現役のミュージシャンでもある岡本祟監督が、自らが活きている音楽業界の裏と表をコミカルに映像化した『ディスコーズハイ』が、日本芸術センター第13回映像グランプリや、神戸インディペンデント映画祭2021での受賞を経て、いよいよ公開となる。ここでは、本作で映画初主演を飾った田中珠里に、その感想を聞いた。

画像1: 「田中珠里」初主演作『ディスコーズハイ』がいよいよ公開。「早くたくさんの方に観ていただきたいです」

――今回、初主演作となった作品が、いよいよ公開となります。今の心境はいかがですか?
 初主演という喜びも大きいですし、こんなに笑いあり、感動ありの作品はそうそうないと思うので、早くたくさんの方に観ていただきたいというワクワク感でいっぱいです。

――オーディションで出演が決まったそうですが、この作品を受けようと思った理由は?
 もともと色々なジャンルの映画に出たいと思っていたころにお話をいただいたこともあって、よし受けようと決めました。ただ、コロナ禍当初でしたので、オーディションも対面ではなく、あらかじめセリフをいただいて、それを読んだ動画を送るというスタイルだったので、ちょっと不思議な感じでした。

――演じ方に対するリクエストはあったのでしょうか?
 特になかったので、(脚)本を読んでの自分のイメージでやりました。

――動画を撮る時、送るときに、手ごたえはありましたか?
 手ごたえというより、私が演じた瓶子撫子(へいし なでこ)と性格がちょっと似ている部分があったので、演じやすいという感じは持っていました。

――具体的には?
 口の悪い部分はさておき(笑)、思ったことをなかなか口にできないという部分は似ているなと感じました。私は結構、自分の中で抱えてしまうタイプなので、その面ではやりやすかったです。ただ、人を蹴ったり、叩いたりというのは、したことがなかった(!)ので、そこは、(自分でも)頑張ったな、チャレンジしたなと思います。

――先日、岡本監督にインタビューした際に聞いた話では、オーディションの際の田中さんと下京さん(別久 役)のお二人はとても印象に残ったそうで、すぐに(この2人に)決めたということでした。
 えっ、そうなんですか! 嬉しいです。監督からは、こういう理由で決めましたという話は聞いたことがなかったので、ずっと私でよかったのかなって不安があり、そう聞いて安心しました。とにかく嬉しいです。

画像2: 「田中珠里」初主演作『ディスコーズハイ』がいよいよ公開。「早くたくさんの方に観ていただきたいです」

――田中さんが演じられた瓶子撫子は、なかなか印象的な女の子でした。演じてみての感想はいかがですか?
 なかなかに強い子だなと思いましたね。言われたこと全てに言い返して、なんか大阪の漫才を見ているような感じがしました。ただ、口が悪い、すぐに手が出るという面に目がいきがちですけど、思ったことをなかなか伝えられないという不器用さや、仲間とかお母さんを想う一途な優しさを持ち合わせている女性とも感じたので、そのギャップをうまく演じ分けられたらいいなと思いました。強く行く部分はきちんと強く行って、ちょっと弱くなる部分はきっちり弱いタイプになろうと意識しました。

――それには、何か参考にしたものはありますか?
 参考にした部分はあまりないんですけど、私自身、強い女性に憧れているので、こういう女性だったらいいなっていう想像から、そう見せる(見える)ようにしました。強い部分を持っている女性って素敵じゃないですか。だから、そういう女性を目指しながら演じました。

――ギャップという面では、身内(家族、バンドメンバー)に見せる顔と、社員に見せる顔はまったく違いました。
 ねっ、全然違いましたよね(笑)。(叔父である)社長にはすごく上からものを言うし、ビンタもしちゃうし。こういう女性って、なかなかいないですよね。

画像3: 「田中珠里」初主演作『ディスコーズハイ』がいよいよ公開。「早くたくさんの方に観ていただきたいです」

――現場では、その切り替えはすんなりできましたか?
 切り替えはもう、集中していないとできなかったですね。現場の雰囲気が、すごく和気あいあいとしていたので、強く出るときは、強くしなくちゃって自分に言い聞かせながら、集中力を高めて演じていましたから、とても大変でした。

 演じている時には、きちんと演じ分けられているのかなとか、同じ女性に見えるのかなっていう不安はありましたけど、完成した映像を観たら、1人の女性としてまとまっていると感じたので、安心しました。

――撫子の口が悪い面が出る時の、漫才の突っ込みのような掛け合いはいかがでしたか?
 すごく難しかったです。テンポはもちろん大事なんですけど、それだけではなくて、相手の言い方というかトーンに合わせて、自分のトーンを同じに持っていくところなどは、結構、考えながらやりました。

――田中さんのことを知らない人が本作を観たら、怖い人なのかなって思うかもしれません。
 本当にそう思います。そんなことはありませんよ! ということを前面に出していきたいです。

――最近は、お芝居の仕事がすごく増えてきていますが、さまざまな役を演じ分けるのは、慣れてきた感じですか?
 そうですね、お芝居に関しては、もともと小さい時から好きなので、そこはすごく楽しみながらやっています。

――話は変わりますけど、劇中でバンドメンバーのPVを撮るシーンは楽しめました。
 終始、笑い声が聞こえてくる現場で、すごく楽しかったです。そんな雰囲気が映像に収められているなって感じました。実際には、“よーいスタート”っていう掛け声もなく、みんながわいわいしているところを撮っていたので、あっ、もう撮影が始まっていたの? っていう感じでした。終わりも、“カット”っていう掛け声がなかったので、どこまで続ければいいのか? というのはありましたけど、結構自由に演じさせてもらっていました。

画像4: 「田中珠里」初主演作『ディスコーズハイ』がいよいよ公開。「早くたくさんの方に観ていただきたいです」

――そこで撮ったMVの全編を観たくなりました。
 本当ですか!? 嬉しいです。おそらくその部分しか作っていないと思うんですけど、監督に言えば、全編作ってくれるかもしれません(笑)。

――それにしても、撫子の周りには曲者しかいませんね。
 そうなんですよ、撫子自身も特殊なキャラではありますけど、周りにいる人たちがそれ以上に個性が豊かすぎるんです。監督がやりたいことを詰め込んだ作品なので、実際に近しい人が実在しているのかもしれません。

――会議のシーンで、緊張して高速まばたきをしている撫子の周囲では、変なことを言う人(社員)ばかりでしたけど、よく笑わなかったですね。
 めちゃくちゃ我慢していました! しかも、目をパチパチするところは、その直前にいきなり、高速でまばたきをしてって言われたので、本番ではできるか分からなかったし、これで高速になっているのかなって思いながらパチパチしていたんです。

――とても面白かったです。
 本当ですか。ありがとうございます。

――少しネタバレなことを(ボカシて)聞きますが、撫子はとある事柄について、随分と鈍いですね。
 まあ、お母さんの教えとかも忘れちゃうタイプですから、思い出せないというか、すっかり忘れていたんだと思います。

画像5: 「田中珠里」初主演作『ディスコーズハイ』がいよいよ公開。「早くたくさんの方に観ていただきたいです」

――その割には、たまにいいこと言いますね。
 撫子のセリフもそうですけど、キャストのちょっとしたセリフに、沁みるなーって思うところは多かったです。岡本監督はミュージシャンですから、普段から歌詞を書いているからこそ出てくる“言葉”があるのかなと思いました。

――しかも、女性陣は田中さん含め、皆さん声がいい。
 えー初めて言われました。すごく嬉しいです。前はもっと可愛いらしい声の方がいいのかなと思っていたんですけど、お芝居をメインでするようになってからは、今の声の方が合っているのかなって感じるようになってきました。

――ラジオパーソナリティとかも似合いそうです。
 やってみたいです。

――映画の後日談を、ラジオドラマで作ったら面白そうです。
 確かに。その後の撫子と別久がどうなったのかは、私も知りたいです。

――後半で、撫子が叫ぶシーンも感動的でした。
 ありがとうございます。普段は、あんなに大声を出す機会ってないので、ぶっつけ本番でしたけど、結構頑張って大きな声を出すようにしました。

――スーツ姿も似合っていました。
 本当ですか!? 実はスーツにはこだわりがあって、ただの黒ではない微妙な雰囲気のある色を探して選んでいるんです。スーツがいいって言っていただくのは初めてで、すごく嬉しいです。実はアレ、自前なんですよ!

画像6: 「田中珠里」初主演作『ディスコーズハイ』がいよいよ公開。「早くたくさんの方に観ていただきたいです」

――また、田中さんと岡本監督がタッグを組んだ作品を観てみたいです。
 そう言ってもらえると嬉しいです。ついこの間なんですけど、岡本監督の別の短編に出させてもらったばかりなんです。完成とか、上映のスケジュールとかは未定ですけど、楽しみにしていただけると嬉しいです。

――ちなみに、バンドP-90のボーカルの、撫子への片想いはどうなるんでしょう。
 ねえ、どうなっていくんでしょうね? でも、すごく一途で、不器用なりに一所懸命思ってくれる姿勢は、女性としてはいいなって思います。しかも、歌ったらめちゃくちゃかっこいいですし、そのギャップにやられちゃいますよね。

――最後に、今後の目標を願いします。
 歌と芝居の両方ができる役者になりたいです。ドラマとか映画、舞台、さまざまなジャンルで、歌を歌いつつお芝居もできる、そういう環境をもっともっと増やしていきたいです。

画像7: 「田中珠里」初主演作『ディスコーズハイ』がいよいよ公開。「早くたくさんの方に観ていただきたいです」

映画『ディスコーズハイ』

7月8日(金)よりアップリンク吉祥寺、8月6日(土)より大阪・第七藝術劇場、8月19日(金)より京都みなみ会館にて公開

<キャスト>
田中珠里 下京慶子 後藤まりこ ほか

<スタッフ>
監督:岡本崇 脚本:岡本崇 音楽:ウパルパ猫、徳田憲治 (スムルース)、3markets[ ]
主題歌:「いつかバンドがなくなったら」秦千香子(ex.FREENOTE)
製作:コココロ制作
2021年/日本/カラー/16:9/STEREO/101分
(C)2021コココロ制作

●田中珠里(たなか しゅり)プロフィール/瓶子撫子(へいし なでこ)役
1998年12月14日生まれ。京都府出身。
2019年、NHK「だから私は推しました」に出演。2020年、MBS/TBS「荒ぶる季節の乙女どもよ。」の本郷ひと葉役では再現度が話題となり、同年配信ドラマ「妖怪人間ベラ~Episode0~」では副島かおる役を怪演。今年1月の舞台「BASARA」では主演を務め、活動の幅を広げている。7月8日(金)から舞台『文化住宅の窓際にはマーガレットを』(Aチーム主役/@恵比寿・エコー劇場)に出演が決まっている。

衣裳協力:MYAXIS

This article is a sponsored article by
''.