世界各国から集結し、謎のミッションに命を懸けるスペシャリストたち ー
彼らは "RONIN" と呼ばれた

RONIN 1998年

監督 ジョン・フランケンハイマー
製作 フランク・マンキューソ・Jr
製作総指揮 ポール・ケルメンソン
脚本 J・D・ザイク リチャード・ウェイズ
撮影 ロバート・フラッセ
音楽 エリア・クミラル
出演 ロバート・デ・ニーロ ジャン・レノ ナターシャ・マケルホーン ステラン・スカルスガルド 
   ショーン・ビーン スキップ・サダス ジョナサン・プライス ミシェル・ロンズデール

画像1: 4K SCREEN CAPTURE

4K SCREEN CAPTURE

冷戦終結後、還るべき組織を失った各国の諜報部員たち。5人の男たちは、報酬のため、己のプライドのため、雇い主もわからぬ仕事の依頼を受けてパリの街に集結した。互いの素性も知らない彼らに与えられた指令は、謎のアルミニウムケースの奪還であった。

監督はジョン・フランケンハイマー。フランケンハイマーは認めたくないであろうが、実のところ彼自身と登場人物たちは共通点を持っている。彼は60年代の『終身犯』『影なき狙撃者』『5月の7日間』『大列車作戦』『グラン・プリ』『セコンド』、さらに70年代の『フレンチ・コネクション2』『ブラック・サンデー』など、雄渾の作風で観客を驚かせた。だが80年代以降の作品は往年の力量はなく、映画界からも忘れ去られたかのようなフランケンハイマーは、まさにRONINであった。その彼が90年代にアクション佳篇を送り出した。撮影当時、68歳。その4年後、永眠。

『大列車作戦』『グラン・プリ』『ストーリー・オブ・ア・ラブストーリー(日本未公開)』『フレンチ・コネクション 2』と、私はフランスで多くの映画を撮ってきた。フランスは私にとって第二の祖国のうようなものだ。その親近感が本当に役に立った。撮影したい場所はほぼすべて頭の中に入っていたからね。(ジョン・フランケンハイマー)

画像2: 4K SCREEN CAPTURE

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1997年、フランケンハイマーはTVミニシリーズ『ジョージ・ウォレス/アラバマの反逆者』で復調をみせる。続いて挑んだ劇映画が本作である。脚本は新人ジョン・デヴィッド・ゼイク。15 歳のときにジェームズ・クラベルの小説『ショーグン』を読んだ後、本作のアイデアを思いついたという。

脚本の練り直しには劇作家デヴィッド・マメットが雇われ(リチャード・ウェイズのペンネーム)、とくにデ・ニーロの役割を拡大・改訂。劇中、仕事の依頼の真相は一貫して謎のままであり、サスペンス映画のマクガフィン(登場人物への動機付けや、話を進める為に用いられる仕掛け)としたのもマメットのアイデアだ。演出にあたってフランケンハイマーは好調さを維持。張り詰めた心理的緊張、予期せぬ裏切り、爆発的なアクションを巧みに扱い、名匠としての覇気と気骨をみせたのも嬉しい。

まず『グラン・プリ』を再現したかのようなカーチェイスが素晴らしい。そして何よりアンサンブルキャストを賞賛したい。多くの評論家が指摘するように、ジャン=ピエール・メルヴィルの作品、とくに『サムライ』の影響も大きい。世界に疲れた、実存主義的なアンニュイが欠けてはいるが。(トッド・マッカーシー/バラエティ誌)

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撮影は『愛人/アマン(オスカー候補)』『セブン・イヤーズ・イン・チベット』などのジャン=ジャック・アノー作品や『きみに読む物語』で知られるフランス人撮影監督ロバート・フラッセ(世界初のIMAX 3D映画『愛と勇気の翼』も彼の作品)。本作ではアクション・シークエンスを撮影するセカンドユニットの監督とカメラマンがいなかったため、メインユニットの撮影終了後、フランケンハイマーとフライスがさらに 30 日間の撮影を行っている。

スーパー35方式/35mm撮影(上映プリントはアナモフィック/インターネガを作成しながらフィルムをアナモフィックに再フォーマット)。2.39:1スコープサイズ収録。本作は2017年にアロー・ビデオから4KデジタルレストアBLU-RAYがリリースされているが、デラックス社傘下/EFILMによって新たに4Kスキャン(16ビット)/デジタルレストア、およびHDR/SDRグレードを実施(同梱のBLU-RAYも同・4Kレストアマスターを使用)。HDRはHDR10とドルビービジョンをサポート。

ジョン・フランケンハイマーはCCEプロセス(デラックス独自の残銀処理プロセス)に夢中になり、彼は『RONIN』で使用した。だがCCEショープリントは数量が限られており、リリースの大部分は通常のプリントだった。ロバート・フライスは撮影の段階から強靭で豊かなネガを提供してくれたので、CCEの外観を明確に知っている技術者が2種類のプリントを並べて比較しない限り、その違いに気付かないくらいの完成度だった。(ビバリー・ウッド/デラックス・テクニカル・サービス副社長)

画像: 2007 20TH CENTURY FOX BLU-RAY(JAPAN)

2007 20TH CENTURY FOX BLU-RAY(JAPAN)

画像: 2017 ARROW VIDEO BLU-RAY

2017 ARROW VIDEO BLU-RAY

画像: 2023 KINO LORBER UHD BLU-RAY

2023 KINO LORBER UHD BLU-RAY

2007年FOX/MGM BLU-RAY(同・国内版/MPEG2)や前述の2017年アロー・ビデオBLU-RAY(MPEG4/AVC)との比較では、ディテイル描画と色再現の大幅なアップグレードを視認できる。フランケンハイマーは解説の中で、デラックス/CCEプロセスで現像したフィルム素材をグレーディング・リファレンスとして使用したと述べており、これにより(フランケンハイマーが語る)「黒の強調」「原色と色相の抑制」を施し、彩度が低く、明暗を強調したルックスを再現している。

粒子感は軽量、かつ有機的な手触りがある(窓のハイライトにわずかな破綻あり)。ディテイル描画は豊かで説得力があり、明瞭度も高い。厳正なテクスチャリングが施されており、実景ロングショットの再現力も高まっている。フライスとフランケンハイマーは広角レンズを多用し、頻繁にディープフォーカス操演を行っているため、前景のアクションと同様、重要なアクションが後景で起こる頻度が高い。このレンズ操演を楽しむのが観どころのひとつとなっており、前景に配置されたクローズアップから、多様な広角ショットとその深い焦点に至るまで、全体的なシャープネスも一級品だ。

画像4: 4K SCREEN CAPTURE

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残銀処理されて色彩が抑制された画像ではあるが、それでもさまざまな色合いや陰影には精細なニュアンスと繊細さがあり、特にニースでのショットに顕著。低照度ショットでは拡張されたコントラストが効果を上げ、陰影は堅牢、多くのディテイルが陰影内に再現され続けている。大胆な仕上がりのハイライトも優秀だが、オーバーシュート(輪郭の縁取り/数ショットのみ)の表出が惜しまれる。

ジョンは「ショットは短く、焦点距離も短くしたい。ルポルタージュのように、実際に起こっていることを撮影しているかのように見せたい」と望んでいた。そのため洗練された映像にはしたくなかった。その代わりに雰囲気を伝えようと努めた。ジョンは多くの色も望んでいなかったので、セット、外装、衣装の色をできる限り避けた。フィルムはコダックの Vision 500T/5279(ASA感度500)を使用した。冬の間、5 時に暗くなるフランスで撮影することがわかっていたので、できるだけ遅くまで撮影できるようにする必要があった。そのためASA500 ストックを使用した。通常、5279 を使用するのは、ステージやロケーションの室内、または屋外の夜景を撮影する場合のみだ。そしてジョンの望む画像を提供するために、1ストップ露光オーバーで撮り、控えめに減感現像し、コントラストと色の彩度を下げることにした。フィルターは一切使っていない。(ロバート・フラッセ)

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音響エンジニアは『欲望』『大いなる眠り』『U・ボート(オスカー候補)』のマイク・ル=メア(サウンドデザイン/音響編集監修)『グッドフェローズ』『ヒート』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のデール・バートレット(サウンドデザイン)『大統領の陰謀(オスカー受賞)』『バード(同)』『許されざる者(オスカー候補)』のリック・アラクサンダー(リレコーディングミキサー)。DTS-HDマスターオーディオ5.1と同・2.0ステレオトラックを収録。

2017年アロー・ビデオBLU-RAYはFOX/MGM BLU-RAYトラックのリユースであったが、本盤では新たにエンコードされた5.1/2.0トラックを採用している。基本的にはBLU-RAYトラックと近似してはいるものの、総じて分解能と明瞭度が高まっており、満足のいくシネソニック体験を約束する。

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聴きどころはやはりアクション・シークエンスであり、攻撃的で没入度の高いカーアクション・サウンドは必聴。サラウンドの演出や動きはエネルギッシュ。衝突音や爆音の優れた低音レスポンスが得られ、銃弾エフェクトが飛び交うさまは、まるでアクションを音で振り付けるかのようだ。

ジェリー・ゴールドスミスの降板は残念だったが、(チェコ系スウェーデン人の作曲家)エリア・クミラルの起用は正しいものだったと思う。大部分はシンセサイザーと金管楽器によるものだが、(アルメニアの民族楽器)ドゥドゥクを使った楽曲は、珍しいながらも効果的な選択であり、現代スリラーの規範の中で『RONIN』の独特の位置を確立することに成功している。(ジョン・ホワイノット/スコア・ミキサー/『ラスト・オブ・モヒカン』)

UHD PICTURE - 4.5/5  SOUND - 4.5/5

画像: 4K SCREEN CAPTURE 映像平均転送レート 68398 kbps(HDR10)| 19209 kbps(DOLBY VISION 28.08%) 音声平均転送レート 2631 kbps(DTS-HD Master Audio 5.1 | 48kHz | 24bit) 1628 kbps(DTS-HD Master Audio 2.0 | 48kHz | 24bit)

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映像平均転送レート 68398 kbps(HDR10)| 19209 kbps(DOLBY VISION 28.08%)
音声平均転送レート 2631 kbps(DTS-HD Master Audio 5.1 | 48kHz | 24bit)

         1628 kbps(DTS-HD Master Audio 2.0 | 48kHz | 24bit)
画像: RONIN - THE ARROW VIDEO STORY(2017) youtu.be

RONIN - THE ARROW VIDEO STORY(2017)

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