清瀬汐希と松井健太のW主演で禁断の愛を描いた映画『月下香』が、いよいよ10月28日より公開となる。絵画のモデルを引き受けたことをきっかっけに画家とモデルの間で燃え盛る感情の嵐を、繊細に映像化した注目作だ。ここでは、既婚者でありながらも新たな恋に揺れ動く田中亜美を演じた清瀬汐希にインタビュー。作品の見どころから、演者として、女性としての視点から感じた本作の印象についても聞いた。
――映画初主演めでとうございます。公開が迫ってきました。今の心境をお願いします。
ありがとうございます。皆さんからどんな反応を頂けるのかなって、すごく緊張しています。また、9月に行なったラストDVDイベント以降、撮影会でお会いするファンの方からも、映画を楽しみにしています、という声はたくさん頂いてきたので、それはすごく嬉しかったです。
――主演が決まった時はどうでしたか?
映像のお仕事(お芝居)が一番やりたかったことなので、本当に嬉しかったですし、選んでくださってありがたかったです。
――出演はどのように決まったのでしょう。
オーディションで選んでいただきました。ただ、今回の配役オーディションでは、部屋に入ったらもうたくさんの面接官がいて! しかも、記録用のカメラも3台ぐらいセットされていたので、それを見ただけで緊張もより高まってしまって!! ほぼほほ当時の記憶がないんです(笑)。
――失敗はしませんでしたか?
一応、台本(セリフ)は頭に入っていたし、(オーディションなので)きちんとしなくちゃっていう思いも強かったので、緊張しながらもやりきりました。あ、でも、ちょっとは抜けちゃったかな(笑)。
――思った通りにお芝居できた?
そうですね、緊張はしていましたけど、まあできたと思います。ただ、自分が思い描いているお芝居と、相手役の方がされるお芝居がちょっと違ったので、そこは自分で作り込み過ぎていたかなとか、臨機応変に対応できなかったなという反省はありました。
――どう違ったのでしょう。
例えば掛け合いの中で、このセリフはもう少し優しく言ってくれるかなと思っていたら、相手役の方から結構はっきりと返ってきたりすると、あっどうしよう、自分が考えていた雰囲気と違うって慌ててしまった部分もあって、自分はまだまだ経験が浅いなって感じました。
――何回も聞かれているかもしれませんが、本作にはラブシーンもありました。それを受け入れるのは大変でしたか?
いえ、正直に言って抵抗は何もなかったですね。お芝居の一環として演じました。もともとグラビアをやってきたので、露出には慣れていたということがあったのかもしれません。
――出演が決まってから、クランクインまではどのように過ごしたのでしょう。
準備稿の段階から、お芝居の練習はもちろんしていましたし、読み合わせもありました。決定稿が出来上がってから撮影が始まるまでは、3、4カ月ありましたけど、その間もずっと稽古と練習は続けていました。
――最初に台本を読んだ時に、作品と、演じられた田中亜美について、どのように受け取りましたか。
元々、私自身がキラキラした物語よりも、本作のような人間・女性の心理を感じられるような、現実的というかリアルさがあるもののほうが好きなので、そういう意味では、物語については、うわっすごく分かるっていう思いは強かったです。
亜美ちゃんについては、演じることでより設定された人物像に近づけた気はしました。おかげで、物語に入り込んでいけました。
――ご自身に近い?
元々は、すごく遠い人だと思っていたんです。それこそ、全然違う人種だって。でも、演じていく内に、あっ私亜美かもって感じたんです。似ている部分も多かったし、もし自分だったら、本当にそうしてしまうかもしれないって、強く感じましたから。
――遠い・近いと感じたものはなんでしょう?
おそらく細かいところではないんですけど、遠いって感じた部分は、本作を撮影していた期間は、私がアイドル活動をしていた時期だったので、ハイテンションであったし、自分が自分がみたいな感じで、自ら盛り上げるタイプだったので、その当時の感覚で亜美ちゃんを見ると、大人しいし、思っていることを口に出さないというか出せないという面は、私とは全然違うなって感じたんです。
でも、アイドルを卒業して自分の元の姿というか、アイドルではない姿に戻ってからは、ちょっと落ち着いていたりとか、あまり感情を表に出さないところは、うわっ自分に似ていると思って。自分の元の姿って、本当は亜美ちゃんなんじゃないかって感じました。
――やはり、自分に似ている方が演じやすいものですか。
そうですね。だから、後半の方が演じやすかったように思います。
――前にお話しをうかがった時は、不倫は絶対にノーというものではない、と仰っていました。
本作では、ドロドロしたものではなくて、純愛の不倫――まあ言葉が難しいんですけど――が描かれていて、その繊細な雰囲気の中にあっては、私も流されてしまいそうです。亜美ちゃんを演じてみて、その思いが強くなりました。あっ、自分流されるって(笑)!
――流されてしまうと思うポイントはどこにあるのでしょう?
所々にあるキュンってしてしまうところですね。監督も、ここは女性がキュンとするところだからと仰っていましたけど、それ確かに分かる! って。
共演の松井(健太)さんもそういうのが分かっていて、女性がキュンってする仕草とか、心をくすぐる雰囲気作りはお上手で、(亜美に)共感できる部分はたくさんありました。
――では、稽古・練習を経て、クランクインを迎えた時の感想は?
ほとんどの人が 2 日目入りで、初日はまあ数人しかいなかったこともあって、さあ始まるぞみたいな雰囲気にはあまりならなかったんです。けど、ようやく始まる、ここから頑張るぞって気合を入れていました。
――ところで、清瀬さんは、役にはスッと入れる方ですか?
それが、感情が入るまでに結構、時間がかかるんですよ。これまでのお芝居のレッスンでも指摘されることが多くて、その場で、用意スタートに合わせて感情を入れられるタイプではないので、あらかじめ作っておかないと遅くなってしまうんです。そのため、あらかじめなりきっておこうと決めて、撮影の間はずっと、私は亜美だ、亜美だって思っていました。だから、撮影が終わってホテルに帰っても、意識は亜美のままでしたね。
――負担にはならなかった?
そうですね。そこは自分に近い部分があったので、ああ、亜美ちゃんの気持ちが分かるなっていう気持ちでいましたから。
――ところで、冒頭部分で、その亜美でいながらラジオ収録初心者の雰囲気を出すのはどうでしたか?
難しかったですね。監督からは、緊張している風にと言われていて、まあ、私もそういう状況に立てば緊張はするんですけど、やはり表に立つ人間なので、場には慣れていましたから、一般の女性が初めてラジオに出演しましたという雰囲気を表現するのは、苦労しました。初めて感を出すのが初めての経験だった、みたいな(笑)。
――そこで、松井さん演じる柏木潤と出会います。
運命ってこうやって始まるのかなとか、恋ってこうやって始まるんだっていうのは、台本を読んでいるので、まさにここがソレっていうのは分かりますけど、実生活では、あっ今から恋が始まるっていうのは、おそらく分からないと思うんです。だから、お芝居をしながら、こうやって始まるのかっていう印象が強かったですね。
――すぐ、絵のモデルに誘われますが、その時にはもう恋は始まっていた?
いや、まだ始まっていないですね(笑)。ちょっと旦那に申し訳のなさを感じている状態なので、まだそれほど意識はしてないはずです。ただ、その後で潤君との共通点を見つけた時に――それまで自分との共通点を知ってくれる人があまりいなかったこともあり――嬉しい気持ちになったと思います。
――やはり共通点は大事ですか?
はい大事です。もうキュンときます。
――清瀬さんは、どんな共通点か欲しいですか?
やはり趣味ですね。音楽の好みが一致していると嬉しいです。基本、何でも聞く方ですけど、特にと言えばK-POP が多いです。ただ、男性ではなかなかいないのかな~と。
――そうして、モデルを通じて、どんどん心を通わせていきます。
そうなんです、ちょっとずつ距離が近くなっていくと、やはりドキドキするものがあると思いますし、キュンというか、この人なら大丈夫! みたい安心感が、亜美ちゃんの中に生まれてきたのかなと思います。同時に、潤君にときめいている自分に気づいて、旦那にごめんという気持ちもあるんだろうな、と思いました。
――その後、潤君からもう一段高い要求を受けます。
女性からしたら嬉しいですよ。でも、旦那のことを考えてしまうので、その罪悪感と戦わなければいけない部分でした。
――清瀬さんが頼まれたら?
私だったら、受けています(笑)。
――それにしても、旦那は朴念仁ですね。捨ててしまってもいいのでは、と思ってしまいます。
すごくいい人なんですよ! まあ、不満みたいなものは溜まるかもしれませんけど、それまでの長い付き合いがあるので、共通点をもっと持てたらいいなっていうぐらいの感じだと思います。だからこそ、同じ趣味を持つ潤君にときめいてしまったのかな、と。
――その後、少しの時間をおいて、一旦は諦めた恋が再燃します。
そうなんですよ! 会わないほうがいいと分かっていても会ってしまった。しかも、かつて描いてもらった作品が大事に展示されているのを見て、会っていない期間も、私のことを思ってくれていたんだなって、嬉しい気持ちは大きかったと思います。
――それを機に、二人の関係がより盛り上がっていきます。
燃え上ってしまったけど、やっぱり旦那との思い出は捨て難い。今までの積み重ねがあったからこそ結婚したわけだし、それを思うと、こんなにいい人を捨てられない。でも、新しい恋にも行きたい、行ってしまう。多分、亜美ちゃんの真面目さゆえの行動なんでしょうね。
――でも、日常に戻っても、あまりいいことはないような気もします。
私でも戻ると思います。多分、女性の心理じゃないですかね。本当に捨てられるものだったら、とっくに捨てていると思います。
――2人の将来はどうなるでしょう?
私も気になってしょうがないんですよ。だから監督には、ぜひ第2弾をお願します!ってずっとお願いしているんです。もう、気になって、気になって!
――清瀬さんはどう想像します?
一度は旦那に戻ったけど、次は潤君と駆け落ちしちゃうんじゃないですかね。
――せっかく戻ってきたのに!?
ただ、駆け落ちしても、旦那のことはずっと想っていると思います。
――話が少し飛びますけど、ラストまで観ると、冒頭部分にある友達の子供を見ている亜美の表情の複雑さに、より強い印象を持ちます。
実は、あのシーンが 1番たいへんというか、苦手だったんですよ。笑顔を作るのがすごく苦手なので、撮影中にも、もうちょっと笑顔にしようよとか、楽しそうな感じにしてって言われていたんですけど、楽しい笑顔ってどうやって作るんだろうって考え込んでしまって。もしかしたら変な表情になっているかもしれません。
――まさにそれで(笑)、観ている方としては、時間軸が逆転している(エンディングの先の時間)のかと思いました。
私も、初めて台本を見た時に、そう感じました。うちには子供ができないな~という、ちょっと心にモヤモヤがかかっている笑顔なのかなと思っていたんです。けど、監督からは、普通に友達の子供を見て、微笑ましく思っている笑顔にしてほしいと言われたので、笑顔が苦手な部分と、自分の中で整理がつかない状態が合わさって、そう見えるようになったのかもしれません。
――ところで劇中では、清瀬さんのヌード画が印象的に使われています。どのように描かれたのでしょう?
最初は、絵を描いてくださる画家さんとお会いして描いてもらう予定だったんですけど、タイミングが合わなくて……。写真をお送りして描いていただきました。描きながら、私のSNSを参考に見て下さっていたようで、対面で描いていただいたような仕上がりになりました。胸の形なんかも、見ていないのに(見せていないのに)、実際に見たかのような絵になっていて、そっくりだ! って私が一番驚きました。
――エンディングに、インティマシーシーンコーディネートという項目がありました。日本映画では珍しいですね。
小松みゆきさんにやっていただきまして、本当にありがたかったです。ラブシーンもヌードシーンも私にとっては初めての経験で、どういう角度で撮られているのかとか、どうやって動いたらいいのかなと思う時に、もうちょっとこうした方がいいよという細かいアドバイスをもらったり、撮影そのものにすごく配慮してくださったので、心強かったです。
――さて、もうすぐ公開を迎えます。見どころやアピールポイントをお願いします。
観てほしい部分、注目して欲しい部分はたくさんあるんですけど、私が一番好きなシーンで言えば、結婚記念日に花束をもらうところですね。旦那の表情と、亜美ちゃんの気持ちのギャップがすごくて、どんな表情をすればいいんだろうって、本当に悩みましたし、演じながら心がすごく痛かったんです。ただ、シーンとしてはいいものになっているので、じっくりとお互いの表情を、気持ちを、受け取ってもらえたらいいなと思います。
――最後に、今後の目標と、演じてみたい役(設定)を教えてください。
お芝居の方にしっかりと軸足を置いた活動を考えているので、どんな役でもやりたいですし、とにかく、経験を積むためにも、どんどん演じて、勉強していきたいです。目標はやっぱりドラマ出演、最終的には月9を目指したいです。
役としては、感情を爆発させるようなものを演じてみたいです。きっと楽しいと思うんです。頑張ります。
映画『月下香』
10月28日(金)よりシネ・リーブル池袋ほかにて全国公開
<キャスト>
清瀬汐希 松井健太 松本博之 中西悠綺 小野島徹 関口まなと 高橋成美 風祭ゆき 小松みゆき 阿部祐二 木村祐一 他
<スタッフ>
監督:淵澤由樹 脚本:乃木リリー 撮影:原田摩利 製作:映画『月下香』製作委員会 製作協力:TM JAPAN 一般財団法人日本映画振興財団 制作・配給・宣伝:テンダープロ
(C)2022映画『月下香』製作委員会
【ストーリー】
化粧品メーカーに勤める田中亜美は、誠実で優しい夫と平穏な結婚生活を送っていた。ある日、仕事上のトラブルから年下の若き画家・柏木潤と出会う。軽い気持ちで絵画モデルを引き受ける亜美だったが、次第に2人は強く惹かれ合っていく。そんな中、人気アーティストの階段を駆け上がっていく潤。亜美は罪悪感を抱きつつも、潤への想いを抑えられなくなっていく。
その許されぬ恋の果てに辿り着いた結末は?
切なくも官能的な禁断のラブ・ストーリー。
▼公開初日、10月28日に舞台挨拶あり
▼清瀬汐希公式SNS