4K UHD BLU-RAY レビュー『オールド･ボーイ』パク･チャヌク監督【世界4K-Hakken伝】

OLDBOY - 4K UHD BLU-RAY

Like Shakespeare's Titus Andronicus with chopsticks, this Korean thriller
is a modern Asian answer to the Elizabethan revenge tragedy.

Release Dates (Theater)：Nov 21, 2003 (South Korea)
Domestic Total Gross：$1,882,334
(International: $13,117,339)

FILM

2004年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。審査委員長を務めたタランティーノが絶賛、その彼に｢実はパルム･ドール（最高賞）を獲らせたかった｣とまで言わしめた作品だ（審査員がタラちゃんだったからグランプリが獲れたという説もあるにはあるが）。 監督は『JSA』『親切なクムジャさん』『渇き』のパク･チャヌクで、彼の最高作として高い評価を受けている（『復讐三部作』第2弾）。妻と幼い娘をもつ男が何者かに浚われ、ワケもわからぬまま15年ものあいだ監禁される。突然解放された男は、自分を監禁した犯人を探し出して復讐を果たそうとするが･･･。プロットはシンプルながら、随所に張り巡らされた伏線がじわりじわりと効果を上げ、復讐のドラマは思いも寄らぬ展開を見せていく。原作は土屋ガロン（狩撫 麻礼）、嶺岸信明（画）による同名漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』だが、「監禁された男がその理由を求めて奔走する」という大筋以外はオリジナル作品と言ってよかろう（原作出版の双葉社が、債務不履行、報告義務違反などを理由に韓国の製作会社に対して訴訟を起こすというオマケもついた）。主演はチャヌク監督作品や『悪いやつら』『LUCY／ルーシー』の チェ･ミンシク。共演に『トンマッコルへようこそ』『インビジブル･ウェーブ』のカン･ヘジョン、『美しき野獣』『ノートに眠った願いごと』のユ･ジテ。2013年にはスパイク･リー監督、ジョシュ･ブローリン主演でリメイク。

本盤のリリースはインディーズ系の独ケープライト･ピクチャーズ。本作の4K UHD BLU-RAY化はケープライトのみとなり、外装は渋い光沢が印象的なスチールブック仕様（本編BLU-RAY、特典BLU-RAYはリージョンB仕様となるのでご注意を）。

VIDEO

撮影はチャヌクのハリウッド進出第1作『イノセント･ガーデン』や『IT／イット “それ”が見えたら、終わり。』のチョン･ジョンフン。スーパー35方式／35mmアナモフィック撮影作品。チャヌク自ら監修した35mmオリジナルネガからの4Kデジタルレストア版。DIファイルは4K（2019年UKアロー版と同マスター）。HDRはHDR10とオプションとなるドルビービジョンHDRを採用したハイブリット仕様。いずれのHDRグレーディングもチャヌクが監修を務めている。映像平均転送レートは47.9Mbps（HDR10）+1Mbps （ドルビービジョン）。収録アスペクトは2.35:1スコープサイズ。

愛情イッパイ、オリジナルに忠実に復元された映像は、最良の35mmネガから引き出されたすべてのディテイルを掘り起こすことに成功している。BLU-RAY版（国内盤を含むアロー版リリース以前のBLU-RAY）からのアップグレードは明快。デジタル撮影作品とは異なる可触的な解像感が目を奪い、粒子感は細やかで規律的、深みのある画調を蘇生。クローズアップ･ショットは揺るぎなく、重厚だ。滑らかな輪郭を持った人物画ながら、その姿絵からは気性の激しい獣性的な香りが立ち上がっている。もっとも印象的な改善はHDRグレーディングにあり、光彩階調からスペキュラハイライトまでを増幅。（最暗部は僅かに窒息気味だが）黒レベルも良好、蘇った暗部階調からは緊迫感が滲み出る。BLU-RAYで再現されていた病弱なトーンを一掃、フィルムルックなトーンに満ちた普遍的で豊かなカラーパレットを披露。肌色は血色が豊かに。原色や二次色の鮮度も向上、オープニングのパープルの傘とクレジットに始まり、燃ゆる植生の緑、赤い椅子や衣装が存在感を増している。なかでも青味と緑味の配色では、BLU-RAYと大きく異なるショットが多々あるのも興味深い。輪郭に色滲み（緑味）が散見されるショットもあるにはあるが（例：下欄スクリーン･キャプチャー NO.13参照）、WCG（広色域）の恩恵はとても大きい。

AUDIO

サウンドデザイン／音響編集監修／リレコーディングミキサーは『親切なクムジャさん』『バーニング 劇場版』のイ･スンチョル。韓国語DTS-HDマスターオーディオ5.1ch仕様（英語字幕あり）。音声平均転送レートは3.460kbps（24ビット／48kHz）。

音声もアロー版5.1chマスターの流用となるが、わずかではあるが整音精度の向上を聴取できる。（アロー版同様に）分解能と明瞭度に長け、ダイナミックスも優秀。中音域の密度、ローエンドの深みが伸長する。発声は最優先され、いかなる場面でも明快さを失わない。説得力のある音響効果。拳、ハンマー、ブレードの残忍な響き、街頭音、交通騒音、風洞ノイズなどが効果を上げる。活劇音は腹に響くインパクトに富み、劇画的なデフォルメの痛快だ。傑出しているのは廊下バトルで、アイコニックなアクション、浸透力のある効果音『JSA』『タクシー運転手 ～約束は海を越えて～』のチョ･ヨンウクによる記憶に残るスコアリングを見事にブレンド、提供している。サラウンドの積極的な活用によってサウンドフィールドが拡張、没入感を高めており、サラウンド･ジャンキーの満足顔が脳を過る。思えば高品位な7.1chミックスもBLU-RAY版（2007年Tartan Video版）には収録されていたが、未収録となったのはちと残念。

FINAL THOUGHTS

ポン･ジュノ監督作『パラサイト 半地下の家族』やビー･ガン監督作『ロングデイズ･ジャーニー この夜の涯てへ』といった作品が高い評価を受ける昨今、17年前に公開された『オールドボーイ』もアジア映画界を代表する絶対的な傑作だ。ストーリーテリング。バイオレンス。ユーモアを忍ばせた緊迫の演技。大胆で濃厚な映像設計と胸を抉るシネソニック。すべてのディテイルが最高レベルで組み合わされて、復讐のドラマが作成されているのだ。現状ではUHD BLU-RAYは独盤のみの贈り物。強烈極まりないインパクトをお楽しみあれ。必見。必聴。

SPECIAL FEATURES

Exclusively in the limited SteelBook with the main film and bonus disc
● Making-of
● Video diary
● Interviews with Cast & Crew
　○ Park Chan-wook
　○ Tsuchiya Garon
　○ Choi Min-sik
　○ Yoo Ji-tae
　○ Kang Hye-jeong
　○ Yoon Jin-seo
　○ Chi Dae-han
　○ Kim Byeong-ok
　○ Oh Dal-su
　○ Lee Seung-jin
　○ Oh Kwang-rok
● Featurette: Visiting the Cannes Film Festival
● Deleted and alternative scenes
● Music video “Star Sailor; Bring my love "
● Original trailer
● Teaser trailer
● TV spot
● German trailer

SCREEN CAPTURES

DISC SPECS

FILM SPECS

4K画質評価

音質評価

SCORE