モデルとして活躍している田中芽衣が映画初主演を飾った『炎上シンデレラ』が、11月4日(金)より待望の公開を迎える。初主演作の撮影中にスキャンダルを起こして芸能界を追放されてしまう……。難しい役どころを、ミステリアスな雰囲気も充分に演じきった注目作だ。ここでは主役・安西みつほを演じた田中芽衣にインタビューを実施。安西みつほの役作りを深堀した。
――よろしくお願いします。まずは、初主演が決まった時の心境を教えてください。
びっくりしました! そして初主演ということで、私に務まるのだろうかという不安と、初めて挑戦するというワクワクした気持ちの両方が湧き上がってきました。
――台本を読んだ時の感想、演じられた安西みつほの印象を教えてください。
台本を作り上げていく過程で監督とお話をさせていただく機会があって、そこでみつほという役柄について深く考えていくという過程を経ていますので、一緒に作り上げていったという新鮮な雰囲気を感じました。同時に、台本に合わせていくというより、話合いで私に合わせていくという新しいスタイルで始まった作品になりました。
――どういう風に変わっていったのでしょう?
みつほは不思議な子というか、何を考えているのかが分からない印象が強いので、逆に言えば、観る人によって受け取り方が異なってくると思うんです。いい意味でみつほという役が定まっていない。それが面白いと思ったので、観て下さる方にミステリアスな雰囲気がもっと強く伝わるように、口数を少なくしてみたり、セリフではなく目の動きで(感情を)表現する方向に変えていく、という作業が多かったです。私自身もそうした挑戦は面白いものでしたので、皆さんがどう感じたのかを聞くのが楽しみです。
――そのみつほを演じる上で特に注意したところは?
口数が少ないからこそ、動きの中でみつほを作っていこう。そう考えた時に、基本、みつほにはあざとさがあると思ったんです。そのあざとさを伝えるために、自分を可愛らしく見せる仕草や、カフェで座っている時、何か待っている時、それこそ考えている時にも出てくる何か癖のようなものを作ろうと。
――具体的には?
あざとい子ってどういうことをするのかなぁと考えた時に、上目遣いだったり、頬杖をついたりするなということは割とすぐに考え付いたので、あまり悩んだり迷ったりせずに、スムーズにできました。
というのも、ほとんどのシーンは稽古でリハーサルをしてから現場に入りましたので、その稽古の時点で気持ちというかみつほの感覚を掴むことができたからです。面白かったのは、田代(良一:飯島寛騎)のようにキャラクターの定まっている相手がいてくれたことで、おかげでこちらの芝居は固めやすかったです。
――そういう準備があったからこそ、劇中のみつほからは、いつも相手を見透かしているような雰囲気を感じたのですね。
そうだと思います。
――でも、そうした綿密なリハと現場でのアドリブは両立するものなのですか?
みつほ自身は口数が少ないので、そもそもアドリブをする機会も少なかったのですが、他のキャストさんたちには結構アドリブがあったので(笑)、そこは受けのお芝居がメインの私としては、毎回楽しみにしていました。綿密なリハーサルがあったおかげですね。撮影はすごくスムーズに進みました。
――アドリブって、すぐに返せるものなのですか?
そうくるか! となってうまく返せなくて撮り直しになったこともありますけど、まあ自分の中でも、リハーサルではしなかった表情が出せたりしましたから、その意味では、アドリブの良さもたくさんあったと思います。すごく貴重な経験ができました。
――ところで、冒頭にメイキングの撮影シーンでみつほは、初主演はたいへんとコメントしています。実際の現場はいかがでしたか?
私の持っている主演像って、皆さんを引っ張っていきますというものなんですけど、きっと私にはできないだろうと思っていたので、私が主演として頑張るというよりかは、皆さんと同じ立ち位置で、同じ熱量を持って、(チームとして)一緒にいいものを作っていきたい! そう思って現場に臨んだら、いい意味でリラックスできて、力が抜けて、いろいろな意見を聞きながら、柔軟にできたなと思っています。
――その後、とあることで芸能界を追放され、一年後に再び現れた時には、雰囲気が大きく変わっていました。
本当ですか!? よかった。ほぼ順撮りだったので、その時々のみつほの感情はこうなっている(こう思っている)と細かく決めてお芝居をしていたので、それがうまく伝わっていたのなら嬉しいです。
――一度芸能界を追放された身なのに、なぜ田代の話を聞きに行ったのでしょう?
やはり(芸能界に)未練があった。絶対そうだと思います。女優という仕事に対してのみつほの諦めたくない、本当にやりたいことだという思いがあるからこそ、話を聞きに行ったのかなと思っています。そういう芯の強さというか信念みたいなところには、私も通じるものを感じました。
――その後、初めて稽古場に行った時の雰囲気はもう大女優ですね。
私は元女優ですよというところを分かりやすく表現するために、ファッションを含めた態度で見せようと思い、その服は私が選んで、ああいうお芝居をしました。
――劇団の中で浮くかと思いきや、急速に馴染んでいきます。
そうですよね。私も最初は不思議だなぁと感じていましたけど、それもみつほの魅力なのかなと思って、面白かったです。
――役作りのところでもお聞きしましたけど、みつほは本当に本心を明かしません。
私自身、そういう子に魅力を感じていて、恐らく会う人によって持たれるイメージが違ってくると思うんです。それって、人間として面白いなって感じたので、演じる際にも、そういう不思議さ、面白さを出せたらいいな、出せるようにしようと思って芝居をしたので、そうした雰囲気が伝わっていたらいいなと思います。
――男からすると、その不思議さは、だんだん怖さに変っていきます。
あ~なるほど、そうなんですね。天然な分かりにくさだけでなく、裏に賢さが隠されているからこそ、男性からしたら、翻弄されていく中で、何を考えているのか分からないことが恐怖になっていくんでしょうね。観た人が、みつほをどういう人物に感じたのか、たくさん聞いてみたいです。
――昔の友達に映画に誘われるシーンの反応は、恐怖を呼び起こすというか、やっぱりそういう子だったのね、と感じるものでした。
そうですよね。それが狙いでもあったので、そう受け取ってもらえると嬉しいです。ただ、それだけではなくて、きちんと友達がいたんだとか、優しさというか、人間味が出ているシーンにもなっていると思うので、そこも感じていただきたいと思います。
――何もかもがすごくおかしいというセリフも、強く印象に残りました。
本当にその通りですね。世の中で現実に起きていることでも、意外とおかしいことはたくさんあるんだろうなって思いましたし、みつほにしてみても、何もかもがおかしいけど、自分のやりたいことをやるだけ! そういう信念の強さが彼女にはあるんだろうと思っています。
――再び映画出演が決まりましたけど、テンションは低いですね。
落ち込んでいるというよりかは、みつほには分かっていたんでしょう。いいことが決まったけど、思っていたものと全然違う、まあ芸能界(世の中)はそんなに甘くないんだって。ただ、その感覚は、悔しいというよりかは、もう理解しきっていることなのかなと思います。女優を目指すという強い気持ちがあるからこそ、作品に再び触れられるだけで嬉しい、と。
――その流れがあっても、田代とは離れません。未練があった?
確かにそうですね。田代を翻弄しているように見えて、実は、みつほの中では、助けてもらっていることを理解している。だから今度は私が助けたい。そう思っているのかな~と思いながら演じていました。実際はどうなんでしょう?
――でも、冒頭のように田代に笑顔を見せません。
冒頭のメイキング撮影時の時のみつほって、恐らく芸能界で作られたみつほ像だと思うんです。でも、追放されて芸能人ではなくて普通の人に戻ったみつほも知っている田代だからこそ、見せられた表情なのかって思っています。だから、違うカメラマンだったら、きっと笑顔を見せていたでしょう。逆に言えば、心を許しているからこそ、素の自分を見せられるのかなって思いながら、そのシーンを演じていました。
――端役でも、おかしいと思っても、これからは自分の素を出して行くと。
そうです。決意表明です。
――今回、初主演を経験して、ご自身の中で成長した部分や感じたことはありますか?
初主演を経験させていただいたことによって、圧倒的に自信が付きました。モデル出身なので、どうしてもお芝居に対して不安な気持ちの方が大きくなってしまい、いつも大丈夫かな、大丈夫かなって思うことが多かったんです。けど、初主演もできたし、無事完成して公開が迫ってきている。それは一つの大きな自信になりましたし、今後もまた新しい作品に出会えたらいいなって思えるくらい、前向きになれました。
ただ、セリフではなく、表情や動きで表現するところは難しい部分だったので、そういうところに気が付けた、こだわりを持ちながら作れたっていうことは、いい経験になったし、それはお芝居だけではなくて、モデルの仕事にも通ずるものだと感じて、とにかく経験が財産になった。そう思っています。
――表情を作るところにも活かせる。
本当にそう思います。モデルも女優も、表現するという意味では同じ(カテゴリー)であって、それが静止画なのか、動画なのかの違いなのかなって。モデルとしても、ただ単に服を着せられて撮られるのではなくて、この服を着ている子は、どういう生活をして、どういう考えを持っている子なのかなっていうのは、これまでも感覚で考えていたことなので、そういうところはお芝居にも通じていると感じますし、遠いようで近いものがあるからこそ、お芝居も好きになれたんだなって思います。
――アドリブや長回しという撮影方法にはすぐに慣れましたか?
長回しの撮影も、そもそも長回しの予定でリハーサルをしていたので、そんなに大変なことはなかったですね。逆に長回しだからこそ、感情が続けて入れられるので、やりやすかったと感じています。アドリブについても、毎回毎回の掛け合いがちょっとずつ違うという面白さがありました。完成した映像を観た際に、あのverが選ばれたんだって面白かったです。
――ところで、劇中ではご自身で撮影された写真も披露しています。フィルムカメラを始めたのはきっかけは?
人物とか風景とか、目で見たものを記憶したい、残していきたいと思って撮っていたんですけど、それに段々はまっていって。気が付いたら、それをファンの方に見せたくなって、写真展まで開催しちゃいました(笑)。
まあ、今はSNS時代なので、そこに掲載するために撮っている部分もありますけど、フィルムを選んだのは、現像をしないと、どういう風に写っているのか分からないし、そもそもきちんと写っているのかどうかも分からない。アナログを新鮮に感じる世代なので、それ自体が面白いなと思って続けています。
映画『炎上シンデレラ』
11月4日(金)より池袋HUMAXシネマズほか全国順次公開
<ストーリー>
初主演映画を撮影中にスキャンダルを起こして大炎上、芸能界を追放された女優・みつほ。彼女を主役に映画を撮りたいという妄想を抱えた映画オタクの青年・田代。この二人の運命の出会いに割り込む小劇団を主催するいい加減な男・山倉。みつほと田代がこの劇団に入ってしまったことから物語は妙な方向へ。そして彼らに再び炎上の危機が!?
<キャスト>
田中芽衣 飯島寛騎
比佐仁 里見瑞穂 佐々木史帆 芳村宗治郎 南ユリカ /横田真悠/大河内健太郎 ほか
<スタッフ>
監督・脚本:尾崎将也
製作プロダクション・宣伝・配給:キャンター
製作:クエールフィルム
(C)クエールフィルム
映画「炎上シンデレラ」公式サイト
映画「炎上シンデレラ」の公式サイトです。田中芽衣初主演作品。尾崎将也が描くポップでシニカルな若者たちの悲喜劇の世界を体感ください。
cinderella-movie.jp▼田中芽衣 公式サイト
https://www.instagram.com/mei_tnk/
<クレジット>
ヘアメイク:長坂賢
スタイリスト:山田莉樹
衣装協力:モールド リューク
シャツ¥37,400、タートル¥23,100、パンツ¥44,000/チノ(モールド)、イヤカフ¥33,000、ネックレス¥60,500、リング(人差し指)¥25,300/リューク、リング(中指)/スタイリスト私物
問い合わせ先:モールド(03-6805-1449)/リューク(info@rieuk.com)