都会暮らしで疲れた女性が、祖母の残した家で過ごす1週間で、心のもやもやを浄化していくという、ヴァカンス要素も楽しめる作品。風光明媚な島根県でオールロケを行なっているのも注目で、現地の豊かな風情も楽しめる仕上がりとなっている。主演には、モデルとしても活躍している瀬戸かほが起用され、人生の暗闇の中から抜け出す様子を、繊細な表情で演じている。ここではその瀬戸に、出演の感想を聞いた。
――よろしくお願いします。まずは、公開を迎える心境をお聞かせください。
上映されることが本当に嬉しいです。1人でも多くの方に届いて欲しいという気持ちでいます。
――出演するにあたって、本作のタイトルを聞いた時の印象はいかがでしたか?
当初は、どういう内容なんだろう、どういう作品なんだろうって、あまりピンと来ていなかったのですが、脚本を読ませていただいてからは、ヴァカンスに対する漠然とした憧れが自分にもあったので、(演じた西野)絵里と一緒にヴァカンスを楽しみたいなって思いました。
――クレマチスについては?
永岡監督からうかがったお話では、たまたまクレマチスについて書かれた本を見かけて、興味を惹かれて読んでみたら、その花言葉に魅せられて、将来、その花言葉に関する映画を作りたいと思った、ということでした。本作には、クレマチスの3つの花言葉の意味が随所に散りばめられています。
――では、今回演じられた西野絵里の印象と役作りについて教えてください。
真面目で素直な子だと思いました。それをお芝居でどう表現するかに留意しながら演じました。
役作りについては、自分の中にある引き出しから、その時に役が抱いている感情に近いものを探して、それを芝居として提示するやり方をしているので、自分との共通項を考えながらまとめていきました。
――引き出しがない場合は?
その時は、そもそも自分とは違う(共通項がない)人間なので、新しい引き出しを探しにいきます。
――その引き出しは、映画を観たり、音楽を聴いたりして、そこから生まれてきた感情を元にするってことなのでしょうか?
そうですね。周りの人の気持ちを参考にすることもあります。
――冒頭、物語の始まりを伝えるかのように開けられるカーテンは、随分とカラフルでした。
撮影に使ったお家は、実際に住まわれている方がいて、その生活環境をそのままで使わせてもらっていました。親戚の家のような安心感がありましたね。
――作中で絵里は、日ごとに過ごし方を決めて楽しんでいました。瀬戸さんは、旅行の予定は細かく決めるほうですか? それともその日の気分(行き当たりばったり)で決めるほうですか?
個人的には、思わぬ出会いや発見があるので、行き当たりばったりの方が好きですね。
――絵里は1週間のヴァカンスを楽しんでいましたが、印象に残ったテーマ(予定)はありましたか。
海に行く日は、強く印象に残っています。実際に海辺に行った時の、あの海の荒れようはもう、衝撃的でした。私の中のザ・日本海っていうイメージにピッタリな情景だったので。
加えて、その後で祖母の家の蔵に行くシーンがあるのですが、蔵の前に到着してもなかなかカットがかからなくて、恐る恐る扉を開けた時のこともすごく覚えています。外が真っ暗で怖かったので、内心で、いつカットがかかるんだろうって焦っていました。
――絵里は海を見て、すっきりしたと言います。その心情は理解できましたか?
元々の設定では、穏やかな海を見てリラックスしたというか、都会暮らしで疲れ切った心が浄化されるという流れだったのですが、その日の実際の海は、映像にもあるようにものすごい荒れ方で! それに衝撃を受けてしまって、海があまりにも偉大すぎて、自分の悩みなんてどうでもいいぐらい小さく思えてしまった。絵里にとっては、そういう心の変化があったのだろうと、感じています。
――海が荒れていたからこそ、その後、穏やかになっていく様が活きていると思います。
そうですね。私もそう思いました。
――(その翌日には)自転車で旅している人を助けてあげました。
声をかけること自体、絵里からしたら、大きな変化だったと思います。それを機に、絵里は前向きに変わっていきます。そのシーンでふと口から出てきたアドリブが採用されて、絵里という人物の見えていなかった部分が見えた気がしました。
――結構、アドリブはあったのですか?
はい、結構ありました。アドリブとセリフが共存している映画だと思います。
――話は変わりますが、古墳で花を手向けるシーンは印象的でした。
古墳の上でお芝居をするという貴重な体験をさせていただきました。私個人としても、この土盛り(古墳)はかつて生きていた人が眠っているところだと思ったら、絵里と同じように、その方々に花を手向けたいという気持ちになりました。
――ネタバレしないようにボカシて聞きますが、クレマチスの花言葉の“策略”を感じるシーンもありました。
台本を読んでいたので私もそうなると分かって演じていたのですが、分かっていても衝撃的でした。
――後半にはすっかり町にも馴染んでいって、そのままお祖母さんの残した家で喫茶店を始めるのかも、と思いました。
やりたい気持ちはあったと思います。というより、私がやりたいです。喫茶店がとても好きなので。
――すると、あの終わり方はどう感じていますか?
絵里は、非日常と日常をきちんと切り分けている子だと感じました。でも、ヴァカンスを通してちゃんとデトックスできたし、色々な変化もあって、新しい一歩を踏み出すことができたので、前向きな気持ちでまた、日常に戻っていったのだろうと思います。
――今回、この作品に出演されて気づきはありましたか。
撮影を通して、たくさんの方々とお会いする機会を得たことで、色々と学ばせていただくことが本当に多く、コミュニケーションの大切さを改めて実感しました。今後も(コミュニケーションを)大切にしていきたいです。
――今回は、島根県でオールロケでしたけど、現地はいかがでしたか?
初めて訪れたのですが、水辺の街ということで、とても風景が綺麗でした。撮影ではありましたが楽しい旅だったので、次は仕事ではなく観光として行くと決めています。
――最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
絵里と一緒に過ごした1週間のヴァカンスは、私にとっても忘れられない大切な思い出になりました。映画の中で一緒にヴァカンスを過ごしていただけたら嬉しいです。ぜひ、劇場でご覧ください。
映画『クレマチスの窓辺』
4月8日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
【舞台挨拶情報 @ヒューマントラストシネマ渋谷】
・4月8日(金) 18:35~ 瀬戸かほ、里内伽奈、小山梨奈、ミネオショウ、永岡俊幸監督
・4月9日(土) 20:50~ 瀬戸かほ、福場俊策、サトウヒロキ、小川節子、永岡俊幸監督
<キャスト>
瀬戸かほ 里内伽奈 福場俊策 小山梨奈 ミネオショウ 星能豊 サトウヒロキ 牛丸亮 宇乃うめの しじみ 西條裕美 小川節子
<スタッフ>
監督・編集:永岡俊幸
脚本:永岡俊幸、木島悠翔
配給・宣伝:アルミード
2020/日本/カラー/62分/ヨーロピアンビスタ/デジタル
(C)Route 9
<ストーリー>
東京生まれ東京育ちの絵里は、ストレスが溜まる都会での生活を抜け出して、地方の水辺の街でヴァカンスを過ごすことに。亡くなった祖母の古民家で暮らす1週間の中で、絵里はその街で生きている人々と交流する。建築家の従兄、そのフィアンセ、大学生の従妹、靴職人、古墳研究者、バックパッカーなど、一癖ある人ばかり。そんな出会いと祖母の遺したものたちが絵里を少しだけ変えていく――。
■瀬戸かほ(Kaho Seto)プロフィール
1993年11月11日生まれ。神奈川県出身。
2015年に映画『orange -オレンジ- 』でデビュー。映画、舞台、ウェブドラマで女優として活躍し、ミュージックビデオへの出演も多数。映画『リビングの女王』では第6回賢島映画祭にて助演女優賞受賞。広告やファッション雑誌、ブランドカタログなどモデルとしても活躍の場を広げている。
ヘアメイク:ふじわらみほこ