日本のオーディオメーカーfinalから、昨秋登場した有線イヤホン「S series」。2種類のラインナップを揃え、一つはステンレス仕様の筐体をまとった「S4000」(¥44,800税込)、もう一つは真鍮製筐体の「S5000」(¥54,800税込)となる。ともに、バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーをデュアルで搭載しており、同ドライバーの新たな可能性を引き出すことに注力して開発を行なった、ということだ。ここではその2台の音質レビューをお届けしたい。

 新製品のSシリーズは、独自技術「トーンチャンバーシステム」の開発を受けて、新たに立ち上げられたラインとなる。これは、大まかに言えば、ドライバーの前面に設けられた空間(チャンバー)によって音色(トーン)を調整する、という仕組み。これによって、筐体の素材による響きを強化する、としている。そのため、Sシリーズでは前述したように、素材による響き感の違いを味わえるように、ステンレス筐体を採用したS4000と真鍮筐体のS5000をラインナップしている。

 筐体のデザイン自体は、これまでの「Eシリーズ」と同様にシンプルな円柱形で、コネクターは従来のMMCXからカスタム2ピンへと変更されている。

 メーカーの謳い文句としては、シャープで引き締まったサウンドのS4000、芳醇で繊細なサウンドのS5000とコメントしているが、記者の感覚としては逆だった(笑)。

 ちなみに、量販店のサイトを見ると2モデルとも在庫はあるようだが、finalの直販サイトでは、S5000は予約受付中で、5月以降の発送と表示されていた。

 では、レビューに移りたいと思う。試聴は付属の3.5mmステレオミニ(アンバランス)ケーブルで行なっている。まずはS4000から。筐体はステンレスで銀色というか、薄めのガンメタル色で、見栄えのするもの。ある程度の重量感もあり、金属ならではの剛性感も得られ、手にした時の質感は高い。音調は華やかなもので、音圧はS5000よりも高いようで、ボリュームは絞り気味でも結構な量感を得られる仕上がりとなっていた。

画像1: finalの新作有線イヤホン「S series」2モデルは、筐体素材に合わせた豊かな響きが楽しめる逸品!

 ボーカルの帯域に力感があり、背景のメロディからふっと浮き上がってくるような再現性となる。ボーカルメインの楽曲との相性は良さそうだ。トーンチャンバーシステムの恩恵か、響き感も豊かで、音像も中央にスッと立ち上がってきて、BAらしいサウンドが楽しめる。

 コンテンツをハイレゾ(96/24)にすると、ボーカルの華やかさが少し抑えられ、全体的にバランスの整った音調となり、重心も下がり、ステンレスらしい引き締まったサウンドとなるのは面白いところ。情報量が増えた分、細かい音の再現性が増していて、音空間もおでこの上方向に拡大するようで、広いサウンドステージが楽しめるようになる。

 一方で、mp3のような圧縮率の高いコンテンツでは、華やかな再現性が悪い方に出てしまうようで、ガチャガチャとした印象も強くなるので、音調の好みや主に聴取するコンテンツに合わせて選びたい。

画像: 新型のイヤーチップは装着感、遮音性、ともに良好。長時間装着していても違和感はなかった

新型のイヤーチップは装着感、遮音性、ともに良好。長時間装着していても違和感はなかった

 最近のJ-POPでは、声が定位する範囲が大きいようで、頭内の中央にドンと芯が立つような感覚になり、面白いもの(どちらかと言えば後頭部寄りになる)。ロック、ポップス、クラシック、ボーカルなど、ジャンルは多彩に対応するが、ボーカルメインの楽曲との相性は良さそうだ。

 続いて真鍮筐体のS5000。一聴して音調がまったく異なることが分かる。帯域はフラットで、しっとりとした質感とモニター的なしっかりとした再現性。もちろんそこには、真鍮の素材を活かした豊かな響きがあり、その響きの余韻が存分に楽しめるようになっている。音場感は若干狭い。BA的なサウンドのS4000に対し、S5000ではダイナミック型のようなサウンドに感じた。ボーカルの再現性はS4000とは異なるものの、メロディからスッと浮き立ち、存在感ある歌声を聴かせてくれる。記者の好みで言えば、響き感の豊かなS5000となる。

画像: 高級感のあるゴールドの筐体

高級感のあるゴールドの筐体

 コンテンツをハイレゾ(96/24)にすると、空間(音場)が大きくなり、特におでこ上方へ拡大する印象。音の粒も細かくなり、増えた情報量をしっかりと再現してくれるので、特に響きや音の消え際の余韻が豊かになる。一方で重心は少し高めなので、もう少し締めたくなる。俯瞰してみれば、CDクォリティ(のコンテンツ)との差はそれほど大きくはない。

 mp3コンテンツでも、S4000のように派手にはならないので聴きやすく、ガチャガチャとした再現にはならないこともあり、相性は良さそうだ。ジャンルはS4000同様に幅広く対応するが、どちらかと言えばゆったりとした曲、響きや音場感のある曲との組み合わせが向いていると感じた。

画像2: finalの新作有線イヤホン「S series」2モデルは、筐体素材に合わせた豊かな響きが楽しめる逸品!

 ちなみに、S5000をバランス接続で聴いたらどんな音がするのか? が気になったので、追加でテストしてみた。使用したのはfinal製のバランスリケーブル。響きはさらに豊かになり、音場は左右方向へ広がるようになる。アンバランス接続で感じた雑味は減り、音そのもののクリアネスが向上する印象。ハイレゾコンテンツにすると空間や響き感はさらに拡大し、芳醇なサウンドが楽しめるようになる。音の粒立ちも細かくなり、より繊細な再現性となる。重心については、アンバランス同様に少し高めなので、もう少し締めたくなる。J-POPでは、アンバランスでは後頭部寄りに感じた定位感が、不思議なことに前方に来るようになる。当たり前だが、バランスケーブルへの交換の恩恵は大きいので、晴れてS5000ユーザー(S4000も含め)になったファンは、リケーブルも楽しんでほしい。

画像: 付属ケーブルはシルバーコート仕様。ソフトなのだがとても絡まりやすく、うまくまとめておかないと、使用する前に気持ちが切れそうになる!

付属ケーブルはシルバーコート仕様。ソフトなのだがとても絡まりやすく、うまくまとめておかないと、使用する前に気持ちが切れそうになる!

画像: プラグ部分やコネクター部分は筐体色と揃えている

プラグ部分やコネクター部分は筐体色と揃えている

https://final-inc.com/products/s4000

https://final-inc.com/products/s5000

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