コロナ渦によるテレワークやオンライン会議の浸透、あるいは健康志向・運動指向の高まりによって、何かをしながら音楽を楽しむという、ながら聴きスタイルに対応したワイヤレスイヤホンが、各社から発売されている。骨伝導式のモデルも多くを占めるが、ソニーの「LinkBuds」やambieの「AM-TW01」、EARINの「EARIN A-3」、Bocoの「PEACE SS-1」のように、完全ワイヤレス式でありながら、耳を塞がずに音楽を聴ける製品も多くなってきた。ここでは、AVIOTから9月下旬に発売される完全ワイヤレスイヤホンの新製品「TE-S1」のインプレッションをお届けしたい。

画像: 中サイズのイヤーウイングを装着。本体との間にエア抜き?の隙間があるのが分かるだろうか

中サイズのイヤーウイングを装着。本体との間にエア抜き?の隙間があるのが分かるだろうか

 TE-S1は、ながら聴きに対応する、同ブランドの新シリーズ「Openpiece」の第2弾モデル。リリース写真では分からなかったが、実物を手にすると、その異端なデザインがよく理解できた。本体はおにぎり型をしており、円柱ならぬ、おにぎり柱とも例えられるような形状。音の出口を上側に置くと、ミニオンに見えなくもない。

画像: 記者愛用の「EARIN A-3」(右)との比較。A-3よりも小さい

記者愛用の「EARIN A-3」(右)との比較。A-3よりも小さい

 さて、本TE-S1は耳を塞がずに音楽を楽しめるのだが、どのように装着するのかというと、付属のシリコン製のイヤーウイングを本体下部(耳にあたる面)に被せた状態で、耳へ装着というか固定するという手法を採る。前面(?)の音の放射口と、後面の空気抜きの孔の出っ張りにシリコンをひっかけるだけなので、固定具合はそれほど高くない。記者の借りたサンプルでは、右側のイヤーウイングのひっかかりが緩く、イヤホンが落ちそうになることが何度かあった(モデラ―御用達の液体接着剤を流し込みたくなった)。

画像: イヤーウイングは大中小の3サイズを同梱。小はエア抜きの隙間がなく、音がこもったような感じになってしまう

イヤーウイングは大中小の3サイズを同梱。小はエア抜きの隙間がなく、音がこもったような感じになってしまう

 そのイヤーウイングは小・中・大の3サイズが同梱されているが、記者の耳(耳穴)の形が特殊なのか、昔からイヤホンの装着具合はあまりよろしくない。ということもあって、当初は小サイズを着けていたのだが、これは写真から分かるように、音抜きの隙間がない。そのため、小サイズで音楽を聴くと、イヤホン自体の装着性はいいものの、耳穴を塞いでしまうため、音はこもり気味で低音が強調されてしまう。ながら聴きモデルであるが、耳穴が塞がってしまうため、周囲の音の聴こえ具合もあまりよろしくはない。可能であれば、小は使わずに、中か大にしたい。

 さて、その中サイズのイヤーウイングを被せて装着してみるが、上述したように特殊な形状をしているからか、なかなかに位置が決まらない。AVIOTの製品紹介ページでモデルの女性が着けているようには、どうしてもならないため、一応の固定ができるような挿し方で装着している。おそらく正解ではないと思われるが、その状態でしか固定できないので、以後のテストはその状態で行なう。ただ、その装着では、耳珠がタッチセンサーに触れてしまい、誤動作することも多くあった。

 中サイズのイヤーウイング装着での使用では、謳い文句通り、耳穴は塞がっていないので、周囲の状況は、何も着けていない場合とほぼ同様によく確認できる。会話も不自由なく行なえた。デスクワークをしている分には、落ちることはなかったが、屋外での使用は控えたほうがよさそうだ。

 radikoやSpotifyをしばらく聴いてみたが、10mm径のドライバーのおかげか、声の帯域はしっかりと再現されていて、音楽だけでなくトークについても聴き取りやすいものとなっていた。

 こういう製品で音質チェックも野暮といえば野暮なのだが、一応やってみた。いつも通りAstell & Kernの「A&ultima SP1000」と組み合わせている(コーデックはSBC)。音量が大きくならない(maxの150にしても、一般的なプレーヤーの中程度の音量にしかならない)という問題はあるが、SBCでありがちな低域の強調もほどよく抑制されており、全体的にフラットでバランスのいい再現。レンジはあまり広くないが、高域が詰まっているという感覚はない。EARIN A-3と同様に、音が抜けることを前提に音調を決めているようで、自然なサウンドが楽しめた。また、インナーイヤー型に近い構造のためか、音の定位も比較的前方にあり、頭の中で鳴っている、後頭部寄りで鳴っている、という不自然さはなく、良好なものとなっていた。

 機能として「音漏れ抑制モード」が搭載されているので、それについてもテストしてみた。右側のタッチセンサーを長押し(1.5秒)すると、オンオフが切り替えられる。オンにすると、帯域を制限(上と下をカット)しているようで、全体的にナロウで、元気のないサウンドになってしまう。イヤホンを外して耳の近辺で聴いてみたが、聴こえてくる音量?はそれほど変わらないので、常時オフで問題はないと思われる。

 イヤーウイングの固定をもう少ししっかりできるように改善してほしいという要望もあるが、近年流行のながら聴きを、音質も含めて手軽に楽しめる製品として有望な存在と言えるだろう。

▼関連記事

This article is a sponsored article by
''.