アイ・オー・データから、スマートフォン用アナログレコーダーのADレコ「AD-1」が登場、市場想定価格¥8,000(税別)で発売される。

 同社では以前からカセットテープやアナログレコードの音声をPCに取り込むツールを販売していたが、今回のADレコはPCレス、つまりスマホに直接それらのアナログ音声を録音できるのがポイントだ。そんなADレコの取材機を、5月中旬の発売に先駆けて借用できたので、試用リポートをお届けしたい。

アイ・オー・データ 「AD-1」 市場想定価格¥8,000前後

画像: 30年前の思い出の音源が、無茶苦茶簡単にアーカイブできた(1) アイ・オー・データの「ADレコ」で、カセットテープからスマホへの録音を試す

●対応機種:iOS、Android OSを搭載したスマートフォン/タブレット端末、ウォークマンのNW-A100/NW-ZX500シリーズ
●対応OS:Android 5.0〜10.0、iOS 11.0〜13.0
●対応アプリ:CDレコミュージック(2020年4月22日現在)
●エンコード方式:ソフトウェアエンコード
●記録形式:FLAC(CD音質)、AAC(320kbps、256kbps、128kbps、96kbps)
●接続端子:PHONO IN(RCA)×1系統、LINE IN(ステレオミニ)×1系統、LINE OUT(ステレオミニ)×1系統※PHONO INはMMカートリッジ用で、MCカートリッジを使う場合は別途フォノイコライザーが必要
●インターフェイス:USB 2.0 Full Speed
●電源:USBバスパワー(DC5V)
●寸法/質量:約W18×D57×H13mm/約60g(ケーブル部分含めず)

 まずはADレコのおさらい。製品自体は、先述のようにAndroidスマートフォンやウォークマン、iPhoneにアナログレコードやカセットテープの音楽を録音できるアナログレコーダーだ。

 本体は両端にアナログ用、デジタル用の端子を備えている。音声入力端子は、「PHONO IN」(RCA端子、MMカートリッジ内蔵)と「LINE IN」(3.5mmミニジャック)を備え、出力端子はUSB Type-A(Type-Cへの変換コネクターも付属)というもの。

 また録音の前に忘れてはいけないのが、録音用アプリをインストールしておくこと。今回のADレコでは「CDレコミュージック」という新しいアプリで録音や編集を行うようになっており、既にAppストアやGooglePlayからダウンロードできる。このアプリは音楽再生にも使える他、他のユーザーの再生ランキング(年代別、男女別など)、「CDレコ」での録音も可能だ。

画像: カセットテープからiPhoneへの録音時の接続。左上のカセットのヘッドホン出力をADレコにつなぎ、ADレコとiPhoneの間にアップルのLightning-USB 3カメラアダプターを挟んでいる

カセットテープからiPhoneへの録音時の接続。左上のカセットのヘッドホン出力をADレコにつなぎ、ADレコとiPhoneの間にアップルのLightning-USB 3カメラアダプターを挟んでいる

 準備が出来たら、さっそく愛用のiPhone6と組み合わせて録音を試してみる。ただしADレコでiPhoneに録音をするには、別途「Lightning-USB 3カメラアダプター」も必要だ。というのも、先述のようにADレコの出力はUSB Type-AまたはType-Cで、Lightningにはつながらないからだ(試しに百均で売っている同様のアダプターも試してみたけど、さすがに駄目でした)。

 ということでADレコにLightning-USB 3カメラアダプターをつないで録音の準備が完了。カセットテープの音源をスマホに保存してみることにした。

 これらのテープは大学時代から就職した直後の通勤・通学時(つまり30年以上前)にウォークマンで聞いていたもの。前々からデジタル化したいと思っていたけれど、曲名の確認や入力の手間がおっくうで後回しになっていた。

 でもADレコを使えば、曲名やアーティスト名、ジャケットデータも自動的に入力してくれるので、これは凄くありがたい。曲名の検索にはグレースノートのMusicID-Streamを参照しているそうで、ヒット率も結構期待できるのではないだろうか。

画像: 専用アプリ「CDレコミュージック」を起動し、「アナログ録音」を選ぶと左のメニューが表示される。接続をすませて「次へ」を押すと右のような画面になり、録音ボタンを押せばデジタルアーカイブがスタートする。曲名検索は自動で行われる

専用アプリ「CDレコミュージック」を起動し、「アナログ録音」を選ぶと左のメニューが表示される。接続をすませて「次へ」を押すと右のような画面になり、録音ボタンを押せばデジタルアーカイブがスタートする。曲名検索は自動で行われる

 3.5mmケーブルで、ポータブルカセットレコーダーのヘッドホン出力とADレコのLINE INをつないで録音をスタート。ちなみCDレコミュージック側では入力レベルの調整ができないので、再生側で最適なボリュウムを調整することになる。

 テープを再生するとすぐに曲情報検索が始まり、数十秒で「Love Me Do」と表示された。同時にアルバム名として『Please Please Me』と出てきた。このテープはビートルズの楽曲をまとめた手作りコンピだが、それをADレコ側がアルバムとして認識したのだろう。

 こうして、録音した曲名がきちんと反映されるのは確認できた。もちろんビートルズのようなどメジャーなアーティストだから当然といえば当然だが、でも120分テープに22曲は入っていたのだから、これをいちいちマニュアルで曲ごとに分割したり、タイトルを入力しなくていいのは素晴らしい。

画像: 録音データを本体メモリーに保存する際に、どのクォリティで残すかを決めておく。また取り込んだ楽曲のメタデータは曲ごとに編集可能だ

録音データを本体メモリーに保存する際に、どのクォリティで残すかを決めておく。また取り込んだ楽曲のメタデータは曲ごとに編集可能だ

 もちろん録音データに対して、アルバム名、アーティスト名、年代などの曲情報や、開始/終了位置の編集も可能。中には「Lady Madonna」が『Love』のリミックスバージョンとして認識される(カセットを作ったのが1990年代なので『Love』は存在しない)といった珍現象もあったので、そのあたりを気にする方は曲情報をしっかり確認しておきましょう。

 ちなみに出力時のフォーマットはCDクォリティの44.1kHz/16ビット/FLACと、AACで320kbps/256kbps/128kbps/96kbpsの中から選択可能(今回はFLAC)。必要に応じて編集や設定を行った後、ライブラリーに出力することで楽曲データとして保存される。

 iPhoneに保存した曲は、テープのヒスノイズが聴き取れるものもあるし、レコードから録音した曲ではスクラッチノイズも分かった。コンピテープの場合、曲による録音レベルの差まで残っている。これは、ADレコがオリジナルに忠実にデジタル化しており、そこに余分な処理を加えていない証左かと(試聴にはfinalの有線イヤホン『B1』を使用)。

 当然音質も元のテープに左右されるが、少なくともFLACで録音したものについて不満は感じなかった。それよりも当時工夫して作ったコンピレーションがスマホで甦ったという歓びが大きく、懐かしみながら最後まで聞いてしまった次第。このクォリティで思い出の音楽を保存できるなら、充分満足です。

画像: 録音や編集が終わり、「ライブラリに出力」を選ぶと初めてデータが本体メモリーに保存される

録音や編集が終わり、「ライブラリに出力」を選ぶと初めてデータが本体メモリーに保存される

 ついでといってはなんだけど、もうひとつ気になっていたテープも取り出してみた。こちらは友人にもらった、昭和歌唱やCMソングを集めた1本。曲は覚えているけれど、正式な曲名や誰が歌っていたかは定かでない。

 さっそくADレコで録音をスタート。結果、12曲中10曲のタイトル&アーティストをしっかり判別してくれた。中でもリゲインのCMソングのタイトルが「勇気のしるし」だったとか、ミノルタカメラの「太陽・神様・少年」は野田幹子が歌っていたことが判明したのは嬉しかった。

 ということで、ADレコはアナログ素材をアーカイブするツールとして、便利かつ音質面でも安心できることが確認できた。StereoSound ONLINE読者の中にもカセットテープなどのコレクションを多数保存している方も多いと思うが、そんな皆さんもはぜひ試して欲しいと思う。

 ちなみに現時点でスマホに保存した楽曲データは、DVDなどのディスクへバックアップのみ可能。個人的にはNASに保存して2chスピーカーでも聴きたいので、NAS転送機能への早期の対応にも期待しています。

 さてADレコは、LINE入力以外にレコードからの録音機能も備えています。次回はそちらも試してみましょう。(取材・文:泉 哲也)

画像: 30年前によく聞いていたカセットテープたち。左側TDK製のアルミケースを採用したメタルテープなんて、超高級品でした

30年前によく聞いていたカセットテープたち。左側TDK製のアルミケースを採用したメタルテープなんて、超高級品でした

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