニークであることなど、6つのテーマを掲げて製品を開発を続けていき、ストリート、ゲーミングなどへもカテゴリーを広げ、今ではヘッドホン、イヤホン、ゲーミング機器、ポータブルスピーカーなどをラインナップするブランドへと成長している。

そして、今年2025年には、より広いユーザーへ製品を届けるべく“ファション”の要素を取り入れる方面へも踏み出すとともに、音楽を楽しむ製品として、今一度“音質”の向上にも再び目を向け、そこで白羽の矢が立ったのが、BOSEで、同社とのパートナーシップへ帰結したということだ。
スカルキャンディーがターゲットとする10~30代の消費者に調査をしたところ、BOSEのブランド浸透力、音質の認知力は高かったそうで、BOSEの音質を備え、安価(100ドル以下)ならば購入したい、という結果を得たことがそれを後押ししたそうだ。

そこでスカルキャンディーのCEOトニー・ホークが考えたのが、BOSEとのパートナーシップのPRをどのように広めるか? そこで考えられたのが、以下のストーリーテリングだ。トニーが部下に、BOSEから音質の核となるチップを“手に入れろ”と指示を出すと、60年代のスパイドラマよろしく(80年代のAチーム的な要素も散見される)、黄色のユニフォームに身を包んだスタッフがBOSE社に潜入。無事にチップを奪取してくる、という動画だ。まあ、“手に入れろ”がオチに繋がるキーワードになるのだが、この動画はwebでも公開されているので、ぜひ見てほしい。
そうして誕生したMethod 360 ANCだが、発売に先駆けて先行予約を行なったところ、歴代最高の注文を獲得しているという。
前置きが長くなったが、製品の特長について紹介しよう。まず目をひくのが収納ケースだろう。クリップのついた縦長の少し大きめのもので、ここまで大きなケースは、イヤーフック型のワイヤレスイヤホンでもなかなかお目にかからないほど。というのも、上部にクリップがあることからも分かるように、このケースを服やカバン・リュックなどに取り付けておき、聴きたい(使いたい)時にさっと取り出せる、という仕様になっている。
それは収納方法(向き)にも表れていて、クリップのついた側を自分(手前)に向けた状態でケースを開けると、右のイヤホンは右側、左は左というように、さっと取り出しやすい位置にイヤホンが格納されている。慣れればすぐに取り出し、装着ができるだろう(ただし、自分の正面にケースを下げておかないと、取り出しにくい)。

クリップを自分の方に向けた時が、イヤホンが取り出しやすい
ドライバーは12mm径のダイナミック型で、イヤホン本体の形状は、お団子型とスティック型の中間というもの。短いながらもスティック(足?)があることで持ちやすいし、イヤホンの腹にあたる部分の周囲にフィンも備えられているので、装着感も良好。圧迫感も少ない(それもあって、遮音性はもう一つか)。比べると、BOSEの製品に似ていなくもない。

機能面では、アクティブノイズキャンセル機能、外音取り込み機能、マルチポイント接続(2台)、装着検出、アプリ対応(Skull-iQ)、IPX4の防水規格準拠、再生時間はイヤホン単体で約11時間、ケース併用で約29時間(ともにANCオフ)、急速充電対応(10分で約2時間再生可)、Bluetoothは5.3、コーデックはSBC、AAC、LE Audioをサポートしている。
では、気になる音質についても簡潔に紹介したい。第一印象は、帯域がフラットで、特にしっとりとしたボーカルの魅力的なこと。音像の定位もよく、AACでは後頭部寄りになる製品も多いのだが、本Method 360 ANCでは目の後ろあたりにスッとボーカルが立ち上がってくるようになる。音場はそれほど広くないが、ボーカルを邪魔せずに、その周囲に寄り添ってくれる。帯域については、これまでの製品ではどちらかと言えば低音が強すぎる印象もあったが、低域から高域まで(高域はそれほどないが)滑らかにつながっていて、良好なもの。聴き込んでいくと、バスドラのような低音については、サブウーファーを追加したような雰囲気で、うるさくすることなく量感を補ってくれている。ドンドンドンドンした低音が欲しい人には少し物足りないかもしれないが、良質な低音が楽しめる製品と言えるだろう。
ANCの効果は少し控えめで、周囲の騒音を全部消す、というよりかは、耳に付きやすい風音(最近は冷房の強い電車内の送風音など)を的確に抑制してくれる利き方で、電車の走行音などは少し残る(確認できる)ような塩梅になっているので、ある程度は周囲の状況を確認しながら、音楽に集中できるものに仕上がっていた。車内アナウンスはしっかり聞き取れる。ちなみに、ANCを掛けると高域が少し凹み、音数が減り、低音が少し強化されるようになる。ドンドンまではいかないが、ANCオフよりも低音は強くなるので、低音が欲しい人は常時ANCオンでいいだろう。

アプリ画面。アプリの起動にはネット接続が必要なようだ
なお、本製品の売りでもある“SOUND BY BOSE”で、BOSEは何をしているのか聞いてみたところ、音質のチューニング、という答えが返ってきた。DSPを含めた音作りの部分、というあたりになるのだろうか。


