NHKはこの4月からBS4Kの番組内容を大幅に拡充する。既報の通り、同社では今年12月に衛星チャンネルの再編成を予定しており、今回の拡充はそれを先取りしたもの。まずは人気番組の『ワイルドライフ』を90分枠で放送することになった。

画像: 美しいオーロラも8Kで撮影されている

美しいオーロラも8Kで撮影されている

 そして先日、新年度第1回でオンエア予定の「ワイルドライフ アラスカの光と風 -星野道夫✕大竹英洋 時を超える旅-」の4K試写会が行われた。当日はNHK放送センター内の421オーディションルームで上映、スクリーンサイズは400インチ、音声はムジーク・エレクトロニクガイザインのスピーカーによる2ch再生だ。

 会場には旅人として番組に出演している写真家の大竹英洋さんと、制作統括の早川正宏さん、ディレクターの原田美奈子さんも同席し、撮影時の苦労話も紹介してくれた。

 早川さんによると、「ワイルドライフ」はこれまでに400本以上放送されてきた人気番組だという。今後は上記の通り衛星チャンネルの再編に向けてスケールアップ、美しい自然の映像の紹介に加えて、ストーリーテリングにも磨きをかけていくそうだ。

 「アラスカの光と風〜」は、早逝した写真家・星野道夫さんの足跡を、星野さんに憧れて写真家になった大竹さんが辿るドキュメンタリーだ。

画像: アラスカの大地を覆うトナカイの群れ

アラスカの大地を覆うトナカイの群れ

 番組自体はこの2月にBS8Kで放送されたものと同じで、撮影も8Kカメラで行われている。そこから4K変換したというだけあって、映像はきわめて緻密でクリアーだ。作品中には星野さんや大竹さんの静止画写真も多く出てくるが、そのいずれもディテイル情報に溢れ、色の鮮やかさも印象に残る。

 特にトナカイの移動のカットなど、画面内に数えきれないほど写っているトナカイについて、どれが親でどれが子供かといった、体の大きさまではっきり識別できるくらいの解像感を備えていた。

 内容もとても興味深いもので、アラスカの自然とそこに住む人たちに魅せられた星野さんがどんな思いで写真を撮っていたのか、その後を巡った大竹さんはどんな風に感じたのかなどとても興味深く、知らず知らずのうちに作品に引き込まれてしまった。星野さんの著書で有名な「旅をする木」から引用されたナレーションも心に響く。これは4Kで見る価値のあるコンテンツと言っていい。

画像: 星野さんが撮影していた鯨が今でもアラスカの海を泳いでいるという発見もあった

星野さんが撮影していた鯨が今でもアラスカの海を泳いでいるという発見もあった

 そして上映終了後に、大竹さん、早川さん、原田さんへの質問タイムがスタートした。

 憧れていた星野さんの世界に近づくことができたかという質問に対して大竹さんは、「今回の撮影では何回も奇跡が起きました。カリブーの大移動や鯨との出会いなど、その最たるものです。これは、星野さんのスピリットが今でもアラスカに残っているおかげだと思いました」と話してくれた。

 また本作は、2022年5月中~9月下旬にかけて撮影が行われたという。その中で空撮が多く使われていたことについて聞かれた原田さんは、「そもそも8Kカメラが重いので、揺れを抑えることはできました。とはいえ振動には気を遣っていて、ジンバルで支えています。空撮と船上のシーンでは特製のジンバルも準備しました」と解説してくれた。

 また音声がひじょうにリアルだったことについても、「自然音は現場の素材を使っています。もともと星野さんが見た世界をしっかり伝えられるように、できるだけ現場の音を拾ってあったのです」と事前の配慮についても明かしてくれた。

画像: 8Kカメラによる撮影の様子

8Kカメラによる撮影の様子

 なおこれだけの機材を使うためには多くの電源が必要となる。今回の撮影では一部発電機も使ったが、ほとんどはソーラーパネルと蓄電池でカバーしたそうだ。「アラスカが白夜の時期だったのでソーラーパネルをフルに使うことができました。今後はこのように、環境に配慮した撮影も増えていくでしょう」と原田さんも話していた。

 ちなみに今回撮影した8K映像のデータは概算で150Tバイトほどあったとかで、その中から厳選したシーンをオフラインで編集(2K)、その後8Kデータに反映している。

 最後に、試写室のスクリーンと家庭のテレビでは、画面サイズの違いもあるので番組の印象が変わると思うが、作り手としてどんな風に見てもらいたいのかという質問があった。これについて早川さんが「番組製作者はスクリーンのような大画面と高画質の環境で見てもらいたいはずですが、実際はなかなかそうもいかないでしょう。ただ、どんな環境であっても、手を止めて番組に集中してもらえるような番組にしたいと思っています」と製作者としての思いを語ってくれた。

 「ワイルドライフ アラスカの光と風 -星野道夫✕大竹英洋 時を超える旅-」は4月3日(月) 19:30~20:59にBS4KとBSプライムで放送される。BSプライムの2Kでも美しい映像を楽しめると思うが、環境が許すのであれば、ぜひBS4Kの高画質で体験していただきたい。

画像: 左から制作統括の早川正宏さん、写真家の大竹英洋さん、ディレクターの原田美奈子さん

左から制作統括の早川正宏さん、写真家の大竹英洋さん、ディレクターの原田美奈子さん

 なお4月のBS4Kでは、「アラスカ〜」以外にも以下のような注目番組が予定されている。こちらも合わせてお楽しみいただきたい。

●4月1日(土)20:00〜21:59 「生中継! みやびな京都 平安神宮の桜」
●4月8日(土)21:00〜21:59 「MISIA25周年ライブ in 横浜アリーナ」
●4月25日(火)19:30〜21:29 「究極ガイド2時間でまわるピラミッド」

(取材・文:泉 哲也)

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