エミライは、同社が輸入販売を手掛けているNoble AudioとxMEMS Labsが戦略的パートナーシップを締結したことを発表。先日その詳細についての説明会を開催した。

 xMEMS Labsは2018年に創業し、完全ワイヤレスイヤホンやAR/VR用スマートグラス、補聴器などの分野で新しい技術のマイクロスピーカーを製造してきた。2020年7月には世界で初めてMEMSスピーカーを開発している。

画像: xMEMS Labsは、イヤホンや補聴器などのマイクロスピーカーを手掛けるメーカーとのこと。右上のイラストはピエゾ素子の動作を図解したものです

xMEMS Labsは、イヤホンや補聴器などのマイクロスピーカーを手掛けるメーカーとのこと。右上のイラストはピエゾ素子の動作を図解したものです

 そのMEMSスピーカーとは、ピエゾ(圧電)素子を使ったデバイスで、電圧をかけることで変形するという特徴を持っている。xMEMSのスピーカーではこれを利用して音楽信号に合わせてピエゾ素子を動かし、空気振動を発生させる仕組みだ。

 デバイス自体は縦型の開口部を備えて、ここに2枚のピエゾ素子(片側を固定し、中央部で別れている)が取り付けられている。ピエゾ素子は通常はやや上側にそっているが、電圧をかけるとこれがまっすぐになるので、この振動で発音ができるということだ。

 説明会ではまず、エミライの取締役である島 幸太郎さんが今回のパートナーシップについて説明してくれた。

 Noble AudioはBAドライバーを複数使った高級インイヤーモニターを作るメーカーとして高い地名度と人気を博し、日本でも高い人気を集めていた。そんな同社が10mmダイナミックドラーバーと5基のBAドライバーを搭載したハイブリッドタイプの有線イヤホン「KHAN」を2019年に発売、新しいリファレンスモデルとして注目された。

画像: 現在のMEMSスピーカーのラインナップ

現在のMEMSスピーカーのラインナップ

 このモデルを契機にNoble Audioとしての複数のドライバーの長所を生かした音作りに取り組み、設計ポリシーもそれに合わせて変化してきたそうだ。さらに近年はBAドライバーの入手が困難になってきたこともあり、新しいドライバーを使った音作りへの挑戦を始めていたという。今回のxMEMSとのパートナーシップも、こういったNoble Audioとしての取り組みの成果とのことだ。

 ちなみに島さん自身は今年のラスベガスCESのプライベートブースでxMEMSのドライバーの音を聴いたという。もちろんこのデバイスには以前から興味を持っていたそうだが、最終製品の音を聴いて、これまでのイヤホンとは一線を画する高音質体験ができる魅力的なデバイスだと感じたそうだ。

 さらに島さんの印象では、xMEMS Labsのメンバーは音楽を作るということに対してもセンスを持っており、オーディオファンの気持を分かる土壌があると感じたとのことだ。

 先のポタフェスで参考出品されたNoble Audioの新製品「FALCON MAX」はそんなxMEMSのドライバーが搭載されたことも注目ポイント。説明会ではこちらのデモ機も借用できたので、その音質については近々ご紹介する。

画像: xMEMS Japan合同会社 副社長のマーク・ウッドさん

xMEMS Japan合同会社 副社長のマーク・ウッドさん

 続いてxMEMS Japan合同会社 副社長のマーク・ウッドさんが登壇し、同社の現状について紹介してくれた。上記の通りxMEMS Labsは今年で創立6年目の新しい会社だ。

 同社が最初に発表したMEMSスピーカーは2020年の「Montara」で、翌年から量産をスタートしている。続いて「Cowell」がリリースされ。こちらが上記のFALCON MAXに搭載されたという。さらにこれらより大型の「Montara Plus」も今年後半にリリースされたそうだ。

 現在は「Cypress」という、アクティブノイズキャンセリングイヤホンに向けたフルレンジタイプの大型MEMSスピーカーも開発中で、こちらは20Hzの低域まで再生できるデバイスだという。W6.5×H6.3×D1.65mmというサイズだ。

 また「Skyline」と名付けられた世界初のベントタイプのMEMSデバイスもラインナップしているという。こちらはDSP制御によりベント(排出口)が開閉するもので、これをイヤホンのポート部に取り付けて開閉することで、外音取り込みの調整に使おうという発想だ。BGM的に音楽を聴きたいが、周りの音(自宅内での会話など)も聴こえなくてはならないといった場合にはベントを開けておけばいいわけで、案外便利に活用できるかもしれない。

画像: 写真中央のデバイスがFALCON MAXに搭載されたCowellで、右側の丸い基板はアンプユニット

写真中央のデバイスがFALCON MAXに搭載されたCowellで、右側の丸い基板はアンプユニット

 マークさんによると、MEMSドライバーには多くのメリットがあるという。その第一が製造しやすく、製品のばらつきも少ないこと。半導体プロセスを使って直径8インチのシリコンウェハーで製造でき、それをひとつずつカットすればいいというわけだ。さらにデバイスの大型化、高感度化もやりやすいという。大量生産できるようになればコストも抑えられる。

 またデバイスとしての位相特性が揃うので、イヤホンなどの左右ペアで使う場合でも選別が容易であること、レスポンスが早いこと(通常のコイルスピーカーの100倍)、ショックにも強く、落っことした場合でも壊れにくいことなどもメリットという。本体サイズもCowellではW6×H3.2×D1.15mmと、BAドライバー以上にコンパクトで、さらに軽いという特長を備えている。

 既報の通り、xMEMSのドライバーを搭載した完全ワイヤレスイヤホンとしてはクリエイティブメディアから「Creative Aurvana Aceシリーズ」が2モデル発売されており、そこにNoble AudioのFALCON MAXが加わるなど、今後も製品数は増えていくことだろう。

 またMEMSスピーカーは複数個並べて駆動すればトゥイーターのような使い方もできるとのことで、イヤホンに限定しない様々な製品への応用も期待したい。

画像: 大型サイズのMontara Plus

大型サイズのMontara Plus

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