BACK TO THE FUTURE - 35TH ANNIVERSARY EDITION
with DOLBY VISION, HDR10+ and DOLY ATMOS
He was never in time for his classes…
He wasn’t in time for his dinner…
Then one day…
He wasn’t in his time at all.
Release Dates (Theater):July 3, 1985 (Domestic)
Domestic Total Gross:$211,406,762
(International: $177,369,491)
FILM
時を戻そう。ネームだけで客を呼べる大物スタアが登場し、多くの監督がレーガン政権時代のバブルをそのままにスクリーン上で花開かせていた1980年代であるが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー(B.T.T.F.)』が製作された1985年は小説を基にした映画が多く作られた年であった。また女性を主人公にした映画も目立ち、かのスピルバーグもアリス・ウォーカーのベストセラーを映画化した『カラーパープル』を発表、ハリウッド・エンタの寵児でもあったスピルバーグがシリアス路線に転向して話題となった。アイデア満載の企画を自ら監督せず、他の有能な監督に任せる。スピルバーグが本格的にプロデューサー業に乗り出したのも、『B.T.T.F.』のヒット以降のことである。
のどかな住宅地ヒル・バレーに住む主人公のマーティは、どこにでもいそうなロック音楽好きの高校生。変わり種のブラウン博士の助手をしているが、タイムマシーンの改造したデロリアンの実験に立ち会っていたところ、ひょんなことから30年前のヒル・バレーにタイムスリップしてしまう。高校生の両親に出会ったマーティは、恋のキューピッド役を務めながら現代世界へ戻る方法を模索する。そして彼が協力を求めたのは、なんと若きブラウン博士であった!
『B.T.T.F.』のアイデアはスピルバーグ製作総指揮の『抱きしめたい』『ユーズド・カー』や『1941』の脚本家ボブ・ゲイルと、同じく『抱きしめたい』『ユーズド・カー』の監督ロバート・ゼメキスが温めてきたもの。タイムトラベルの筋立てにぐいぐいっとヒネリを利かせ、ウィットに富み、見せ場も切れ味鋭く、男女の愛、親子の絆、友情の強さまでも盛り込んでみせた。存分に遊びごころを発揮、スィートでハラハラドキドキ、途方もなく想像力に富んだ大傑作であるが、当初は配給会社を見つけるのに四苦八苦。企画を持ち込んだディズニーは映画化に興味を示すも、近親相姦を思わせるエピソード(ママがボクに惚れている!)があると指摘され、ボツとなった経緯がある。そんなゲイルとゼメキスに救いの手を差し伸べたのがスピルバーグであり、最終的にスピルバーグ主宰のアンブリン・エンターテインメントとユニバーサルによって映画化の運びとなった。とはいえ製作は難航。脚本は44回もの改訂を余儀なくされ、多くのシネフィルがご存知の主役(エリック・ストルツ)交代劇といった難題が持ち上がる。主演のマイケル・J・フォックスは、当時TVシリーズ『ファミリー・タイズ』の現場を掛け持ち、タフなスケジュールをこなすことになった(昼は『ファミリー・タイズ』の収録、午後6時から早朝まで『B.T.T.F.』のセット撮影、日中シーンは土・日曜日に撮影)。そうしたスタッフ、出演者の奮闘努力もあり、全米BOXオフィスでは3ヶ月に及び1位をキープ、堂々1985年興行成績第1位を記録。オスカー・レースでは脚本賞、歌曲賞(「パワー・オブ・ラブ」)、音響賞にノミネート、みごと音響効果編集賞を受賞した。共演はクリストファー・ロイド、リー・トンプソン、クリスピン・グローヴァー、トーマス・F・ウィルソン。
全世界同時期のリリースなった『B.T.T.F.』トリロジーだが、ここではフランス版限定コレクターズ・エディションをピックアップ。同仕様のUK版も12月リリース予定なので、ご興味ある方は購入してみてはいかがだろうか。
VIDEO
撮影はジョン・カーペンター監督作や『ジュラシック・パーク』『アポロ13』などで知られるディーン・カンディ。35mmスタンダード撮影/劇場公開は上下マスキングのビスタサイズ。SFXパートは純正ビスタビジョン撮影(35mm横駆動式の専用ビスタビジョンカメラで撮影/スタンダードサイズの2倍以上のフィルム面積を使用、画質も大幅に向上する)。35mmオリジナルカメラネガからの最新4Kスキャン/4Kワークフロー(パラ消し、フリッカー除去、グレイン・マネジメント、HDRグレーディング)。修復作業は『アルフレッド・ヒッチコック クラシックス・コレクション』同様に、L.A.のユニバーサルスタジオ・デジタルサービスで行なわれ、ユニバーサル・グローバル・メディア・オペレーションズのSVP/レストア責任者のマイク・ダルティが総監修している。LUT(ルックアップテーブル)はイーストマン・コダック5247(125T)。5247は1950年に初リリースされ、長年にわたって改良されたカラーネガフィルム。多くのケースでは3ストリップのアーカイブネガも生成され、UHD BLU-AY版のグレーディングにも流用されている。通常、5247には、鮮やかで強い彩度の色/強いコントラスト/典型的なダイナミックレンジ:8-9ストップ/赤に傾いた肌の色合い、というような特徴がある。『B.T.T.F.』のSFXショットは32ショットほどだが、ここではイーストマン・コダック5294(ハイスピード400T/1983年~1987年)が使用されている。だがラボでのカラータイミングとカーブの配置は5257との整合性を保たれており、本盤のカラーグレーディングでは3ストリップのアーカイブネガを参考にしつつ、最終的にLUT5247で処理されている。HDRはHDR10、HDR10+、ドルビービジョン(DV)を採用。映像平均転送レートは73.2Mbps(HDR10+)+5.2Mbps(DV)。収録アスペクトはオリジナル1.85:1ビスタサイズ。
これまでも新しいアートワーク、サプリメントを備えたコレクターズ・エディションが登場してきた『B.T.T.F.』トリロジーだが、いよいよUHD BLU-RAY化、まずは35mmオリジナルカメラネガのオーバーホールを拍手を送りたい。粒子感はデイライトショットでライト、ナイトショットや低照度ショットでミディアム。VC1圧縮とDNRの弊害に苦しんでいたBLU-RAY版からの改善が目覚ましく、とくりわけミドルショットとロングショットのディテイル描画には大きな差異が出る。大顔絵はメイクアップの粗を示すほど存在感があり、美術装飾や衣装の質感、デロリアンをはじめとする車のディテイル、背景の描画力も見応えあり。HDRに関しては、まずはUHD BLU-RAY『サイコ』のレビューで紹介したマイク・ダルティのコメントを確認していただきたい(※)。
(※)「HDRは、陽光やライトで明るく照らされた部分、夜景や車のライトといった発光などにネガやRAWデータに記録されたままの情報を引き出すことができる。だが映画においてもっとも重要なものは画面の中のアクションであり、オリジナル映像の意図を把握しながらHDRをトーンダウンする必要がある。カラリストは、シーンがHDRの恩恵を受けていることを明らかにしながら抑制を効かせなくてはならず、その加減が非常に難しい。HDRは過度のノイズを明らかにしてしまう恐れがあるので、ヒッチコック作品のようなクラシックにみるオプチカルショット(オーバーラップや合成など光学処理された場面)の再現には、細心の注意と管理が必要となる」(マイク・ダルディ)
HDRはこれまで視認できなかったコントラストのレイヤーを明らかにしながら、黒に深みを与え、さまざまな陰影に大きなニュアンスを追加、暗部の視認性を高めつつハイライトをいい塩梅に伸長する。HDR10/HDR10+の効果も明快。色の精度と彩度のアップグレードは誰の目にも鮮やかとなり、ことに50年代のシーンをより広く、より活気のある色彩で染め抜いてみせる。印象的な赤は多種多様な表現。緑は豊かに飽和し、青はナイトショットのコバルトやネイビーのグラデーションから、青雲のセルリアンや白色を引き立てている。DVでは暖かい光彩に照らされるインテリアシーン、スポットオン状態のスペキュラ・ハイライト、タイムトラベル視覚効果のスパーク光をより強化する。たとえば、お馴染みのJCペニー・ショッピングプラザ駐車場でのタイムトラベル・シークエンスでは、低照度のナイトシーンではあるものの、さまざまな光彩陰影トーンを視認できる。デロリアンのタイヤのテクスチャー、わずかなグレーの色味の再現も嬉しい驚きだ。いくつかのショットでノイズリダクションの痕跡やエイリアシング、色の滲みがわずかに表出するものの、総じて満足のいく出来栄えとなっており、『B.T.T.F.』トリロジーのなかでもっとも映像の改善が顕著と言えよう。
AUDIO
オスカー音響効果編集賞に輝いた音響エンジニアは、『E.T.』『ロジャー・ラビット』でオスカー受賞のチャールズ・L・キャンベル、『カッコーの巣の上で』『スター・ウォーズ』のロバート・ラトリッジ。サウンドデザインは『ゴシカ』『感染』『マイアミ・バイス』の小川高松(タク・オガワ)。70mmドルビー6トラック・スプリットステレオサラウンド・マスターからのドルビーアトモス・リミックス(ユニバーサルスタジオ・サウンド部門で実施/一部35mmドルビーステレオAタイプ・マスター使用/壊れた時計塔でのマーティとジェニファーの会話シークエンスほか)。音声平均転送レートは4.7Mbps(24bit)を記録する。
会話主導の映画ではあるが、活劇サウンドの多くは画面全体に広がり、キャラクターに相互作用を働きかけていく。マイケル・J・フォックスの独特な抑揚で放たれる口跡、クリストファー・ロイドの奇抜な科学者ならではの愉快で緊張感のある物云いが、明瞭度を増して聴覚を刺激。全編を通じて広範なミッドレンジ、明確な音彩ディテイルと優れたチャンネル分離を備えたシネソニックは、予想に反してダイナミックな仕上がりとなっている。バックグラウンド・アクティビティの軌跡と方向性は魅力的で説得力があり、これまでのDTS-HD MA音声に比べて顕著な改善を提供し、より優れた音彩を備えている。ローエンドは劇的なブーストを約束しないものの、活劇シークエンスやアラン・シルヴェストリの忘れ難いスコアに重みと深さを提供している。
また、さまざまなアンビエンスがより効果的に響き、絶妙な離散性で楽しませてくれる。オブジェクト操演は適材適所で活躍、印象的な音響拡張を披露。遠方の鳥のさえずり、放牧地での虫の合唱から、空間を駆け抜けるデロリアンの軌跡に至るまで、その効果は絶大だ。とりわけクライマックスの時計台シーケンスでは、エンタメ感バツグンのアトモス・ソニックを満喫できよう。
FINAL THOUGHTS
『B.T.T.F.』はVHSビデオ・リリースでも記録破りの売り上げとなった(米国版VHSテープを見直すと、エンディングに「To be continued」のテロップがある/DVDではカット)。現代の場面を観ていると、ちゃんと過去で起こることが絶妙の伏線として隠されており、そのため映画鑑賞後にビデオで細部を検証するファンも多く、ビデオの売り上げを伸ばした理由のひとつとされている。さて今回のUHD BLU-RAY『B.T.T.F.』トリロジー・リリース、当初、2020年6月リリースが予定されていたが、コロナ禍により4ヶ月の遅延となった。だが待った甲斐あり。トリロジーを順に追って鑑賞していくと、またまた新たな発見があり、長きにわたって本作に魅了されてきたシネフィルならば是非とも手に取って頂きたいと思う。
「第1作のヒットが私やボブ(ゼメキス)にもたらした最高の出来事は、第1作で消化しきれなかったアイデアを使って続編を製作できる機会を与えてくれたことだ。だから『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、3作揃ってこそ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なんだよ」(ボブ・ゲイル)
SPECIAL FEATURES
LIMITED COLLECTOR’S EDITION INCLUDES:
- Continuity Script Excerpt with an Introduction by Bob Gale
- Gray’s Sports Almanac Replica
- Trilogy Chronology Poster
- 2 x Lenticular Cards
- DeLorean Blueprint
- 1885 Clocktower photograph
- Fridge Magnet
- Gibson Guitar Pick
BONUS FEATURES
- OVER ONE HOUR OF ALL-NEW BONUS
- The Hollywood Museum Goes Back To The Future
- Back To The Future: The Musical – Behind The Scenes
- An Alternate Future: Lost Audition Tapes
- Could You Survive The Movies? Back To The Future
PLUS
- Tales From The Future: 6-Part Documentary
- The Physics of Back To The Future
- Deleted Scenes
- Michael J. Fox Q&A
- 8 Archival Featurettes
- Behind The Scenes Footage
- Music Videos
- Audio Commentaries
- Back To The Future: The Ride
- Doc Brown Saves The World! (Short Film)
- OUTATIME: Restoring the DeLorean
- And Much More!
SCREEN CAPTURES
DISC SPECS
Title | BACK TO THE FUTURE |
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Released | Oct 20, 2020 - US/Dec 07, 2020 - UK (from Universal Studios) |
SRP | $41.46(The Ultimate Trilogy) £90.00(Limited Collector's Edition/Amazon Exclusive) |
Run Time | 1:56:02.288 (h:m:s.ms) |
Codec | HEVC / H.265 (Resolution: 4K / DOLBY VISION / HDR10+ compatible) |
Aspect Ratio | 1.85:1 |
Audio Formats | English Dolby Atmos (48kHz / 24bit / Dolby TrueHD 7.1 compatible) French DTS 5.1 Czech DTS 5.1 Hindi DTS 5.1 Hungarian DTS 5.1 Polish DTS 5.1 Russian DTS 5.1 |
Subtitles | English SDH, French, Czech, Danish, Dutch, Finnish, Greek, Hindi, Hungarian, Norwegian, Polish, Romanian, Russian, Swedish |
FILM SPECS
タイトル | バック・トゥ・ザ・フューチャー |
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年 | 1985 |
監督 | ロバート・ゼメキス |
製作 | ニール・キャントン, ボブ・ゲイル |
製作総指揮 | スティーヴン・スピルバーグ, キャスリーン・ケネディ フランク・マーシャル |
脚本 | ロバート・ゼメキス, ボブ・ゲイル |
撮影 | ディーン・カンディ |
音楽 | アラン・シルヴェストリ |
出演 | マイケル・J・フォックス, クリストファー・ロイド, リー・トンプソン クリスピン・グローヴァー, クローディア・ウェルズ, ヒューイ・ルイス |
4K画質評価
解像感 | ★★★★★★★★ 8 |
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S/N感 | ★★★★★★★★ 8 |
HDR効果 | ★★★★★★★★★ 9 |
色調 | ★★★★★★★★★ 9 |
階調 | ★★★★★★★★ 8 |
音質評価
解像感 | ★★★★★★★★ 8 |
---|---|
S/N感 | ★★★★★★★★ 8 |
サラウンド効果 | ★★★★★★★★ 8 |
低音の迫力 | ★★★★★★★ 7 |
SCORE
Film | ★★★★★★★★★★ 10 |
---|---|
Image | ★★★★★★★★ 8 |
Sound | ★★★★★★★★ 8 |
Overall | ★★★★★★★★★ 9 |