12月1日から、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で、日本初となる音響体感プレミアムシート「FLEXOUND Augmented Audio」の運用がスタートする。それに先立ち本日、プレス向けの体験会が開催された。
このプレミアムシートは、フィンランドのFLEXOUND(フレックスサウンド)社の特許技術による、音と振動を発生させるスピーカーが内蔵された椅子で、今回はユナイテッド・シネマ アクアシティお台場のスクリーン2〜7、9〜12の10館のそれぞれ中央1列に設置、全85席が導入されている。
体験会が行われたスクリーン10は238席の空間で、今回スクリーン側から8列目に8席のプレミアムシートが設置されている。椅子のヘッドレスト部分には2基のスピーカーが内蔵され、ここからセリフを含めた音響が再生される。そのサウンドは上映する映画作品からFLEXOUND独自の方法で抽出されており、ここが同社のオリジナルになるそうだ。
具体的には劇場での上映時にシネマプロセッサーから出力される音声信号からプレミアムシート用の音を作りだしており、2chや5.1ch、7.1chのいずれにも対応可能という。抽出した信号は専用アンプに入力され、通常のスピーカーケーブルでプレミアムシートに内蔵されたスピーカーを駆動する仕組みだ。さらにこのスピーカーの振動を増幅させる機構も内蔵されており、再生音(500Hz以下)に応じて椅子が振動するとのことだ。
ちなみにこの抽出内容は劇場の環境に応じてチューンしているようで、作品のチャンネル数やジャンル等によって変える必要はないそうだ。そのため導入時にセットしておけば、後から調整をやりなおす必要はほぼないという。
今回導入されたプレミアムシートはすべてブルーの座面だが、これはユナイテッド・シネマ側が選んだ色で、シート自体は他にも選択肢があるとのこと。ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場の場合、一般シートが赤色なので、プレミアムシートの特別感がひとめでわかっていい案配だ。
なおプレミアムシートは一般シートに比べてゆとりのあるサイズで、一般席13席ぶんの幅に8席が設置されている。さらに左右両方の肘掛けもついているなど、ゆったり映画を楽しむこともできるはずだ。
今回はまず、劇場スピーカーを止めて、プレミアムシートだけでどんな音が聴けるのかから体験させてもらった。近日公開予定の『スラムダンク』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のトレーラーでは、セリフから効果音、音楽の情報を含んだ音が再生され、これだけでも作品の内容が充分理解できる。
とはいえ音量は控えめで、頭をヘッドレストから30cmほど離すとほとんど音は聞こえない。これは隣のシートの音が影響しないようにとの配慮かもしれない。
続いて劇場スピーカーとプレミアムシートの組み合わせで『トップガン:マーヴェリック』を再生してもらう。本作を含めて映画作品はもともとサウンドデザインが行われているわけで、しかも上映時は同じ劇場の一般席に座っている人はその音で映画を見ている。つまりプレミアムシートでは、もともとはなかったサウンドが追加されるわけで、リアルスピーカーから再生される音との馴染みはどうかも気になる。
冒頭の甲板上でのF-18発着時のエンジン音やお馴染み「デンジャー・ゾーン」のテンポのいいサウンドが気持ちよく響く。ヘッドレストに頭をもたせかけた状態では、楽曲も爆音も耳の周りに明瞭に再現されており、確かに迫力が増している。さらに他のチャンネルとのつながりも自然で、まったく違和感はない。
続いて、トム・クルーズがダークスターのテスト飛行に向かい、スタッフと会話をするシーンも見せてもらったが、セリフの位置感がぼやけることもなく、逆に胸板の厚い男声として聞こえてきた。前後のスピーカーからセリフが再生されることで、定位がぼやけるのではないかと心配していたが、杞憂だったようだ。
またオープニングはもちろん、KAWASAKIのバイクで疾走するシーンでは座面が心地よく振動し、映像との一体感も確かに高まっている。個人的には4DX等では椅子が揺れすぎることが気になって作品に集中できなかったので、これくらいの揺れ具合がちょうどいいかも(往年のボディソニックを思い出した)。
試しに前のめりになって頭をヘッドレストから離すと、音場が前方定位になり、少し引いた視点で映画を見ているような気分になった。せっかくの振動も薄れてしまうので、プレミアムシートを選ぶのであれば、椅子にゆったり腰掛けた方がいいだろう。
プレミアムシートでの鑑賞料金は通常鑑賞料金+200円。しかもシートは指定席と呼びたいようなベストゾーンに設置されているので、それだけでも映画体験としてメリットがある。ぜひお気に入りの作品を音響体感プレミアムシート「FLEXOUND Augmented Audio」で体験していただきたい。(取材・文:泉 哲也)