越川道夫監督の最新作『さいはて』が、5月6日(土)より公開となる。孤独を抱えた男女の逃避行を、細やかな機微を交えて描いた注目作だ。果たしてその二人はどこへ向かうのか? ここでは謎多き女性・モモを演じた北澤響にインタビュー。主演の感想から、現場での苦労、今後の抱負まで聞いた。

画像1: 「北澤響」の主演作『さいはて』が公開へ。「劇中の二人と同じ時間の流れを感じて、二人の“さいはて”を見届けてほしい」

――よろしくお願いします。まずは、主演作の公開を迎える心境をお聞かせください。
 ありがとうございます。すごく嬉しいです。

――撮影前にプレッシャーは感じていましたか?
 もちろん緊張とか不安はありましたけど、映画はずっと出たかったものなので、それ以上に楽しみっていう気持ちの方が強かったです。

――楽しみは、ワクワクとドキドキで言うと。
 やはり入る前はドキドキの方が強かったですね。でも、やりたいっていう気持ちの方が勝っていました。

――最初に台本を読んだ時はどのような感想を持ちましたか?
 不思議な言葉遣いをしているなというのと、少しネタバレっぽくなってしまいますけど、ラストの展開が変わっていて、これをどう表現するんだろう、どういう映像になるんだろうっていう楽しみが、すごくありました。

――作品からは、70年代風なイメージを受けました。
 私は現代だと思っていました。いつの時代にも当てはまるような、普遍的な人間像を描いている。そう受け取っていました。

――演じられたモモ役については?
 真っすぐな子だなと感じましたし、実際に映像が出来上がってみると、想像以上に全力疾走している雰囲気がありました。

――全力疾走とは?
 台本を読んで、私なりのモモ像を考えてから撮影に臨みましたけど、現場に入ってみると、モモの輪郭がよりしっかりしてきたという感覚が強くありました。トウドウ役の中島(歩)さんと一緒にお芝居していく中で、また、越川監督と交わした言葉の中で、(モモ像が)しっかり生まれていったというイメ―ジですね。私が作ったものがそこに出ているというものではなくて、みんなで作ったものが息づいている、と。

――その輪郭がしっかりしたというのを、全力疾走していると感じた?
 はい、そうです。

――現場で、その疾走感は味わえた?
 現場に入る前に監督から、今持っているもの全てを持ってきてほしいと言われていたので、それを踏まえて全力で演じましたけど、完成した映像を客観的に見たら、なんですかね、自分の想像を超えて、自分で見ていて恥ずかしくなるくらい全力疾走していたなっていう感じです。

――全力ということで言えば、後半、トウドウと喧嘩別れして、一本道を歩いているモモの姿は、ものすごく感情が高ぶっていて印象に残りました。
 ありがとうございます。その時点では、モモの輪郭も大分でき上っていて、思ったよりもすんなりできました。

――その疾走感とも絡むかもしれませんが、物語が進むにつれて、モモが主導権を握っていくように見えました。
 台本を読んでいる時は、関係性が逆転することについてはあまり意識していませんでしたけど、現場に入ってから、それを強く感じるようになりました。ここはモモがすごく引っ張って行くことになる、という感じです。ただそれも、現場に入ってから自然に生まれてきたものなので、やはり、一緒にお芝居していく中で、そういう関係性が醸成されていったのだと思います。舞台の経験が多いこともあって、自分で作るよりは、みんなで一緒に作り上げる方が好きというか、得意なんだろうと思います。

――あと、後半に出てくる「手を繋がなければよかった」というセリフも印象に残りました。
 手を繋ぐというか、人の肌に触れるっていうこと自体がもう、結構大きいことだと思います。実は、最初、飲み屋でトウドウと出会った時に、モモの方から先に(トウドウの)手を取るんです。二人とも大きな孤独を抱えていて(人間はみんな孤独だと思いますけど)、モモはその匂いを(トウドウから)感じ取ったのだと思っています。

画像2: 「北澤響」の主演作『さいはて』が公開へ。「劇中の二人と同じ時間の流れを感じて、二人の“さいはて”を見届けてほしい」

――そう伺うと、その後の展開の理解がより深まりました。ところで今回トウドウ役の中島さんと共演してみていかがでしたか?
 すごく演じやすかったです。また、私が苦戦しているところでは、積極的にアドバイスをいただきました。

――具体的には?
 後半の食堂のシーンです。そこはこの作品の中で、一番苦戦しました。あまり言うとネタバレになってしまうのですが、ストーリー的に、トウドウをそこ(お店)に引き留めないといけないシーンなのですが、どうしても引き留められない……。(引き留めようとする芝居に)すごく苦戦しました。

画像3: 「北澤響」の主演作『さいはて』が公開へ。「劇中の二人と同じ時間の流れを感じて、二人の“さいはて”を見届けてほしい」

――話は変わりますが、劇中では二人の過去が少しずつ語られます。モモの過去のシーン――両親との出来事の撮影はいかがでしたか。
 台本を読んだ時にも強く感じましたけど、実の両親ですから、無碍にもできないし、イラっとすることもあるだろうし、特にあの両親との関係性の表現って、すごく難しいなって思いました。でも、やはり一緒に演じる中で、実際に動いてみて、その複雑な気持ちになれたのは、良かったと感じています。

――少しネタバレになりそうな質問をしますが、ラストの展開はどのように感じましたか?
 そこはやはり、観て下さる人にお任せしたいと思っています。観る人によって、色々な捉え方ができる映画だと思いますし、それこそが魅力だと感じています。だから、悲劇に見える人もいれば、喜劇に見える人がいるかもしれない。二人はどうなるのか? 色々な想像を膨らませることができる素敵な作品だと思うので、観て下さった方々の中での“さいはて”を見つけていただきたいです。ぜひ、モモとトウドウと一緒の時間の流れを感じてほしいですし、二人のさいはてを見届けてほしいです。

画像4: 「北澤響」の主演作『さいはて』が公開へ。「劇中の二人と同じ時間の流れを感じて、二人の“さいはて”を見届けてほしい」

――少しプライベートなことについて伺います。芸能界に入ったきっかけを教えてください。
 高校の時に演劇を始めたのがきっかけですね。もともとドラムがやりたくて、ドラムをできる高校に進学したんですけど、必修科目を、演劇・ダンス・ボーカルの中から選択しなくてはいけなくて、なんとなく面白そうな演劇を選んだら、それが思いのほか楽しくて! そのまま楽しいのでずっと続けている、という感じです。

――その後ドラムは?
 まったくやっていません(笑)。結局、演劇の方が楽しくなってしまって、もうずっとのめり込んでいます。

――これからの女優としての展望は?
 今回、中島さんと共演させていただく中で、中島さんは一緒にお芝居をしてくれる方だという実感がすごくありましたので、私もそういう風に、共演した人に、この人とじゃなければ作り上げられなかった、と思ってもらえるような役者になりたいです。ずっと芝居を追求し続けていける人、になりたいです。

――今年は年女ですが、やってみたいことがあればお願いします。
 今年は、自分で企画した舞台をやってみたいです。物語を作れるかどうか分かりませんが、自分が引っ張っていく何かを作りたい。自分が動くものを作りたいと思っています。頑張ります。

画像5: 「北澤響」の主演作『さいはて』が公開へ。「劇中の二人と同じ時間の流れを感じて、二人の“さいはて”を見届けてほしい」

映画『さいはて』

5月6日(土)より K’s cinemaにて公開 ほか全国順次ロードショー

<キャスト>
北澤響 中島歩
金子清文 美香 杉山ひこひこ 君音 内田周作

<スタッフ>
監督・脚本:越川道夫 製作:村上潔 プロデューサー:山口幸彦 製作:キングレコード 制作:スローラーナー 配給:キングレコード 宣伝:ブラウニー
(C)2023 キングレコード

ヘアメイク:稲月聖菜(MARVEE)
スタイリスト:矢野恵美子

This article is a sponsored article by
''.