フジヤエービックが主宰する「春のヘッドフォン祭 2024」が本日、東京・八重洲のステーションコンファレンス東京で開催された。今回は約80社が出展し、国内外の多くのブランドの製品が並んでいた。ここではStereoSound ONLINE編集部が現場でチェックした注目アイテムについて紹介したい。まずは会場で新製品発表会を行った「Brise Audio」について。(StereoSound ONLINE編集部)
Brise Audio(ブリスオーディオ)は、2015年に誕生した国内ブランド。創業者の一人である渡辺慶一氏が制作したケーブルをハイエンド・オーディオユーザー向けにオーダーメイドする事業からスタートし、現在はオーディオ用ケーブル、アクセサリー、コンポーネント機器の開発・製造を手掛けている。
今回そんなBrise Audioからは、同ブランドの最高峰モデルとなるアルティメットポータブルオーディオシステム「FUGAKU 冨嶽」(市場想定価格¥2,500,000、税込、5月受注開始、8月出荷予定)が発表された。イヤホンと専用アンプ・ケーブルの3点がセットとなったシステムだ。
一般的にイヤホン、ポータブルアンプ、ケーブルは単品の組み合わせとして使われることが多く、互換性という点からも凝った仕様は採用しにくいという制約もある。しかし今回はこの3点を専用モデルとすることで、例えばヘッドホンアンプ側にアクティブクロスオーバー回路を搭載することでドライバーのマルチ駆動を実現、よりダイレクトな音を目指したという。
まずイヤホンは、L/Rそれぞれに5ウェイ8ドライバーを搭載した。超高域用にはMEMSを1基、高域用と中域用にBAドライバーを各2基、中低域用もBAドライバーが1基で、低域用には8mmダイナミック型ドライバーが2基という構成だ。これらのドライバーを3Dプリンターで成形した、音導管一体型ユニットホルダーに取り付けることで、100kHzに渡る周波数特性を実現している。
ふたつの8mmダイナミックドライバーの振動板にはLCP(液晶ポリマー)が使われており、その8mmドライバーはOFC金メッキされたリングの両端に対向配置された。これによりユニットの振動を抑制し、低歪みを実現している。イヤホン本体は純チタン製で、表面には時計などでも使われているPVDブラックコーティングが施されている。
そのイヤホンを駆動するための専用ポータブルアンプは、スマホほどのサイズで、厚みは33mm。上側にはイヤホン用L/Rコネクターと4.4mmバランス&3.5mmアンバランスのアナログ入力(自動切り替え式)が、その反対側には充電用USB Type-Cコネクターが設けられている。
内部のメイン基板は2階建て構造で、1階部分が4層のリニア電源、ボリュウム回路など。基板上の銅箔には2オンス(通常の2倍厚)のタイプが使われている。2階部分は8層1オンス基板で、こちらにはパワーアンプやクロスオーバーなどが配置された。各基板と端子などの間は純銀製ケーブルでつながれている。
各チャンネルの干渉を防ぐために電源回路の分離も徹底され、片チャンネルあたり7系統の電源を備える(パワーアンプ用×2、アクティブクロスオーバー用×2、差動ラインレシーバー&電子ボリュウム、MEMSバイアス用)。
ケーブルはFUGAKUのために開発された、オリジナル7接点コネクターを採用したUltimateグレードで、導線は16芯の高純度銀製(片方あたり8芯)という。新開発した純銀線材を使うことで、多芯ながら高い柔軟性と使い勝手、優れた音質を実現しているそうだ。
春のヘッドホン祭2024の同社ブースでFUGAKUの音を体験させてもらった。ウォークマンのバランス出力をアンプ部につないでヴォーカルやビックバンドなどの楽曲を再生したが、音場空間の静かさと広さに驚いた。声や楽器がひじょうになめらかに再現され、また音像の定位もクリアーだ。
何かの音が強調されているとか、演出しているといった印象はなく、高域から低域まで自然に聴かせてくれる、そんなサウンドだ。同社では、「持ち運びが可能な、私達の思う究極のポータブルオーディオシステム」としてFUGAKUを企画したそうだが、その思いがよくわかる仕上がりだと感じた次第だ。