生贄の少女を救え、ドラゴンスレイヤー! 正義と勇気の力で・・・

ドラゴンスレイヤー 1981年

監督 マシュー・ロビンス
製作 ハル・バーウッド
製作総指揮 ハワード・W・コッチ
脚本 マシュー・ロビンス ハル・バーウッド
撮影 デレク・ヴァンリント
特撮 ブライアン・ジョンソン デニス・ミューレン ILM
音楽 アレックス・ノース
出演 ピーター・マクニコル ケイトリン・クラーク ラルフ・リチャードソン アルバート・サルミ
   ジョン・ハラム ピーター・アイア シドニー・ブロムリー イアン・マクディアミッド

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『ファンタジア』の『魔法使いの弟子』や『聖ゲオルギオスと竜』の伝説から発想を得たが、より真実味を与えるために中世の伝統的な概念を拒否した。そこで私とマシューは、キリスト教が伝わる前、イギリスにおけるローマ支配の終焉後に舞台を設定した。輝く甲冑を着た騎士も、風になびくペナントも、塔のある城から揺れる透き通ったベールをかぶった繊細な女性も、宮廷の愛も出てこない。その代わりに、人びとは迷信に染まり、生活は原始的で、奇妙な価値観と風習にあふれた世界を創造した。(製作・共同脚本 ハル・バーウッド)

1980年初頭、パラマウントがファン層拡大のため、ウォルト・ディズニー・プロダクションズと共同製作した作品(2作品を共同製作/もう1作は『ポパイ』)。パラマウントが北米配給を担当、国際配給をディズニーのブエナ・ビスタ・インターナショナルが担当した(但し日本では未公開)。物語の舞台は6世紀、後期古代(ポスト・ローマ期)の王国であるウルランド。最後の魔法使いの遺志を継いだ若き弟子が、この国を脅かす齢400歳の凶暴なるドラゴン、ヴァーミスラックス・ペジョラティブ退治に挑む姿を描いたダーク・ファンタジーである。

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公開当時、ディズニー・フランドということもあり、他愛無いファンタジーと思い込んだ年配の観客の足を遠のかせてしまった。同時期に公開された『エクスカリバー』『タイタンの戦い』のヒットも不運に拍車をかけた。だが私を含めて一部の熱狂的な観客は、本作が大人の鑑賞に堪え得る冒険物語であり、映像の魔法を呼び起こす視覚効果のランドマークであることを見出していた。(映画監督 ギレルモ・デル・トロ)

『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の驚異的な成功により、大人も子供と同じように魔法使いとドラゴンと戦う映画を楽しむ扉が開かれ、HBOの『ゲーム・オブ・スローンズ』はより直接的に大人の観客を魅了した。本作『ドラゴンスレイヤー』は『ロード~』『ゲーム~』といったプロジェクトの先駆けであり、経済的にも芸術的にも成功の域に達しなかったものの、多くの映画ファンを魅了し続け、いまでも高い評価を得ている作品なのである。

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監督・脚本(共同)はオスカー候補となった『続・激突!/カージャック』や『クリムゾン・ピーク』等のギレルモ・デル・トロ作品の脚本、『コルベット・サマー』『ニューヨーク東8番街の奇跡』の監督で知られるマシュー・ロビンス。主演は『ソフィーの選択』『ビーン』のピーター・マクニコル。

特殊効果をルーカスフィルム作品以外では初めて ILM が担当。フィル・ティペットが『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』のために開発したゴー・モーションを採用、アカデミー視覚効果賞にノミネートされている(受賞は同じくILMの『レイダース失われたアーク《聖櫃》』)。ちなみに油圧式の40 フィート(12 m) モデルを含むドラゴンは、撮影目的に合わせた16 体で構成される。

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撮影は『エイリアン』のデレク・ヴァンリント。パナビジョン・スーパーR-200 SPSR(パナビジョンの傑作SRSをアップグレード)及び軽量整音パナフレックス・ゴールド(パナフレックス・シリーズの光学系をアップグレード)撮影。ちなみにヴァンリントは本作撮影以降、長らくCM撮影の仕事に従事。2000年に『チャイルド・コレクター/溺死体』を監督(兼撮影)するが、長編劇場映画を撮影したのは『エイリアン』『チャイルド~』と本作のみ。

デレクはローライトレベル(低照度)撮影の達人だった。彼は厳格な光源主義者で、シーンによってはセットの光量がセルロイド(フィルム)を通した光量になることも提案した。フィルムストックはコダック5247の100ASAで、T2.3-2.8という小さなイメージセンサーを使い、絞りを大きく開いて撮影した。デレクは誰よりもアナモフィックレンズから多くのものを絞り出していたと思う。特にCシリーズのアナモフィック・プライムレンズ(パナビジョン)を組み合わたフレアとボケ味は効果的だった。常に私たちは、フォーカスマークに指関節を噛むような精度で、盤石なサポートを提供するというプレッシャーに晒されていたけれどね。 (ニック・シュレシンジャー/アシスタント・カメラマン)

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本作は2003 年のDVDリリース以降パッケージソフト化されておらず、20年後の今年になってUHD BLU-RAY/BLU-RAY化となった(* BLU-RAYはパッケージにバンドルされていない/別売)。『本作の映像修復/HDRリマスター、サウンド修復/ドルビーアトモス・リミックスは、パラマウント傘下のパラマウント・デジタル・ポスト・サービスが担当している。

監督ロビンス監修・最終承認を経た、35mmオリジナルカメラネガからの最新4Kデジタルレストア/HDRグレード版。HDRはHDR10とドルビービジョンをサポート。4Kリマスターのためにデジタルツールを使用した視覚効果の再調整、たとえばパペットやゴーモーションのミニチュアをCGIに置き換えるような作業は行われていない。一部の視覚効果ショットでは、盛大に表出するマットラインや、その他の小さなエラーが補修されたというが、初見ではまったく視認できないレベルだ。

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映像とサウンドの修復に携わったマシュー・ロビンスは、1981 年にこの映画がどのように見え、どのように聴こえるべきだったかを思い返していた。彼は専門知識を提供し、映像とサウンドのリマスターに祝福を与えてくれた。真にあるべき命を吹き込まれて、この作品が喜んでいることは間違いない。(リズ・カークシー/パラマウント・デジタル・ポスト・サービス)

これまでLD、DVDリリースのみのため比較対象がないが、洗練されたディテイルとテクスチャを備えたゴージャスな画像が得られている。パラマウントが4Kリマスターに多大な誠意を持って取り組んだことは明らかだ。ソフトフォーカス撮影、ミストフィルターの使用によって先鋭感は抑制されているが、これが本作の画調であり、光学処理ショットの軟度との整合性も説得力がある。粒子感は軽量安定、ナイトショットや低照度ショットでわずかに量感を増す。

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HDR WCG(広色域)の適用により、映画のテーマのインパクトを浮き彫りにし、シンプルに強調。その恩恵は広範におよび、豊かな彩度を露わにしつつ、黒は深く、大胆なハイライトを備えている。屋外ショット(北ウェールズ)の緑と茶系色の表現力、低照度ショットの明瞭度と解像感も優秀。キリスト教が徐々に異教を侵食する以前の、魔法や超自然的な現象が闊歩する世界。この世界にタイムリープし、その場に居合わせる感覚を楽しまれたい。

『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』『ロジャー・ラビット』のプロダクション・デザイナーであるエリオット・スコットの造形再現も観ごたえたっぷり。なかでも実在する13世紀のドルウィデラン城を、荒廃した6世紀の城塞に(一時的に)改造したお手並みは観どころのひとつとなろう。

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音響エンジニア(サウンドデザイン/リレコーディングミキサー)は『地獄の黙示録』『2010年』『ヤング・フランケンシュタイン』のダール・シュトリュンペル。ドル​​ビーステレオ35mmトラック上映作品。一部劇場でドルビーステレオ70mm 6トラック、短命に終わった4トラック・ビスタソニック・サラウンド上映(『ポパイ』がパラマウント・ビスタソニック第1弾)。

ドルビーアトモスの効果は予想以上だった。『アラビアのロレンス』のような昔のスペクタクル映画が、ドルビーアトモスでリミックスされて成功しているのを知っていたので、慎重にやればこの作品でも上手くいくと思っていた。いつも頭の中にあったのは、プレミア上映された70mm 6トラックのサウンドの再現だった。そのために、新たなサウンドを追加したりせずに、できる限りのことをやろうと思った。(マシュー・ロビンス)

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LDやDVDで本作のシネソニックを聴いてきた人にとって、ドルビーアトモス・ミックスがいかにアクティブであるかに感銘を受けるはず。(最新作と比較するのは酷だが)ロスレス化の恩恵は多大で、とりわけミッドレンジが充実、分解能と明瞭度が大幅に改善されている。ローエンドも強化され、アグレッシブなサラウンドとともにクライマックスの洞窟戦に本格的なパワーを加えている。

台詞、効果音、音楽のバランスも優秀。トップスピーカーの使用頻度は決して多い方ではないが、映画のムードを高めるアクティビティが豊富にあり、サウンドステージの拡張と没入度を高めている。前述のようにさまざまなトラックで劇場公開された本作のサウンドが、ドルビーアトモスでリミックスされたのは必然のように思える。一方で、ドルビーアトモス一択という点が残念でもあるが。

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音楽は『スパルタカス』『クレオパトラ』『バージニア・ウルフなんかこわくない』などで知られる巨匠アレックス・ノース(生涯15回のオスカー・ノミネート/1985年名誉賞受賞/本作でもノミネートされている)。『2001年宇宙の旅』で未使用だった楽曲を再構築したオープニング曲を含め、不穏なムードの教会旋法が支配する、透明でポリフォニックな楽曲を響かせる。残忍でパワフルな金管、甲高い木管楽器、残忍な金管の和音、斜めに切り裂くような不協和音、暗鬱極まりない無調のノイズなどなど、聴きどころに尽きない。もちろんアトモスとの相性も良好だ。

画像: DRAGONSLAYER - OPENING CREDITS(4K) youtu.be

DRAGONSLAYER - OPENING CREDITS(4K)

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アレックス・ノースは誰もが認めるハリウッドのトップだった。彼はプロデューサーのハル・バーウッドに乞われて仕事を受けたのだが、映画に「通常の」ファンタジー映画とは異なるサウンドを与えた。ふたりは、セルゲイ・プロコフィエフの作品が音楽の出発点となるべきである、ということで意見が一致していた。ノースが最終的に届けたものは、誰もが少なくとも一度は聞くべき、素晴らしく、捻じれて、暗く、不協和音の、そして美しいホラー・ファンタジーのスコアだった。(ジューン・エドガートン/音楽編集)

UHD PICTURE - 4.5/5  SOUND - 4.5/5

画像: 4K SCREEN CAPTURE 映像平均転送レート 49262 kbps(HDR10)| 3475 kbps(DOLBY VISION 7.1%) 音声平均転送レート 5477 kbps(Dolby Atmos | 48kHz | 24bit)

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映像平均転送レート 49262 kbps(HDR10)| 3475 kbps(DOLBY VISION 7.1%)
音声平均転送レート 5477 kbps(Dolby Atmos | 48kHz | 24bit)

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